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バチカンとの歪んだ関係  ローマ法王のスイス訪問

ヨハネ・パウロ2世、20年ぶりでベルンを訪れる。6日のミサにはスイス国内外から7万人が参加した。

(Keystone)

6月5日から2日間、ローマ法王ヨハネス・パウロ2世が首都ベルンを訪問した。スイスのカトリック青年信徒が一万人集まる集会に参加し、日曜日にはミサを執り行った。

ローマ法王のスイス訪問は20年ぶり。これまでバチカン大使は、在プラハの大使が特別大使として兼任していたが、今回の法王訪問に際し政府は、正式なバチカン大使を在ローマ・スイス大使館に派遣することにした。政府の決定に国内のプロテスタントの団体は反発している。

ローマ法王を護衛するバチカンの衛兵はスイス人である。このことから、スイスとバチカンの関係は深いと思いがちだが、両者は歴史上幾度か対立したこともあり、必ずしも友好的関係とは言えない。カルビンやツゥイングリなど宗教改革者の活動の場となったスイスとバチカンの関係は歴史的に見ても複雑で、バチカンから見ると、スイスのカトリックは「異端」的なことも許しているという。また、何事も民主主義で決めるスイスとトップダウンで決めるバチカンとの対立から、80年代には、クール司教区の司教任命で両者が対立する「事件」も起こった。

青少年にとって意味のある訪問

 連邦統計局によると、スイスでは1割以上が無信教と自らを認め、法王の「神聖性」を認めない人が全体の5割以上いる。しかし、アマデー・グラーブ司教は、カトリック青少年集会も催される法王のスイス訪問は、特に青少年にとって大きな意味があると言う。「新興宗教に走る青少年がいることからも分かるように、彼等は、生きることの意味、聖書の意味、教会が世界に果たす役割、享楽に浸る今の社会が本当の満足を与えてくれるのか、といった疑問を持っている。こうした模索の中で、法王に『出会う』ことは意味が深い。法王も青少年に対しては大きな信頼を寄せている」と語った。

 アッペンツェルから、6時半に起きて3時間かけてベルンへ来たクレメンス・フェセルさん(17歳)は、「僕の村ではキリスト教はすっかり生活に根付いている」と宗教と自分は切っても切れない関係があると語った。
 グラウビュンデンから来たのはマテア・ボスニヤクさん(15歳)。「祖国のクロアチアで法王に会うことなんてできなかった」。彼女は家族と一緒に来たクロアチアからの移民である。同じグループのミケーレ・カッソーネさん(14歳)は、「法王は大好き。考え方がとってもポジティブだから」と頬を紅潮させながら答えた。

 グループを統率してきた、イサ・カメーニシさんは、教会の助手をしている。「わたしは男性と同じように宗教学を学んだが、神父にはなれません。彼の女性蔑視の発言には疑問を持っていますが、やはり法王はわたしにとって大きな意味ある存在」と冷静に今回の訪問を捉えている。

経費はスポンサーにも頼る 

 2日間にわたる法王のスイス訪問と行事に掛かる費用は250万フラン(およそ2億2,500万円)で、スイス司教会議が請け負うほか、民間企業がスポンサーとなっている。カトリック青少年集会の入場料(1人50フラン)の収入も見込まれている。

 法王が宿泊するのは、インゲンボール女子修道院が経営するベルンの老人ホームと質素であるが、60万フラン(およそ5,400万円)の運営費のほか、集会のための臨時舞台の設置には35万フラン(同2,880万円)が必要だ。警備の経費はベルン市とベルン州が請け負うが、スイス政府からは一切お金は出ない。民間スポンサーは食品大手のネスレ(5万フラン以上)、カジュアルウェアーのスゥイチャー、スイス・コカコーラ、ベルンメッセ(いずれも5万フランから2万フラン)などのほか、ベルン州銀行、製薬大手ノバルティスと続く。「倫理面で問題のない企業」を司教会議が選んだが、具体的な判断の基準は公表されていない。 

異端児スイスが関係修復を試みる

 スイスのカトリック教会はバチカンにとっては「異端児」である。 チューリヒではツゥヴィングリ、ジュネーヴではカルビンという宗教改革者を生んだスイスは、カトリック教徒が42%、プロテスタント教徒が35.2%と両派が混合している。 スイスではカトリックの州とプロテスタントの州に分裂し1841年、分離同盟戦争が起こる。結局プロテスタントの州が勝利し、バチカンとの関係も一旦、絶たれてしまう。1920年になってスイス国内の宗教の対立が収まると、スイスとバチカンの関係も一応正常化するが、スイスのバチカン大使は特使でバチカンに大使館を持たないままだった。

 歴史的背景のほか、スイスの直接民主主義も階級主義のバチカンとは相容れない。スイス東部のクール司教区の新司教任命では、バチカンが指名した司教に反発したスイス司教会議が、新司教は保守的過ぎて信徒に愛されていないことを理由に、ミサをボイコットした。結局、バチカンはスイスに譲歩し、新司教はリヒテンシュタインの司教に任命された。

 神父の数が足りないことを理由に、神学者が神父の代行をすることを認めているのは世界でもスイスのカトリック教会以外にはない。これもバチカンにとっては、「異端」の兆候。

 歪んだ関係をどうにか修正したいキリスト教民主党出身のジョゼフ・ダイス大統領は、ローマ法王スイス訪問を機会にスイスから正式な大使を派遣することを決めた。しかし、この決定に国内のプロテスタント教徒は反発している。

 6日のミサで法王は、「スイスの若者達がバチカンの衛兵として500年にわたり、その信仰と教会への愛を証明した」とスイスの若者を祝福した。


スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)ベルン

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スイスの宗教:

42% カトリック教徒
35.2% プロテスタント教徒
4.3% イスラム教徒
0.2% ユダヤ教徒
11.1% 無信教者

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