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もぐもぐスイス味 第2弾 その3 ― モモヨ隊員と「鳥の餌」 ―

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ビジネスの街チューリヒでも、世界のトレンドに従って食事はもっぱら健康志向が人気。スーパーでも有機栽培の食材は値段が多少張っても売れている。街のレストランでもベジタリアンメニューを、少なくとも1品は用意しているところが多い。

今回モモヨと訪れた「ヒルトゥル ( Hiltl ) 」は、創業110年を誇る伝統あるベジタリアンレストラン。創業当時は「鳥の餌」を食べに行くのかと嘲笑 ( ちょうしょう ) され、人気はさっぱりだったというが、いまやランチもディナーも満席の日が続くほどだ。

 初秋、夕方6時、まだ明るい。チューリヒ市メインストリートのバーンホフ通りから徒歩で2分。広く場所が取られたテラスには、夏の名残を惜しむかのように、すでにたくさんの客が飲み物を片手に座っていた。レストランは今年改装したばかり。1階はいわゆるデザイナーレストラン風。2階は、17世紀のフランス風の椅子とシャンデリアが配置されたコーナー、そしてモダンコーナーの2つに分かれる。

ニクニクしき野菜

 ベジタリアンレストランとして当然のことながら、サラダのバリエーションは豊か。もぐもぐ第1弾で紹介したチューリヒ風ゲシュネツェルテス、ストロガノフ、コルドンブルーなど肉を想像するメニューも目白押し。もちろん肉ではなく、大豆やキノコなどを使う。

 そのほか、パスタ、ご飯ものほか、4種類のカレーもありメニューのバリエーションは非常に豊富。同じご飯ものでも、モミの状態で1度蒸し殻を取ったパーボイルドライスやインドのバスマティライスなど料理に応じたコメの選択には感心する。

 ビュッフェでは100グラムごとの重さで値段が決まる会計で、約30種類の料理の中から好きなものを選べる。味を重視するなら、少なめに盛り数回に分けそれぞれの料理の味が混ざらないようにするのがコツ。

 若い女性ばかりのグループが8割を占める。夜も更け、店内が騒音に包まれるのは、洋の東西を問わない女性の話し好きのためか。サービスは機敏で、1度も待たされたと思うことはなかった。

 今年行われた改装後は、内装ばかりではなく料理のプレゼンテーションもぐんとファッショナブルになった。モモヨの頼んだルッコラサラダには、マリーゴールドの淡い黄色の花が飾られていた。隊長が30年前初めてここを訪れたときとはまったく違って、おしゃれな気分にどっぷり浸ることができた。

・・・でモモヨ隊員は

 前菜きれいねえ。ええ、さすがに郷土料理編とは違いますね。「あとね、ここは100年以上の歴史があって材料は全部有機無農薬よ」とサトー隊長。ははあ。体にイイ+クール+カッチョイイ=すごくはやる んですね。

 メインには「ベジといえば、インド料理は外せませんね」とモモヨ推薦により1皿は印度カレー盛り合わせ、もう1皿は伝統的と銘打ってあるコーナーからキノコのストロガノフを頼む。

 まず、互いの皿をいつものようにこっそり味見しあう。モモヨ注文のキノコのストロガノフはちょっとがっかり。お米がパーボイルドライスだし、君もかヒルトゥル、しょっぱいね。やっぱりここはスイスです。

 ところがサトー隊長のカレーは本格的に香るインド風。スパイスきっちりでメリハリがあって大変よろしい。なのに、隊長「辛くって目がマワル・・失神しそう」本当にフラッとしてきた様子。でも「普通にきっちりスパイシーなだけですよお。隊長は色々と特異体質ですからね。じゃ、そのお皿、モモヨが頂きます」隊長はストロガノフね。やたっ。

 ストロガノフははずしたものの、ほかにも何くれとなく試してみたい料理がいろいろあるお店でありました。

swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) & モモヨ

ヒルトゥル ( Haus Hiltl )

住所 :  Sihlstrasse 28, 8001 Zürich
電話 : +41 44 227 70 00
予約 :  予約したほうが良い。インターネットでも予約可能
時間 : 日、月曜日 6~24時、火、水曜日6~02時、木、金曜日6~04時。
メニュー : ルッコラサラダ13.50フラン( 約1300円 ) 、マッシュルームサラダとパイ15.50フラン( 約1500円 )、キノコのストロガノフ28.50フラン( 約2800円 )、インドカレー27.50フラン( 約2700円 )、有機ビール5フラン( 約490円 )、デザート6.50フラン( 約640円 )
予算 : 2人でワインなども取ると140フラン ( 約1万4000円 )

行き方 : チューリヒ市バーンホフ通り、トラムの停留所Rennweg/Augustinergasseから、スーパーマーケットCoop と書店 Orell Füssli の通りを進むと、正面に見えてくるのがヒルトゥル。

1898年、チューリヒ市に「ベジタリアンハイム・禁酒カフェ ( Vegetarierheim und Abstinenz-Café ) 」が営業を開始。当時ベジタリアンはあまり知られていなかったので、嘲笑 ( ちょうしょう ) の種にさえなったほどで、レストランははやらなかった。

同じ頃、アンブロシウス・ヒルトゥルはドイツ、バイエルン地方からチューリヒに移住し仕立職人をしていたが、1901年に大病を患った。医師の勧めにより、肉を一切食べずベジタリアンの食事をすることで奇跡的に病気を治した。その際、料理に当たったのは厳格なベジタリアン料理で育ったドイツ、ザクセン出身でベジタリアンハイムの料理人マルタ・グノイペルだった。健康になったアンブロシウスはベジタリアンハイムの支配人のとなり、またマルタの夫として新しい人生を歩むことになった。

現在、ヒルトゥル家の4代目がこのレストランを引継ぎ、ヨーロッパ最古のベジタリアンレストランとして人気を博している。 ( 以上ヒルトゥルのホームページより )

ヒルトゥルは健康志向ブームに乗り、純粋なベジタリアンばかりではなく「時々ベジタリアン」な客が訪れる。2007年には全面的に内装を新しくし、ディスコ風なバーやテイクアウトサービスも充実したチューリヒ市の人気スポットとなっている。

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