沖縄知事選、学力調査、みつばちマーヤ…スイスが報じた日本のニュース
スイスのメディアが9日~14日に報じた日本のニュースから、①沖縄県知事選②PISA学力調査③みつばちマーヤ、の3件を要約してお届けします。
「日本の教育は優れているからPISAで首位になった」――そう単純には言えないようです。あるスイスメディアの報道が興味深いのは、日本の強さだけでなく、欧米の学力低下という「相対的な勝利」にも目を向けている点です。AIに学習を委ねすぎず、自分の頭で読み、考え、解く。そこに日本の強さがある一方、「勉強したい」より「勉強するもの」という感覚が支えている日本の教育を、私たちはどう評価すべきなのでしょうか。
スイス紙が見た沖縄県知事選
スイス・フランス語圏の有力紙「ル・タン(Le Temps)」は、緊迫する台湾情勢の影で実施された沖縄県知事選挙の現地ルポを掲載しました。沖縄が背負う米軍基地負担の不条理と、それに対する複雑な民意の揺れを伝えています。
同紙はまず、「日本の南部に位置するこの小さな群島は、国土のわずか0.6%を占めるに過ぎないにもかかわらず、国内米軍基地の約70%が集中する」と、沖縄が置かれている圧倒的な不均衡を具体的な数値の対比をもって示しました。
この基地の集中が、国と地方の政治的対立を長年にわたって深刻化させてきたと同紙は分析します。1972年の本土復帰や日米安全保障条約(安保条約)の締結以来、沖縄と政府との関係が常に一触即発の緊張状態にある背景を説明しました。
同紙はその歴史的経緯を踏まえた上で、今回の選挙戦に出馬した政府与党が推す新人・古謝玄太氏の「現実路線」に注目。「中央政府を歴史の悪役に仕立て上げるのは容易なことだが、それでは沖縄を前進させることはできない」という同氏の主張を紹介しつつ、基地反対運動だけでは地域経済やインフラの発展が進まないという沖縄が直面する現実的な葛藤を浮き彫りにしました。
ル・タンはこの沖縄の知事選のもう一つの側面として、単なる一地方の選挙を超えた日本全体の安全保障と民主主義のあり方を問う「試金石」でもあると位置づけました。2027年度に向けて過去最大となる約8兆9000億円の防衛予算を可決した高市政権にとって、この選挙は春の統一地方選の行方を占う極めて重要な局面です。同紙は専門家の言葉を借り、沖縄だけに基地負担を集中させる現状を「民主主義国家における『公平性』の観点から、重大な矛盾を意味している」と指摘。日本の国家安全保障システムが抱える「重大な構造的歪み」だと伝えました。
しかしその一方で、台湾有事への現実的な危機感などを背景に、基地移転・拡張を支持する保守系候補が世論調査でリードするという変化も紹介しています。安全保障上の脅威と民主主義国家としての倫理的公平性という「二つの正義」の狭間で揺れ動く日本の現状を、冷静に見つめています。
日本がPISAで首位に立つ理由は?
国際的な学習到達度調査(PISA)において、日本が加盟する経済協力開発機構(OECD)諸国の中で全分野トップ級に立ったことが明らかになりました。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、他のOECD諸国で学力低下が見られる中、なぜ日本が高い成績を維持しているのかを独自の視点から分析・報道しました。
SRFはまず、欧米のOECD諸国と比べ、日本の生徒は学校の課題を解くためにAIチャットボットを使う頻度が低いと指摘。東京在住のジャーナリスト、マルティン・フリッツ氏の「日本の15歳は、今でもより多くの部分を自分自身の力で読み、計算し、書いている」という言葉を紹介しました。また、日本の若者は欧米の同世代と比べ、SNSに費やす時間も短いとしています。こうしたデジタル機器による学習への影響の少なさが、日本の高い学習効率を維持する要因の一つになっていると続けました。
さらに、教室の雰囲気が非常に規律正しく、騒音や混乱が少ないことなども、日本の学生の学習効率を考える上で一つの要素にになっていると続けました。
一方で、SRFは日本が首位に立った背景にある、他国の「自滅」という構造にも言及しました。日本でも読解力の低下などの課題は見られるものの、数学や科学の分野は持ちこたえたとし、「日本のトップという地位は、他の先進諸国がより大きく学力を低下させたことによる結果でもある」としました。
また、日本の生徒の学習に対する姿勢についても、欧米とは異なる特異な精神構造が見られると位置づけました。SRFは「日本においては、自発的な学習意欲はそれほど強くないように見受けられる。しかし、勉強することの必要性自体は受け入れられている」と結んでいます。
「みつばちマーヤの冒険」50周年
アニメ「みつばちマーヤの冒険」が、ドイツでの初放送から50周年を迎えました。スイス公共放送(SRF)はこの記念すべき節目に合わせ、本作がどのようにして世代を超えた文化的アイコンとなり、今なお人々に親しまれ続けているのかを報じています。
本作の最大の魅力の一つは、その主題歌が持つ圧倒的な存在感にあります。同メディアは、カレル・ゴットが歌う主題歌について、「子ども向け番組という枠を超えて独自の生命力を育み、今や民俗祭や歌謡パーティー、移動遊園地で歌われる定番曲となっている」とし、社会に深く根を下ろした文化として定着していることを紹介しました。
この名作が誕生した背景には、1970年代当時としては極めて先進的な国際共同制作がありました。SRFは本作の成立ちを、「ドイツの放送局ZDFの委託で、ロサンゼルスで企画・開発され、日本でアニメーション制作が行われた」と説明。日本の高い作画技術が、欧米の企画力と結びつくことで世界的なコンテンツを生み出すという、現代のグローバル・アニメビジネスの先駆的な構造がここにあったと位置づけています。
また、「このシリーズを一大ブランドへと押し上げたのはテレビだった。公共放送しか存在せず、子ども向け番組やアニメの分野において競争がほとんどなかった時代のことだ」と紹介。選択肢が限られていた時代だったからこそ、全世代に共通する文化的記憶として深く刻み込まれたという歴史的背景を浮き彫りにしています。
マーヤの旅はここで終わるわけではありません。すでに50周年記念の新作映画がスイスなどで公開されており、権利所有会社のStudio 100は、デジタルチャンネルも含めたグローバルなブランド展開を計画しているとSRFは紹介。「マーヤはこれからもずっと、草原の上空を飛び続けるだろう」と結んでいます。
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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は9月22日(火)に掲載予定です。
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校閲:大野瑠衣子
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