The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義

コロナで不満蓄積か スイス東部で若者と警察が衝突

police
ザンクト・ガレン市のマリア・パッパ市長は今回の暴力的行為は「ほんの一握り」の若者によるものだと話した Keystone / Michel Canonica

スイス東部ザンクト・ガレンで若者の集団と警察が衝突する事件が相次いでいる。国内の政党青年部は、新型コロナウイルスによる若者への心理的負担が深刻だとして、連邦政府に対応を求める請願書を出した。

スイス公共放送(SRF、独語)の報道によると2日午後9時頃、ザンクト・ガレンの中心部で若者グループの一部が警察に瓶や爆竹を投げつけて攻撃。同10時半頃には駅周辺で若者が警察に火炎瓶などを投げつけた。警察はゴム弾や催涙ガスで応戦した。

一連の事件で若者2人が負傷し、21人が一時身柄を拘束された。現場周辺は自転車や建築資材が道路に投げ込まれるなど騒然となった。

ザンクト・ガレンでは1週間前にも、警察が200人の違法パーティを摘発した際に若者と衝突、警察官1人が負傷する事件があったばかり。

今回の事件では1週間前から、ソーシャルメディアで暴力行為を予告する投稿があり、警察が厳戒態勢を敷いていた。

ザンクト・ガレン市のマリア・パッパ市長は翌3日の会見で、このような暴力は断固容認しないと強調した。

この暴動で一部のショップやレストランが被害を受けた。警察によると、3日正午までに7件の被害報告があり、被害総額は約5万フラン(約590万円)に上った。

スイスでは新型コロナウイルス変異株の感染拡大を受け、1月からセミロックダウンを実施。現在は一部緩和されたが、屋外での集まりは15人に制限され、レストランやカフェは閉鎖が続いている。大規模な政治デモは自治体の許可があった場合のみ実施できる。

コロナへの不満

今回の事件は新型コロナウイルスの制限措置に反対するため組織されたものではない。だが多くのメディアが事件とコロナを結び付け、若者の社会的・文化的接触の欠如が関係していると報じた。

おすすめの記事

青年心理学者のフェリックス・ホフ氏は独語圏の日刊紙NZZに、青少年の心身発達に必要な要素が感染対策に反映されない限り、このような事件は増加すると述べた。

一方、政府は先月1日の緩和第1弾で、スポーツ・文化活動の人数制限を除外する年齢を16歳未満から20歳未満に引き上げるなど、若者の心理的負担軽減策を講じている。

若者へのサポート

ザンクト・ガレンの事件を受け、国内の5つの政党青年部は5日、危機管理に若者の意見をもっと反映させるよう連邦内閣に求める公開書簡を出した。公開書簡は超党派の青年部が署名。政府との連携を求めている。

外部リンクへ移動

書簡では、緩和措置が若者を差別するようなものであってはならないと主張。精神的な問題を抱える若者への十分なサポートのほか、大学などでの対面授業の再開を求めた。

おすすめの記事
ワクチン

おすすめの記事

スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。

もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

ひまわり畑

おすすめの記事

見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。

もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
UBS

おすすめの記事

スイス政府、金融規制改革の最終案を発表

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦内閣は6日、クレディ・スイス危機を踏まえた金融規制改革の最終案を発表した。自己資本規制を強化し、金融監督局の権限も強化する。

もっと読む スイス政府、金融規制改革の最終案を発表
ガザ

おすすめの記事

スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難

このコンテンツが公開されたのは、 パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの「戦争犯罪」に関して、スイスの元外交官55人がスイス外相に共同書簡を送り、スイスの「沈黙と消極性」を非難した。政府に対して直ちに措置を講じるよう求めた。

もっと読む スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難
軍隊

おすすめの記事

スイスで放射能測定の合同演習 

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは2~6日、国際チームがヘリコプターで空中の放射能測定を行っている。緊急時に広い範囲の放射能を迅速にチェックする予行演習だ。

もっと読む スイスで放射能測定の合同演習 
サルコ

おすすめの記事

自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡

このコンテンツが公開されたのは、 自殺カプセル「サルコ」を運営する自殺ほう助団体「ラストリゾート」共同設立者のフロリアン・ウィレ氏(47)が、先月5日にドイツで死去していたことが分かった。

もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡
土砂崩れ

おすすめの記事

スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部レッチェンタール(ヴァレー州)で28日午後、大きな氷河が崩壊し、大規模な土砂崩れがふもとのブラッテン村を襲った。多数の家屋が倒壊し、1人が行方不明。

もっと読む スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む
標準器

おすすめの記事

スイス、メートル法準拠から150年

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは150年前にメートル条約に調印し、メートルやキログラムを導入した。それまでスイスの測定単位は地域や使途によって大きく異なっていた。

もっと読む スイス、メートル法準拠から150年

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部