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EUの量子コンピューティング開発にスイスの提案2件が採択

パソコンに映し出されたパスワードを入力する画面
量子の動きは、ランダムで予測不可能、つまり最も安全なパスワードを生み出すのに活用できそうだ Keystone

欧州委員会の進める量子コンピューティング開発計画「量子テクノロジーフラッグシップ」の第1弾に、スイスによる提案2件が採択された。「量子技術の可能性を最大限に引き出し、欧州での商用製品への開発と実用化を加速する」ことを目指す。

量子技術は、原子または準原子(量子)レベルでエネルギーと物質の挙動を利用する。欧州委の量子フラッグシップは、これまでより出力が大きく精度の高いデバイスを開発するために、自然量子現象を利用するプロジェクトだ。

欧州委員会は2016年、10年間で10億ユーロ(約1300億円)を拠出する同計画を発表。「フラッグシップ」の名を冠するプロジェクトは炭素系新素材グラフェンの研究や、ジュネーブを拠点とする人間の脳のプロジェクトに続き三つ目だ。欧州委員会がウィーンで29日開いた会合で、140件以上の公募案件から20件に、「量子テクノロジーフラッグシップ」第1弾(18年10月~21年9月)として総額1億3200万ユーロを給付されることが決まった。

スーパーセンサー

スイスから採択されたのは2件。1件はスイス西部・ヌーシャテルにあるスイス科学技術センター(CSEM)の提案した「macQsimal(Miniature Atomic Vapor-Cell Quantum Devices for Sensing and Metrology Applications)」だ。家電から医薬品、運輸まで幅広い分野で超効率化を実現する技術「量子センサー」の開発を目指す。

CSEMはMEMS技術(マイクロエレクトロメカニカルシステム)として知られているものをベースに、信頼性の高いデバイスを経済的に大量生産できるようにする。全自動ナビや不可侵の医療診断、薬物検出といったデバイスの試作品を作製する。

CSEMのプロジェクトマネージャーでmacQsimalのコーディネーター、ジャック・ヘスラー氏は「新しいタイプのセンサーは、自動運転車の立体的な検知能力の向上や、人間の脳活動の計測に革命を起こす」と胸を張る。

乱数

もう1件はジュネーブ大学のヒューゴ・ツビンデン氏の率いる「QRANGE」。より安価・高速かつ安全な量子乱数発生器の開発を目的とする。

予測不可能な量子現象を利用して完全な乱数列を生成する。安全なパスワードやデータ保護の重要性が増す中、サイバーセキュリティーや暗号化の分野で需要があるとみられる。

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