スイスに住む外国人は、スイス人よりも高い自動車保険料を払っているのは本当か?スイスインフォはそんな読者の質問を受け、実態を調べた。
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結論から言えば「その通り」。スイスの自動車保険会社は特定の国籍の被保険者に対し高い保険料を設定している。スイス保険協会外部リンクで広報を担当するタカシ・スギモト氏は、「大半の保険会社で、国籍は保険料を決める重要な要素になっている」と話す。
保険料は性別や年齢、居住地、自動車の種類、運転経歴、国籍によって決まる。いずれも事故を起こす確率に結びつく要素だ。「保険会社は、運転者の持つリスクをできる限り正確に算出しようとする」(スギモト氏)。損害履歴、自社の持つ統計データや公開データなどを用いて一定のリスクグループを特定する。
最もリスクが高いのは、外国籍を持つ若い男性の運転初心者だ。比較サイトコンパリスの分析外部リンク(2018年)によると、アルバニア人はスイス人より最大95%高い保険料を払っていた。イタリア人も保険会社により最大22%多かった。スイス人より保険料が少ない国籍もあるのどうかについては、保険協会は回答できなかった。
問題あり?
欧州連合(EU)内では国籍による保険料の区別を禁止している。なぜスイスでは許されるのか?「スイスでは、客観的に測れる事実、つまり統計的に算出できる要素なら保険料の算出基準に用いてよいことになっている」とスギモト氏は解説する。
連邦内閣は連邦議員からの批判的な質問主意書外部リンクに対し、国籍に基づいてリスクに関する料金を算出するのは差別に当たらないとの見解を発表した。ただし保険会社は統計データを集めて算入する必要がある。
ところで医療保険制度では、若い女性は国籍に関わらず極めて高い保険料が課されている。コンパリスの分析外部リンクによると、最大80%多く支払っている。理由は子供を授かる「リスク」があるからだ。
※この記事は特集「ファクトチェック」シリーズの一環として、読者からの投稿をもとに構成しています。スイスやスイス在住者に関するあなたの「もっと詳しく知りたい」をこちらのフォームから教えてください。
(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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