The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

デモ、介入、楽天、トヨタ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

「改憲反対」などのプラカードを掲げるデモ隊
改憲や武装強化に反対を唱えるデモが日本各地で活発化している EPA/FRANCK ROBICHON

スイスの主要報道機関が4月29日~5月5日に伝えた日本関連のニュースから、①日本で平和デモが活発化②高市政権下で進む日本の変貌③1年9カ月ぶり大規模介入 円高の持続性は④楽天フランスが事業売却を検討⑤トヨタがAIプロバイダーに、の5件を要約して紹介します。

デモと聞いて思い出すのは、新型コロナ危機。周辺国に比べると行動制限が緩かったり遅かったりしたスイスですが、2020年3月にソーシャルディスタンスの義務化とともにデモも実質禁止となり、大きな議論を呼びました。それでもロックダウンに抗議するデモが発生し警察沙汰になったりと、この国でデモがいかに政治的権利として重視されているかを実感したものです。そんなスイスに、日本のデモ文化とその変容はどう映るのでしょうか?

「スイスのメディアが報じた日本のニュース」ニュースレター登録はこちら

日本で平和デモが活発化

高市早苗政権が武器輸出規制の緩和を決めたことを機に、日本各地で反戦・反改憲デモが活発化しています。スイスのフランス語圏とドイツ語圏の公共放送がそれぞれ、デモ文化が乏しいとされてきた日本の変化に注目しています。

フランス語圏のスイス公共放送(RTS)は、4月に国会議事堂前で開かれたデモを取材しました。「自分の国が武器を売るのを望んでいない」、「政府は『子供を産め』と言うけれど、戦争に送り込むためだけに子どもを産もうと望む人などいない。怒りが私をここに連れてきた」といったデモ参加者の声を伝えています。

また日本のデモ文化について「日本ではデモの評判が悪いと言わざるを得ない」と指摘。「支配層からは、暇を持て余した人々の単なる気まぐれだと嘲笑されている」。それでも「戦争という現実の危険と戦うため」声を上げている、と解説しました。

ドイツ語圏の公共放送(SRF)は東京在住ジャーナリスト、マルティン・フリッツ氏が解説を加えました。フリッツ氏は1960年代の学生闘争を例に「日本人が本質的にデモしないわけではない」ものの、国民の3分の1は60歳以上なのにデモに参加したことがない人が大半だ、と説明しました。その理由として「根本的に、政府は正しいことをしているという信頼が厚い」ことを指摘。就任後半年経っても高支持率を誇る高市氏が来年に改憲に着手する方針であり、「時期が近づけばデモはさらに活発化するだろう」との見方を示しました。(出典:RTS外部リンク/フランス語、SRF外部リンク/ドイツ語)

高市政権下で進む日本の変貌

「地政学的な問題において、この島国は新たな時代に突入しつつある」。ドイツ語圏の金融紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは、武器輸出の解禁は、日本経済が大きな「メタモルフォーゼ(変貌)」を遂げていることの象徴として、その背景を解説しています。

記事は武器輸出解禁の背景に、日本の防衛産業には防衛省しか顧客がいないため、業界低迷という長年の課題があったと解説します。「高市氏は強大な政治的影響力を駆使して軍事近代化を加速させ」、防衛予算の増額と武器輸出の解禁を成し遂げました。

「政府はまた、インフレ環境下で経済の勢いを維持することにも注力している」と記事は続けます。3月の総合インフレ率が1.5%、エネルギー・生鮮食品を除いたコアインフレ率が2.4%だったことを紹介し、エネルギー輸入国である日本がエネルギー価格を含む総合インフレ率を低く抑えられている理由として、燃料や電気・ガソリンへの補助金や、医療費を抑えるための薬価統制策、日銀の利上げへの消極姿勢を挙げています。

一方、記事は調査会社ガベカル・リサーチのコメントを引用して「日銀は今利上げを行わなければ、後々さらに大幅利上げをしなければならなくなる」と警告します。今年後半から2028年後半にかけて、予想を上回る利上げを続けることで、実質利回りが高くなり、円安の流れを食い止めることができる、と見ています。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/ドイツ語)

1年9カ月ぶり大規模介入 円高の持続性は

政府・日銀が4月30日、1年9カ月ぶりに円買い・ドル売り介入を実施しました。翌日には介入額は5兆円程度だったと報じられ、スイスでは金融メディア外部リンクのほか、ドイツ語圏の大手紙NZZが注目しました。

NZZは、「今回の介入は、激動の1週間となった世界金融市場の集大成と言える」と位置付け、日米中央銀行の金融政策や、イラン戦争の先行き不透明感から相場変動が大きくなったことを説明しました。ある市場関係者によると、日本政府は円相場がファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)から乖離しているとみて今回の介入に踏み切り、米国政府も介入を容認していると言います。

ただし「介入だけで十分かどうかには疑問が残る」と記事は注記します。野村証券のストラテジストは、NZZに「世界情勢や国内情勢の変化を伴わない円買い介入は、円高の持続にはつながらないだろう」と語りました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

楽天フランスが事業売却を検討

フランス語圏の大手紙ル・タンが、ネット販売大手の楽天のフランス子会社が売却を検討していると、仏経済メディアCapitalの報道外部リンクに追随する形で伝えました。記事によると、スイスにも顧客を抱えています。

同社経営陣が今月7日、労働者代表に事業の売却または廃業を伝達しました。これにより180人が解雇される見込みだと言います。

同社は2010年、楽天グループが仏小売プライスミニスターを買収して設立。過去10年、旧会社の損失補填やサイト近代化、AIの強化に投資してきましたが、「急速に変化する市場」に対応しきれなかったといいます。過去19年で顧客は33%、取引は42%それぞれ減少したと報じています。

同社は「これまでの投資と革新に見合った買い手」の確保に注力していますが、実現しなければ2026年第3四半期からの事業閉鎖も検討すると表明しています。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)

トヨタがAIプロバイダーに

日本を代表する自動車メーカーのトヨタ自動車がAI(人工知能)プロバイダーに変貌を遂げた――NZZは同社の実験都市「ウーヴン・シティ」で公開された豊田章男会長のAIアバターをこう位置付けました。

記事によると、豊田章男AIは10年以上にわたる同氏の演説やプレゼンテーション、記事を学習させて製作されました。「しかし、このAIレプリカは単なる見せかけではなく、戦略的なシグナルでもある」。トヨタをソフトウェアプラットフォームやロボット工学、新しいビジネスアイデアを生み出す「グローバルAIプロバイダー」に進化させるため、子会社「ウーヴン・バイ・トヨタ外部リンク」を中心に革新的な取り組みを進めていることを紹介しました。

その実験場であるウーヴン・シティは失敗の連続である、と記事は続けます。「時々失敗があっても構わない」と語る豊田氏の言葉を引用し、それでも「機敏な中国の競合に追いつくため」に最初の一歩を踏み出すことを重視する同社の方針を伝えました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

南部ティチーノ州の干し柿農家外部リンク(4/29)
暗号資産クレジットカードが発行開始外部リンク(4/29)
ぬいぐるみクリーニングがSNSで大バズ外部リンク(4/29)
「寿司プッシュポップ」スイスでも発売外部リンク(4/29)
宇宙で醸造した日本酒、50万フランで売却外部リンク(4/30)
東京でハンマー襲撃 5人負傷外部リンク(4/30)
米国への大規模投資がスタート外部リンク(5/1)
ナフサを年末以降も確保(外部リンク5/1)
フィギュア宇野昌磨、異例のキャリアチェンジ外部リンク(5/1)
日本人最高のテニス選手が引退外部リンク(5/1)
動物園で妻の遺体を焼却 職員逮捕(5/1)
高市首相「自由で開かれたインド太平洋」進化を表明外部リンク(5/2)
JALの手荷物運搬ロボット、羽田に到着外部リンク(5/2)
ポケモン成功の歴史外部リンク(5/2)
北部の山火事、鎮火宣言(5/3)
ロシア産原油の搬入開始(5/5)
太陽系の果ての天体に大気確認 国立天文台外部リンク(5/5)

話題になったスイスのニュース

6月14日の国民投票に向け、スイスでは移民政策や人口問題をめぐる議論が激しさを増しています。欧州と人の移動の自由を保証しているスイスの人口問題は、スイスだけ見て良し悪しが判断できるものではありません。移民の供給が下流から上流へと連鎖する「ドミノ効果」や、欧州周辺国との「人材争奪戦」が始まっていることを含めると、スイスへの移民流入だけを絞っても問題は解決しなさそうです。

おすすめの記事
ビーチタオルをどこに敷けばいい?大勢の人でごった返すチューリヒ、リマット川沿いの「オーベラー・レッテン」。スイスの人口増加を象徴するかのようだ

おすすめの記事

人口動態

スイスは人口増、欧州は人口減 どちらも幸せではない理由

このコンテンツが公開されたのは、 ヨーロッパでもスイスでも、少子高齢化や移民により人口動態が大きく変化している。そこに勝者はなく、将来のビジョンも見えない。しかも、今後さらに大きな変化が予想されている。

もっと読む スイスは人口増、欧州は人口減 どちらも幸せではない理由

記事向上のためアンケートへのご協力お願いします

毎週配信している 「スイスのメディアが報じた日本のニュース」 をお読みいただき、ありがとうございます。
皆さまのご意見は、私たちにとってとても大切です。2分ほどで回答できる簡単なアンケートにご協力いただき、より良いジャーナリズムづくりにお力添えください。
このアンケートは匿名で、回答内容や個人情報はすべて厳重に管理されます。

👉 アンケートに参加する外部リンク

次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は5月13日(水)に掲載予定です。

ニュースレターの登録はこちらから(無料)

校閲:大野瑠衣子

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部