The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

ダウン症治療の鍵となるホルモンを発見、仏・スイスの研究チーム

ダウン症患者
ダウン症患者の学習困難を改善する将来の治療法への希望が見いだされた © Keystone / Laurent Gillieron

ダウン症患者が一般に普及する不妊治療薬を定期的に服用すると、認知能力が改善する可能性が新たな研究で示唆された。研究はフランスとスイスが主導した。

研究外部リンクではダウン症候群のある成人男性7人に2時間ごとにゴナドトロピン放出ホルモン (GnRH)を投与し、半年間にわたり経緯を観察した。

治療の結果、被験者7人のうち6人は、ホルモンを投与しなかったグループと比べ、注意力や指示の理解力といった認知能力に中程度の改善が見られた。

仏リール大学神経科学・認知研究所とスイスのローザンヌ大学病院(CHUV)の研究チームによると、ホルモンを投与した被験者(20歳~37歳)の脳スキャンは、認知に関わる領域の神経接続に変化が生じたことを示唆していた。

共同研究者であるローザンヌ大学のネリー・ピッテルー教授は、英ガーディアン紙で「ダウン症の人は30代から認知機能の低下が始まるが、その進行を遅らせられれば、素晴らしいことだ。ただし治療の副作用がない・許容範囲内であることが重要だ」と述べた。

ダウン症は21トリソミーとも呼ばれ、遺伝子が原因で生じる知的障害としてよく知られる。ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は約800人に1人といわれる。21番染色体の過剰によって引き起こされ、認知能力の低下など様々な症状を引き起こす。加齢に伴い、患者の77%にはアルツハイマー型認知症と同様の症状が現れる。嗅覚が徐々に失われていくことも多い。

研究チームは、16番染色体を1本余分に持つマウスに、ダウン症に似た加齢に伴う認知力や嗅覚の低下が起きることに着目。一連の実験を経て、ゴナドトロピン放出ホルモンの定期的な投与が、これらマウスの嗅覚と認知能力の両方を改善することを突き止めた。

英語からの翻訳:シュミット一恵

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

スイス公共放送協会

おすすめの記事

スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も

このコンテンツが公開されたのは、 スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。

もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
財布

おすすめの記事

スイスでは現金のチップが主流

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。

もっと読む スイスでは現金のチップが主流
プラタナス

おすすめの記事

プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。

もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
ひまわり畑

おすすめの記事

見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。

もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部