Keystone / Mikhail Metzel
スイス・ジュネーブで16日、バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領が首脳会談を行った。大使の復帰などで合意した会談は現実的で、建設的だったと両国の大統領は語った。
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「敵意は全くなかったと思う。むしろその逆だ」。会談後、報道陣に対し先に口火を切ったプーチン氏は、そう語った。
会談を終え、予定よりも少し早く出てきたプーチン氏は、双方が「互いを理解しようとする意思」を示したと述べた。
一方、バイデン氏は会談後の別の記者会見で、首脳会談は「前向きで、過激ではない」トーンで進んだが、プーチン氏の発言と同様、友情や信頼はなく、むしろ「相互利益」に基づく内容だったと述べた。
具体的な成果として、プーチン氏は、今年初めに外交関係の悪化により帰国させていた米国の駐モスクワ大使とロシアの駐ワシントン大使を、それぞれ復帰させることで合意した、と述べた。
プーチン氏はまた、核の安定に対し責任を共有する両大国が、世界の軍備管理の礎である新戦略兵器削減条約(新START)の枠組みにおいて、軍備管理協議を開始することで合意したと発表した。
プーチン氏はさらに、両国がサイバーセキュリティに関する「協議を開始する」ことでも合意したと発表。ただ、米国が、自国内の一連のサイバー攻撃に身元不明のロシア人が関与していると示唆していることについては、これを退けた。
一方、バイデン氏は、プーチン氏に「重要なインフラ(エネルギー部門、水道網)はサイバー攻撃の対象にならないようにすべきだ」と警告したと述べ、それを実行すれば「世界におけるロシアの地位を低下させる」とした。
バイデン氏は人権問題にも触れ、野党勢力の指導者で、ロシアで収容されているアレクセイ・ナワリヌイ氏が獄中で死亡すれば、ロシアの信頼性に「壊滅的」な影響を与えると述べた。
プーチン氏はこれに対し、ナワリヌイ氏は法律を無視したと発言。ナワリヌイ氏はロシア国内で起きた毒殺未遂事件の治療をドイツで受けていたが、ロシアに戻ればどうなるか本人は分かっていたと述べた。
ジュネーブサミット
米ロ関係はここのところ緊張が続いていた。特にロシアによる2014年のクリミア併合、15年のシリア内戦介入、さらに16年の米大統領選に干渉したと米国が糾弾した問題(ロシア側は否定)で、悪化が顕著になった。
3月にはバイデン氏がプーチン氏を「殺人者」と呼び、外交関係はさらに悪化。ロシア側はアントノフ駐米大使を母国に呼び戻した。米国も4月、駐モスクワ大使を本国に呼び戻した。
16日の会談後、プーチン氏はバイデン氏を「経験豊富な政治家」と評価。「殺人者」発言に関するバイデン氏の説明に満足したと述べた。
バイデン氏もプーチン氏と同様、今回の会談は相互の「信頼」ではなく、「自己利益と、自己利益の確認」だったと述べた。
対面での首脳会談は、18年にプーチン氏がヘルシンキでトランプ前米大統領と会談して以来となった。
現場の警備体制
プーチン氏は16日正午ごろ、ジュネーブ入り。バイデン氏は15日に現地入りし、スイスのギー・パルムラン連邦大統領、イグナツィオ・カシス外相と会談した。パルムラン、カシス両氏は16日夕、プーチン氏と二国間会談した。
米ロ首脳会談は、レマン湖ほとりにある18世紀の別荘「ラ・グランジュ」で行われた。ジュネーブ市中心部の大部分が封鎖され、会場周辺は警察の厳重な警備下に置かれた。ジュネーブ市内には警察官、軍人、警備員計4千人を配備。約3千人のジャーナリストも参加した。
ジュネーブは1985年、冷戦時代のライバルであったロナルド・レーガン米大統領(当時)とソ連のミハエル・ゴルバチョフ書記長(当時)が初めて首脳会談した場所でもある。
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