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ウスター市と日本

ウスター城を見渡す市内。1000年の歴史を持つ市が図る経済発展は日本人学校をバネとする

チューリヒ市から東へ電車で20分のウスター ( Uster ) 市で10月26日、「ジャパン・デー」が開催される。

チューリヒ州第3の都市とはいえ、人口はたったの3万人のウスター市だが、ジャパン・デーなどを通し、日本との関係をより深めることで、外国企業の誘致や学術交流に力を入れている。

 同市商業振興課の責任者ミヒャエル・ゲーハール氏は、学問と経済発展を分けて考えることをしない。「ウスターの経済振興の観点から、日本人学校は大きなメリットです」と言う。文部科学省が指定し日本から教員が派遣されているスイス唯一の全日制の日本人学校が、ウスター市にあることを同氏は指している。

経済と学術の交流の場

 ウスター市はチューリヒ州の小都市ながら、国際的に活躍する企業が集中している。日本にも子会社のある精密機器の「メトラー・トレド ( Mettler Toledo )」、織物検査を専門とし、近くスイス証券取引所に上場される「ウスター・テクノロジズ ( Uster Technologies )」、ラボ用など特殊ガラス器具の「ビュヒ・グラス ( Büchi Glas ) 」などのほか、日本企業の輸入代理店も居を構えていることは、注目される。

 一方で「資源である教育がまず大切だと思っています。こうした意味からも、日本人学校があることは、われわれの誇りです」とゲーハール氏は言う。日本人学校を通し、日本はもとより、国外からの企業の誘致や、国際的な学術交流の中心地になることがウスター市の展望だ。

歓迎される外国人学校

 1975年に開校した日本人学校へのウスター市の全面的な協力については、日本人学校の政木恵美子校長も強調する。「市長さん、助役さん自らが、例えば運動会でパン食い競争をしたり、学校の行事に積極的に参加してくれます」。市の小・中学校との交流学習のためには、教育委員会がパートナー校探しに協力してくれたという。警察のパトロール、消防署避難訓練なども充実している。
 
 日本人学校の生徒数は現在20人。20年前には80人以上いたが、1990年後半にスイスから企業が次々と撤退し、激減した。政木校長が就任してからは、日本人学校が「日本の良き文化や心」を学べる場として、積極的にアピールする活動も行っている。「ウスター市には、企業誘致が進み多くの日本から企業が来ることで、日本人学校にも多くの児童、生徒が学ぶようになることが望ましいと申し上げています」と政木校長も、経済と学問の相乗効果を期待する。
 
 ウスター市は日本人学校のほか、ほかの外国人学校の誘致にも積極的だ。外国人学校は企業誘致の重要なファクターなのだ。学校誘致から学術交流や企業誘致に発展するという長期展望を持つゲーハール氏の次の目標は、「経済デー」である。ウスター市にスイスと日本の経済関係者や企業を招き、同市のアピールに努めるという。

 日本人学校の児童、生徒の鳴らす和太鼓とわらべ歌の紹介で始まるジャパン・デーを通し、ウスター市はいかに経済発展を遂げるのか。その帰趨 ( きすう ) が注目される。

swissinfo、 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

<日本人学校>
1988年開校
政木恵美子校長
文部科学省派遣教員8人を含め職員11人
全日制の児童・生徒数20人
補習校の生徒数は幼稚園も含め約130人
<ウスター市>
人口3万144人 ( 2006年 )
企業など職場提供件数 1421件 ( 2005年 )
労働者数 1万549人 ( 2005年 ) 
第2次産業28.1%、第3次産業69.2% ( 2005年 )
失業率4.2% ( 2006年 )
法人税12.0%

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