スイスの視点を10言語で

スイス運輸省、線路で太陽光発電の試験導入を承認せず

レールの間に設置された太陽光パネル
運輸省は主に、パネルの修理で発生する列車遅延の可能性や、列車通過時のパネル破損の危険性を懸念している Jorio, Luigi (swissinfo)

スイス連邦運輸省交通局(BAV)は、スイスのスタートアップによる世界初の線路用「着脱式」太陽光パネルシステムの試験計画を却下した。

同システムを開発したスタートアップ企業サン・ウェイズの共同創業者のバティスト・ダニシェール氏はスイス通信社(SDA)に対し「却下されたのは予備的な技術報告に基づいたもので、現在、新たな許可申請を提出するために技術的な変更を加えている」と説明。「これはプロジェクト中止を意味するわけではない」と述べた。

>計画の詳細を読む

サン・ウェイズはスイス西部ヌーシャテル州にあるビュット駅付近の公共鉄道で、およそ100メートルにわたり、レールの間に着脱式の太陽光パネルを設置する試験計画を申請していた。導入試験プロジェクトの予算規模は約40万フラン(約5800万円)。

複数のスイスメディアによると、運輸省は主に、パネルの修理で発生する列車遅延の可能性や、列車通過時に飛び散る砂利や砕石によるパネル破損の危険性を懸念しているという。

スイスは2050年までに、大気中に自然界や人工の吸収源が吸収可能な量を上回る温室効果ガスの排出をなくす必要がある。この目標はスイス連邦政府が設定したもので、今年の国民投票で可決された。

サン・ウェイズのシステム導入が可能となれば、理論的には、スイスの全ての鉄道路線(全長5317キロメートル、総面積サッカー場760面分)に太陽光パネルを設置できる。

実際にはトンネル内や日当たりの悪い場所は除かれるが、サン・ウェイズは、スイスの鉄道網全域に太陽光パネルを設置すれば、年間1テラワット時の電力を生産できると見込む。これは国内の年間電力消費量の約2%に相当する。

英語からの翻訳:大野瑠衣子

ニュース

ビクトリノックスのアーミーナイフ製造現場

おすすめの記事

ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスアーミーナイフの製造で知られるビクトリノックス社は、世界で広まるナイフ規制強化の波に対応するため、刃のないモデルの開発に取り組んでいる。カール・エルズナー最高経営責任者(CEO)がスイス紙のインタビューで明かした。

もっと読む ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
管制室

おすすめの記事

スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。

もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
裁判所のドア

おすすめの記事

「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。

もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
財布からお金を取り出す人

おすすめの記事

スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。

もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
対空防衛システム

おすすめの記事

米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触

このコンテンツが公開されたのは、 米政府高官は14日、イランによるイスラエル攻撃の前後に、米国は利益代表国であるスイスを通じてイランと接触していたと述べた。

もっと読む 米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部