東アジア、トヨタ、トクリュウ… スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が2025年12月24日~2026年1月6日に伝えた日本関連のニュースから、①台湾周辺での演習は「日米に二重のメッセージ」②中身で勝負 欧州自動車業界がトヨタに学ぶべきこと③日本の犯罪組織に革命、の3件を要約して紹介します。
明けましておめでとうございます。スイスの2026年はクラン・モンタナの火災事件という痛ましい事件とともに始まりました。日本でも多数の犠牲者を伴う火災はたびたび起きていますが、年越しパーティー中の失火というのは意外に少ないですね。寺社に参拝して除夜の鐘を突いて…という厳かな日本の年越しが一段と恋しくなりました。
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台湾周辺での演習は「日米に二重のメッセージ」
イタリア語圏の地域紙コリエーレ・デル・ティチーノは、ナポリ大のフェデリコ・ブルサデッリ教授(中国・東アジア史)に今の台湾情勢を聞きました。スイス・イタリア両国籍のブルサデッリ氏は現在、欧州研究会議(ERC)の助成を受け中国における民族自決の概念の歴史を研究するプロジェクトに取り組んでいます。
中国が先月下旬に台湾周辺で実施した大規模な軍事演習について、ブルサデッリ氏は「儀式のようなもの」で軍事紛争に発展する可能性は低いと前置きしつつ、「こうした行動が反復的なものであり、私たちが直面している事態は何も新しいものではないという事実を理解した上で、それでもなお、今日に特有のものは何なのかを見極める必要がある」と指摘しました。
ブルサデッリ氏によると、今回「特有なもの」の1つはアメリカが台湾に110億ドル相当の武器を売却したこと。もう1つは、高市早苗首相の台湾有事発言です。この2点で、「北京はワシントンと東京に二重のメッセージを送った」と指摘。また「高市氏は二重のタブーを犯した。第一に、日本の軍事行動に言及したこと、第二に、公然と台湾側に立ったことだ」と解説します。
ただブルサデッリ氏の見解では、中国にとってより重要なのは「アメリカがどう反応するか」です。「北京は、ホワイトハウスが台湾防衛のためにどこまで踏み込むつもりなのかを理解したいと考えている」。ドナルド・トランプ大統領の登場で、歴代米大統領が築いてきた「中国の権威主義と、それに対抗するアジアの民主主義の象徴としての台湾」という言説は消えました。「経済と戦略軍事上の利益を優先」するトランプ氏の方が中国にとってははるかに理解しやすい存在である、とブルサデッリ氏は分析しました。(出典:コリエーレ・デル・ティチーノ外部リンク/イタリア語)
中身で勝負 欧州自動車業界がトヨタに学ぶべきこと
スイスの大衆紙ブリックドイツ語版は、トヨタの経営哲学を「Mehr Sein als Schein(見かけより実質)」と表現し、欧州メーカーが学ぶべきモデルとして紹介しています。同紙の自動車担当ラウール・シュヴィンネン記者は、トヨタの成功は派手な演出やマーケティングではなく、製造プロセスや品質管理、社員教育といった地道な取り組みに支えられていると強調しています。
記事は、独フォルクスワーゲンが1990年代にトヨタの経営手法「カイゼン」を取り入れたことで窮地から這い上がったものの、近年は合理化を進め細部へのこだわりを失ってしまったと指摘します。一方のトヨタは「カイゼンとかなりの実用主義が依然として根付いて」おり、電動化やソフトウェアへの投資に慎重姿勢を貫きました。
トヨタとドイツメーカーを分けたものは何でしょうか。シュヴィンネン氏は、ドイツが中国市場を意識しすぎ、他の国々のことをすっかり忘れてしまったと指摘します。一方トヨタは中国一辺倒ではなくグローバルな視点に徹し、さらに「理想主義よりも実用主義を優先」してきました。「欧州や中国の競合他社がなお事業構築に苦戦する場所で、トヨタは既に確固たる地位を築いている」
「様々な貿易戦争でさえ、トヨタは他のメーカーほどは苦境に立たない」とシュヴィンネン氏は続けます。電気自動車に全振りするという「カジノのようなアプローチ」をとった欧州勢とは異なり、トヨタは内燃機関をはじめ様々な技術にオープンであり続けました。「今にして思えば、それが顧客の真のニーズに大きく近づくことにつながった」
最後に筆者は「日本人はクールな一面もあることを忘れてはならない」と強調します。豊田章夫前CEOという「真のクルマ好き」が舵を取っていることがその秘密であるとし、「鳥肌が立つような感動を与えるモデルが数多く揃っている」と綴りました。「欧州の自動車愛好家たちは、ついにトヨタを愛するようになるかもしれない。日本人はそれに値する」(出典:ブリック外部リンク/ドイツ語)
日本の犯罪組織に革命
オンラインメディアwatsonフランス語版などは、日本の伝統的な暴力団(欧州では「ヤクザ」と呼ばれる)が、若者中心の新興犯罪集団「トクリュウ」に取って代わられていると報じる仏AFP通信の記事を転載しました。2022年の連続強盗事件の一部に関与し有罪判決を受けた葛岡隆憲懲役囚(28)に手紙や電話で取材し、暴力団やトクリュウの実態に迫っています。
暴走族だった葛岡懲役囚はやがてトクリュウに加担し、闇バイトの勧誘などに携わってきました。葛岡によると、若い世代は華やかな世界を夢見て暴力団の門を叩くものの、厳格な規範に縛られることを嫌い、「柔軟で分散化され、ルールのない」トクリュウに流れていくそうです。
トクリュウはオレオレ詐欺や公務員を装った詐欺など、手口の巧妙さを特徴としています。記事は、こうした「詐欺や弱者いじめ」は「伝統的ヤクザの掟に反する」行為だとする元組員の言葉を引用しています。
記事は、「イタリアのマフィアや中国の『三合会』と異なり、日本の暴力団は非合法ではなく、公然と活動してきた」と説明します。長い間「必要悪」として容認されてきたものの、事件の増加や「社会の寛容性が低下」に対応し、暴力団は衰退。1992年に暴力団対策法が制定され、組員数は8割近く減ったと言います。
その空白を埋めるように、過去10年、独立心が強く組織化されていない犯罪者「半グレ」が増長し、トクリュウを率いるようになりました。葛岡懲役囚は、彼らの関係を「互いに一定の忠誠心を維持している黒幕であり、ネットで勧誘されるような『赤の他人』ではなく『関係が簡単に崩壊し裏切る可能性のある』」ものだと証言しています。
暴力団側は仁義に反する半グレを軽蔑しているものの、欲に駆られてトクリュウの犯罪を手助けするケースもある、と記事は説明します。一方、AFPの取材に応じた暴力団幹部によると、一般市民が東南アジアの犯罪組織から身を守るために暴力団に頼ることもあるといいます。記事は服役するなかで「私たちのしたことがいかに残酷・悪魔的・非人道的だったかが分かった」とする葛岡懲役囚の言葉で締めくくりました。「私は一生、自分の罪を背負っていく」(出典:watson外部リンク/フランス語)
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1月1日未明、スイス南部ヴァレー州のリゾート地、クランモンタナにあるバーで大規模な火災が発生しました。当初爆発が原因と報じられ世界中でニュースになりましたが、その後犠牲者の多さや卓上花火が原因だったこと、店の防火設備の不備から、「人災」だったとの批判が国内外で高まっています。
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校閲:大野瑠衣子
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