ライバル都市がジュネーブから国際機関を「引き抜き」へ
ドナルド・トランプ米大統領による対外援助削減をきっかけに国連が資金危機に直面する中、欧州連合(EU)加盟国の首都や湾岸諸国が、ジュネーブから国際機関やその職員を誘致しようと競い合っていると、スイス当局者らが警告している。
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国連欧州本部、数十の国際機関、数百のNGO、外交使節団が集まるジュネーブは昨年、数十年ぶりの最大の試練に直面した。トランプ政権が米国の対外援助の大半を凍結し、世界保健機関(WHO)から脱退、複数の国連機関への資金拠出を停止したためだ。
同時に、多くの国が多国間システムへの拠出を減らし、国防などの分野への支出を増やしている。
こうした財政危機を受け、国連各機関は人員削減や採用凍結、より安価な拠点への移転を余儀なくされている。その矛先が向けられているのが、コストの高いジュネーブという場所だ。
「インターナショナル・ジュネーブ」として知られるこのエコシステムは、外務省の試算によると年間約40億フラン(約7500億円)の経済活動を生み出している。政府統計によれば、約450の国際機関・NGOが拠点を置き、約185カ国が常駐代表部を置く。
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スイス当局者によると、約20カ国がこの混乱に乗じ、外交ハブとしての自国の地位強化を図ろうとしている。名前が挙がるのが、オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、そしてカタールとアラブ首長国連邦(UAE)だ。
「多くのヨーロッパ諸国がホスト国としての野心を持っており、この苦境の時期を自国の地位強化に利用しようとしている。あからさまな引き抜きだ」と、事情に詳しいスイス当局者の一人は語った。
ジュネーブ州国際問題局長のベアトリス・フェラーリ氏は「2025年の財政支援削減は、多くの挑戦者、特にヨーロッパにとって本物の機会を開いた」と述べた。
WHOは組織再編の一環として、一部の本部機能をフランス・リヨンに移転することを提案している。ユニセフはローマなどコストの低い都市に数百のポストを移転中で、国際労働機関(ILO)もトリノにある既存の研修センターへの一部スタッフと機能の移管を表明している。
前述のスイス当局者は「一部の加盟国が、ジュネーブから自国の都市に移転できる人に対し、一定額を提供している」と明かした。
ジュネーブを拠点とする別の政治家は、各国政府がジュネーブを丸ごと再現しようとするのではなく、特定分野に特化した役割をそれぞれの都市に設ける動きを強めていると指摘した。スペインはバレンシアをデジタル化・データの拠点にしようとしており、フランスはリヨンを国際保健ガバナンスの中心地として、またパリの教育分野の存在感を高めようとしている。ドイツはボンの環境関連機関とベルリンの国際的役割を強化し、ウィーンは国連ハブとしての地位拡大を目指している。
この政治家は「各国はエコシステムの異なる部分を求めている」と語る。
湾岸諸国の中では、スイス当局者はカタールを最も強力な競争相手と見ている。カタールは外交的仲介者としての地位を確立している。例えばガザ問題やイランを巡る最近の外交を含む調停などにおいて同国の役割が拡大したとし、政治的影響力と「非常に魅力的な財政的提案」を組み合わせながら、より大きな人道支援ハブになろうとしていると述べた。
スイス連邦政府は対抗策として、ここ数年で最大規模のホスト国支援パッケージを繰り出した。連邦政府は6月、国連機関が直面する財政危機と国際機関誘致をめぐる「国家間の競争激化」を理由に、「国際都市ジュネーブ」向けに2億6900万フランの支出を承認した。
このパッケージには、財政難に陥っている機関への緊急資金援助、会議・デジタルインフラへの投資、国際機関が使用する建物改修のための7800万フランの無利子融資、そして人工知能(AI)などの先端技術分野におけるジュネーブの取り組みへの支援が含まれる。
ジュネーブ州とロレックスを傘下に持つハンス・ウィルスドルフ財団も、5年間にわたって国際都市ジュネーブを支援するための5000万フランの基金を創設した。州はNGO向けに1000万フランを拠出し、ジュネーブ市もさらに200万フランを拠出することを約束した。
スイス当局者は、ライバルのホスト都市に対して資金力で勝負しようとしているのではなく、ジュネーブを国際協力の世界的な中心地たらしめてきた国連機関、外交官、NGO、研究者の集積を守ることが目的だと主張している。
スイス当局者らは、移転の経済的メリットは過大評価されることが多いとも指摘する。他の都市での低い給与や賃料も、会議施設や行政支援、外交ネットワークを再構築するコストによって相殺されかねない。また、機関を分散させることで、ジュネーブが地球規模の問題解決に効果的に取り組んできた協調体制が弱体化するリスクもある。
「米国の撤退により激しい競争が起きている」と、ジュネーブ州議員でジュネーブ商工会議所事務局長のヴァンサン・スビリア氏は語った。「しかし連邦政府、州、市がいずれも、その穴の一部を埋めるために力を尽くしている。機関の高い集積度があるからこそ、ジュネーブは依然として最も強力で唯一無二の国際エコシステムを提供できている」
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すべての国が関与を縮小しているわけでもない。スイス当局者によると、中国などは米国の後退を好機と捉え、ジュネーブの多国間機関への関与を強めている。
フェラーリ氏は、ベリーズや一部の太平洋島嶼国を含む6カ国が過去2年間に新たに常駐代表部を開設したと述べた。
「危機はまだ終わっていないが、ジュネーブは依然として最大の中心地であり、意思決定者に最も近い場所だ」と同氏は付け加えた。
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英語からの翻訳・校正:宇田薫
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