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外国人嫌い、ロカルノ映画祭、ワンピース、ポケカ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

デモ
AP Photo/Louise Delmotte

スイスの主要報道機関が8月13日~19日に伝えた日本関連のニュースから、①日本が移民問題に苦戦する理由②ロカルノ国際映画祭で光った日本映画③ハリウッドに挑む日本の漫画・アニメ文化④マクドナルドのポケカ騒動、の4件を要約して紹介します。

今週は日本のクリエイティブ産業を絶賛する記事が2本。一方で外国人嫌いや食品ロスという負の側面にもスポットが当てられました。

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日本が移民問題に苦戦する理由

7月の参院選で参政党が大躍進を遂げて以来、日本が外国人排斥主義に向かうのか、スイスメディアでも注目が集まっています。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、日本在住歴20年のドイツ人ジャーナリスト、マルティン・フリッツ氏に、日本の外国人嫌いの実態を聞きました。

日本は本当に外国人嫌いなのか?フリッツ氏はこの質問を否定しながらも、外国人にとって日本社会での生活は決して楽ではないと断言します。

楽ではない理由の1つは、日本人が礼儀正しいゆえに人と距離を置き、それが根源的な懐疑心になって出現することです。例えばフリッツ氏自身、「いつになったら祖国に帰るのか?」という外国人なら必ず尋ねられる問いに何度も直面したといいます。

フリッツ氏は「多くの日本人は、自らの文化と共生のあり方が脅かされていると感じている」と指摘します。特に難しいのは、日本には暗黙のルールが多く、新参者には理解しにくい点だと言います。「日本人は常に場の空気を読み、それに自分を合わせる。コミュニケーションの多くはハイコンテクストだが、誰もが共有できる。そのため、人口過密な大都市であっても、人々は安心感を得られる」

ただし、公に外国人嫌いをむき出しにしてくる人もいる、と記事は続けます。極右勢力による「組織的な外国人嫌悪」です。フリッツ氏は「小規模ながらも声高なグループがメガホンを持って多くの韓国人や中国人、クルド人が住む地域に赴き、彼らに日本から出て行くよう要求している」と解説。記事は「制御不能の感覚を利用して政治的利益を得ているのは、右翼ポピュリストたちだ」と結びました。(出典:SRF外部リンク/ドイツ語)

ロカルノ国際映画祭で光った日本映画

今月5~16日に開催された第78回ロカルノ国際映画祭では、三宅唱監督の「旅と日々」が最高賞にあたる金豹賞を受賞しました。フランス語圏大手紙ル・タンは、受賞者の発表前に同作の受賞を予言していました。

記事によると、「旅と日々」はロカルノ映画祭で世界初上映されました。「この作品は非常にシンプルでありながら、言葉では言い表せない美しさにあふれている」。カンボジア人監督リティ・パン氏が率いる審査員会が「映画の政治的コミットメントではなく、映画の詩的な力に敬意を表する」ならば、同作は金豹賞に値すると明言しています。

「『旅と日々』は、サーガというより俳句に近い作品の一つであり、私たちはこの作品から、その漠然とした憂鬱に心を乱されながら、まるで空中浮遊のような感覚に陥る」

記事はロカルノ映画祭に出品されたもう1つの日本映画、河瀨直美監督の「たしかにあった幻」も絶賛しています。映画祭の開幕直前に出品が決まったこの作品。即決ではなかったことに一抹の不安がよぎったものの、上映された映画は「あらゆる疑念を一掃した」といいます。

「『たしかにあった幻』は、私たちが河瀨作品を愛する理由のすべてが詰まっている」。ドキュメンタリー的なアプローチを取るフィクションとの関わり、生々しい感情、そして人間が動物であれ植物であれ他の生命体と深く繋がるという「非常に日本的な精神性」への深い共感が表れていると評しました。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)

ハリウッドに挑む日本の漫画・アニメ文化

視聴回数はハリウッドの人気作「ゲーム・オブ・スローンズ」を超え、コミック発行部数は数億部、エマニュエル・マクロン仏大統領も大ファン――こう聞けば、日本の読者ならどの漫画・アニメのことか想像がつくかもしれません。ドイツ語圏の大手紙NZZは全面特集で、尾田栄一郎さんの大人気漫画「ワンピース」が世界を席巻しようとしていると伝えています。

「尾田栄一郎(50)は『ワンピース』で、世界で最も影響力のある文化的クリエイターの1人となった」。記事によると、尾田氏は存命中の作家の中では米国人作家ダニエル・スティールに次いで世界で2番目に売れています。原作漫画は「スパイダーマン」や「スーパーマン」のような米国作品に取って代わったと言います。業界誌は尾田氏の財産を少なくとも2億ドル(約300億円)と試算します。

記事によると、米国のカリスマ的シナリオ講師ロバート・マッキー氏は、著作「ストーリー」で欧米の映画産業を次のように批判しています。「質よりも量にますます重点を置くようになり、罪を犯している。安っぽいオチや表面的な物語に惑わされ、優れた物語を生み出す要素である、深い人間性の誠実な探求ではなく、技術的な効果に頼りすぎている」

一方で日本をはじめとするアジアでは、「人々を深く感動させる可能性のある映画が作られている」として、出版した1998年時点でアジア映画の台頭を予言していました。

記事はアニメ全般に対して、ストーリーが陳腐で安っぽかったり、メッセージが過度に感傷的になったりしやすい、という批判があるとも指摘します。しかし記事は「戦争や危機に関するニュースばかりでますます複雑化する世界では、『正しく行動すれば、良いことが起こる』というシンプルなメッセージが有効なのだ」として、それこそがアニメが成功する理由だと読み解きました。(出典:NZZ/ドイツ語)

マクドナルドのポケカ騒動、スイス人読者の反応は

日本マクドナルドが8~11日限定でセットメニュー「ハッピーセット」購入者にポケモンカード2枚を配布するキャンペーンを行ったところ、転売目的の大量購入が多発し、店頭の混雑や大量廃棄といった問題に発展。店の前に放置された食品の写真はスイスでもセンセーショナルに報じられ、読者のコメントも多く寄せられました。

大衆紙20min.ドイツ語版外部リンクでは、「日本にも貧困層はたくさんいる。カードはとっておいて、ハッピーセットはそういう人たちにあげればよかったのに」というコメントが多くの共感を呼んでいます。同紙フランス語版外部リンクでは「注文時に同伴する子ども1人につきハッピーセット1点を提供すればよい」という提案が賛同を得ていました。

オンラインメディアwatson.chドイツ語版外部リンクでは、スイスなど欧州の店舗ではおまけだけ購入できると指摘。「店舗によっては、前のキャンペーンの在庫がまだ残っているところもあり、子どもがフィギュアを全種類集めたい場合などに便利だ」との投稿もありました。また「確かに無駄が多いが、日本は自由な国。もし食べ物を買って捨てたいなら、捨ててもいいのだ」との見方もありました。

全体として食品を無駄にする消費者に批判的な声が多くなっていますが、一部ではハンバーガーは「有害廃棄物として処分するのが適切」など、ファストフードに対する嫌悪感がにじむコメントもありました。

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話題になったスイスのニュース

スイスの時計大手スウォッチが、人種差別的な意味合いを含むとされる「つり目」ポーズの広告を出し、中国を中心に大炎上。スウォッチは「苦痛と誤解を招いた」として謝罪し、広告を撤回しました。日本では当該広告が出回る前の出来事でしたが、日本人読者からも広告が制作されるまでの経緯に疑問を抱く声が上がっています。

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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は8月27日(水)に掲載予定です。

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校閲:大野瑠衣子

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