15日に閉幕したCOP25。スイスは大きく失望したという
Paula Dobias-Dupraz
第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議が15日、閉幕した。過去最長の会期の結果、カーボンマーケット(炭素市場)への対応策は来年会合に先送りされ、スイスの交渉担当者は失望していると語った。
このコンテンツが公開されたのは、
2019/12/16 14:43
深夜も行われた議論は40時間超にわたったが、炭素排出に価格を付けCO2削減を促すカーボンマーケットが抱える厳しい問題は解決できなかった。パリ協定外部リンク 第6条では、他国の温室効果ガス削減技術などの普及・対策を通じて実現した貢献を定量的に評価し、自国の削減目標の達成に活用できると定める(削減目標、NDCと呼ばれる)。しかし、公正で説明責任のある炭素市場をどう設立すべきかについては、来年英国グラスゴーで開催されるCOP26に先送りされた。スイス連邦環境省は、ツイッターで失望を表明した。
スイスは28カ国とともに、炭素市場に関するパリ協定実施に向け、排出削減が重複カウントされないなど、炭素市場の「清廉さ」に焦点を置く「サンホゼ原則」外部リンク を採択した。ただほとんどの欧州諸国は、まだ不確かな国際炭素市場の規則を採用するよりも、最終決定をしない選択を取った。
その代わり、約200カ国が、国際炭素市場について規則のない「最小限の合意」を得ることを選んだ。
スイスの取り組み
シモネッタ・ソマルーガ環境相は、ドイツ語圏の日曜紙ゾンタ―クス・ブリックのインタビューで、来年の連邦大統領就任に際し、再生可能エネルギーに注力していくと述べた。クリーンな電力への投資が他国への依存を減らし、雇用創出につながると指摘した。
ソマルーガ氏は、農村部に注目しているとコメント。農家の屋根は大きく、大量の太陽光発電システムを搭載できる余地があるという。
そのほかにも首都ベルンで、実業家・慈善家のハンスヨルク・ヴィース氏が、1億フラン(約110億円)を投じて自身の名を冠した環境研究所を設立する計画も進む。ヴィース自然研究所外部リンク はベルン大学と提携し、10年間で大学と州から計1億フランのマッチングファンド外部リンク を受け取る。研究所は2020年設立、2022年に正式に稼働する。観光、資源利用、自然災害、エネルギー、農業、生物多様性の各分野にわたるプロジェクトが予定されている。
おすすめの記事
スイスで記録的暑さ 政府が警告
このコンテンツが公開されたのは、
2025/08/13
スイスで全国的に気温が上昇し、猛暑への警戒が強まっている。11日にはスイス西部と南部ティチーノ州の一部地域に対し、熱中症など健康被害を受けるリスクが大きい「危険度3」の警報が発令された。
もっと読む スイスで記録的暑さ 政府が警告
おすすめの記事
知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
このコンテンツが公開されたのは、
2025/08/11
ハンス・リンギエ財団は9日チューリヒ在住の作家アドルフ・ムシュグさん(91)に欧州政治文化賞と賞金5万ユーロ(約860万円)を授与した。同賞がスイス人に授与されるのは初めて。
もっと読む 知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
2025/08/05
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
2025/08/01
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/30
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/23
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/22
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/16
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/10
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/02
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
続きを読む
次
前
おすすめの記事
COP25で妥協案を探るスイス
このコンテンツが公開されたのは、
2019/12/12
喫緊の気候変動対策を求める科学界の声は今年、高まりを増している。だが、国連の年次気候会議でのリーダーシップは不明瞭で、スイス代表団の責任者は、その進展の遅さにいら立ちを隠せない。
もっと読む COP25で妥協案を探るスイス
おすすめの記事
COP25に託された地球の未来
このコンテンツが公開されたのは、
2019/12/02
本日からマドリードで開催される第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)に際し、スイス政府は「パリ協定を効果的に実施するための基盤を築くことは必須」と表明している。2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにすることを目標に掲げるスイスだが、NGOはそれだけでは不十分だという。会議の重要項目をまとめた。
もっと読む COP25に託された地球の未来
おすすめの記事
ガソリンも炭素税の対象に?
このコンテンツが公開されたのは、
2019/11/12
スイスでCO2排出量が最も多い輸送部門は年間1500万トンのCO2を排出するが、排出量削減に直結するこれといった進展はない。輸送用燃料に対する「操縦税」の導入はブルジョア政治家によって阻まれてきた。今回のCO2法の改正案…
もっと読む ガソリンも炭素税の対象に?
おすすめの記事
スイスは緑の議会に 総選挙結果
このコンテンツが公開されたのは、
2019/10/21
スイスで20日、連邦議会総選挙が行われた。環境系政党の緑の党、自由緑の党は計26議席増と驚くべき結果が出た。保守系右派の国民党は12議席を失ったが、前回の2015年総選挙と同様、最大与党の座は堅持した。
もっと読む スイスは緑の議会に 総選挙結果
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。