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死刑、グランドセイコー、永井豪…スイスのメディアが報じた日本のニュース

白石死刑囚
9人の男女を監禁・殺害した白石隆浩死刑囚は、スイスなど海外メディアで「Twitter Killer」と呼ばれている Takuya Inaba/Kyodo News via AP, File

スイスの主要報道機関が先週(6月23日~29日)伝えた日本関連のニュースから、①「ツイッターキラー」に死刑執行②スイス時計界に仲間入りしたグランドセイコー③永井豪さんがジャパン祭りに登場、の3件を要約して紹介します。

死刑制度の撲滅を目指すスイスでは、日本で3年ぶりに死刑が執行されたことが大きな反響を呼んでいます。スイス連邦政府と読者の間には意見の相違もあるようです。

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「ツイッターキラー」に死刑執行 3年ぶり

神奈川県座間市で男女9人を殺害した白石隆浩死刑囚に27日午前、刑が執行されました。死刑制度の撲滅を目指すスイスでは死刑執行が全言語圏で大きなニュースに。一方、SNSで被害者を誘い出した白石死刑囚はメディアで「Twitter Killer(ツイッター殺人犯)」と呼ばれ、残忍な監禁・殺害方法には刑執行やむなしとの読者投稿もみられます。

ドイツ語圏の大手紙NZZは事件の概要だけでなく、日本の死刑制度についても改めて詳報しました。「死刑囚は通常、執行まで何年も、時には何十年も待たなければならない。この慣行は批判されているが、中期的にはほとんど変わらないだろう」

日本の世論調査で8割が死刑制度に賛成していることにも触れ、「日本では被害者の視点が重視され、加害者の権利よりも遺族の苦しみを強調する議論が多いからだ」と説明。「人権意識の欠如」や、「票を失う恐れから、政治家が死刑制度の廃止を避ける」とも分析しました。

24heuresなどフランス語圏では仏AFP通信の記事が転載され、座間市の事件が「犯罪率が非常に低い日本に衝撃を与え、国際的にも大きな影響を与えた」と解説しました。SNS規制や、自殺とその予防に関する議論を再燃させたと伝えました。また死刑囚が何十年も独房に拘禁されると指摘しつつ、「通常は複数の殺人罪で有罪判決を受けた者に対して執行される」と伝えています。

死刑執行のニュースには多くの読者コメントが寄せられています。オンラインメディアwatson.chドイツ語版外部リンクでは、「一般論として死刑に賛成か反対かと尋ねられれば、私は即座に『反対』と答える。だがこのような事件を見ると、思案させられる」と投稿し、多くの「いいね!」がつきました。

ドイツ語圏公共放送(SRF)のFacebook投稿外部リンクでも、「スイスにも死刑はあってほしい。4~15年のダラダラした服役では何も起こらない」との読者コメントに多くの「いいね!」がついています。一方、「ここ(SNS投稿)で死刑制度に賛成している人が多いことにはうんざりだ。自分の国を捨てて、北朝鮮か米国か日本に移住したらどうだ?」との反論もありました。

なお在日本スイス大使館は、欧州連合(EU)などと共同で死刑執行に「遺憾の意」を表明し、日本当局に対し死刑の見直しを求める声明外部リンクを発表しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語、24heuers外部リンク/フランス語)

スイス時計界に仲間入りしたグランドセイコー

日本の時計ブランド「グランドセイコー」が高級時計の本場スイスでも注目されています。イタリア語圏の地方紙に続き、フランス語圏の大手紙ル・タンが成功の秘密を探りました。

セイコーウオッチが高級ブランド「グランドセイコー」を立ち上げたのは1960年。国内では長く知られた存在で、「60代が退職後に購入する時計として、古めかしいながら非常に人気があった」。

転機になったのは2010年に海外進出を決めたことです。ジュネーブの時計見本市「ウォッチズ&ワンダーズ」で同紙の取材に答えた内藤昭男セイコーウオッチ社長は、その理由を「セイコーが大好きだったから」と語りました。

「スイスから見るとこれは異端だ。ティソが高級時計の世界を征服するために『スーパー・ティソ』を立ち上げるようなものだ」。しかしイメージ戦略としては「まぎれもない成功」を収め、「スイス時計界の老舗の仲間入りを果たした」と記事は評価しています。

2018年に米国に子会社を設立すると、若年層に人気を博しました。日本でも購入層が若返り、かつてのような退職世代に限らず35~40歳がグランドセイコーを買い求めるようになったといいます。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)

永井豪さんがジャパン祭りに登場 招待秘話

スイス南部ベリンツォーナで9月20~21日に開催される第12回ジャパン祭り(Japan Matsuri)外部リンクに、「マジンガーZ」「キューティーハニー」などで知られる漫画家・永井豪さんが登壇します。めったに日本国外に出ることはないという永井さんの招待に至った経緯やイベントの足跡を、主催者のシーラ・ムジャスカさんがオンラインメディアのbluewin.chイタリア語版に語りました。

幼少期にテレビで観たアニメをきっかけに日本の漫画や音楽に傾倒したムジャスカさんは、東日本大震災の寄付金を集めるために2012年に日本祭りを立ち上げました。当初は1回限りのイベントにするつもりでしたが、反響の大きさから2回、3回と続けていき、今もイベント収益の一部をあしなが育英会などに寄付しています。

来場者は毎年記録を更新していると言い、2024年は1万7千人に達しました。成功の理由を、ムジャスカさんは「コスプレやライブなどのエンターテイメントと、日本の最も本格的・伝統的な文化を融合させている」ことにあると分析しています。ムジャスカさん自身、日本旅行中に各地の祭りに参加し、「それぞれの祭りには独自のアイデンティティとテーマがあり、装飾された山車、仮面、踊り、衣装、そして地元の精神性に結びついた儀式といった要素が含まれている」ことに感銘を受けたそうです。

≫飛騨の伝統「古川祭」もベリンツォーナに

永井さんについては「日本の漫画史に残る巨匠」と称えます。マジンガーZは「巨大ロボットというジャンルに革命をもたらし、後世の漫画家に影響を与え、世界中で知られる存在へと押し上げた物語とビジュアル要素を生み出した」。今年はマジンガーシリーズ第3作「UFOロボ グレンダイザー」の50周年に当たることを知り、永井さんの招待に踏み切ったと言います。

永井さんを説得した要素の1つは、「私たちの非営利的アプローチ」。日本祭りが完全にボランティアの手で運営されていることが永井さんの心を動かした、とムジャスカさん。「普段は数十万人規模のイベントにしか参加しない永井さんは、ベリンツォーナの城塞群に関心を持つようになったようです」と明かしました。(出典:bluewin.ch外部リンク/イタリア語)

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校閲:大野瑠衣子

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