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ガザ停戦、トランプ関税、バイソン…スイスのメディアが報じた米国のニュース

バイソンの群れ
米イエローストーン国立公園ではバイソンの数が回復し、生物多様性に貢献している Keystone

スイスの主要報道機関が10月9~15日に伝えた米国のニュースから、①ガザ停戦合意、トランプ氏の功績は②トランプ関税が世界経済に与える影響③バイソン急増 生物多様性に貢献、の3つを要約してお届けします。

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ガザ停戦合意、トランプ氏の功績は?

「私がこれまでの人生でやってきたことは、ディール(取引)だけだ。最高の取引は、ある意味で偶然に起こるものだ… まさにそれが、ここで起こった。そしておそらく、これはこれまでで最高の取引になるだろう」。イスラエルとハマス間の停戦合意の仲介に成功したことを受けて、ドナルド・トランプ米大統領は中東の平和についてこう述べました。この観測が果たして現実のものになるかどうかは分かりませんが、スイスのメディアは慎重ながらもトランプ氏の功績を評価しています。

記者団の取材を受けるドナルド・トランプ氏
14日、ワシントンに戻る政府専用機の中で記者の質問に答えるドナルド・トランプ大統領 Copyright 2025 The Associated Press. All Rights Reserved

ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は「ガザ地区での停戦により、ドナルド・トランプ米大統領は、世界の外交が 2 年間に達成できなかったことを成し遂げた」と報じました。ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは「トランプ氏はこの称賛に値する」と書いています。

SRFは15日、解説記事も配信。「停戦は脆弱であり、平和の枠組みは見えていない。しかし人質はイスラエルに戻り、ガザ地区の人々はもはや爆弾の雨に晒されていない」と評価しました。

SRFは、トランプ氏の性格がガザ合意に「決定的な貢献」をしたと指摘しました。「平和の仲介者として歴史に名を残したいという願望に駆られ、彼は従来の配慮を脇に置き、イスラエルに圧力をかけた」。またトランプ氏は「親友」であるトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領ら指導者に頼り、パレスチナの武装組織ハマスに影響力を行使することもできたと分析しています。

果たして和平は持続するのでしょうか?元パレスチナ文化相アヌアル・アブー・アイシェはフランス語圏日刊紙ル・タンへの寄稿で、「トランプ案は良い出発点かもしれないが、平和は国際法の尊重に基づく公正な解決によってのみもたらされる」と述べました。

ドイツ語圏の大手紙NZZは「トランプ氏の最も厳しい批判者たちでさえ、彼の政策が描写されている以上に曖昧で多層的であることに徐々に気づき始めているようだ」と指摘しました。同紙は、これまでトランプ氏を「人類への脅威」と連日描写していたメディアが、今や突然ノーベル平和賞の授与を呼びかけている様子を「ほとんど滑稽だ」と評しています。「平和を擁護する姿勢は世論を変える。おそらくこれが、トランプがノーベル平和賞に執着する理由でもある。それは彼にとって、自分を人種差別主義者やファシストと呼ぶ者たちが間違っているという公的な証明となるからだ」

ターゲス・アンツァイガーは、ガザ停戦が示すのは「トランプ氏が権力と影響力を行使し、米国民主主義をさらに損なうのではなく中東などの外交危機にエネルギーを集中させれば、終わりのない暴力の連鎖を止めることに成功するかもしれない」という点だと解説。同紙は、もしそうなればトランプは確かにノーベル平和賞の有力候補となるだろうと指摘しました。ただし「自ら求めるものではなく授かる栄誉」であるとくぎを刺しています。(出典:SRF外部リンクターゲス・アンツァイガー外部リンクNZZ外部リンク/ドイツ語、ル・タン外部リンク/フランス語)

          牛の銅像と記念撮影する観光客
          米金融街ウォールストリートの牛といえば「チャージング・ブル」 Copyright The Associated Press 2019

          トランプ関税が世界経済に与える影響

          NZZは15日の記事で、世界経済は半年前に懸念されていたよりも良好な状況にあるが、ドナルド・トランプ米大統領の関税政策は依然として大きなリスクである、と警告しています。

          記事は国際通貨基金(IMF)が14日に発表した「世界経済見通し」を解説したもので、IMFは今年の世界経済成長率を3.2%、2026年は3.1%と予測しています。トランプ大統領が二国間制裁関税を発表し世界、特にスイスに衝撃を与えた直後の4月予測(2.8%と3.0%)から上方修正されています。

          IMFは現在、悪影響が予想の下限にあると見ています。世界経済は、ワシントンのIMF専門家が懸念していたよりも回復力があることが証明されているといいます。なぜか?IMFのクリスタリナ・ゲオルギエヴァ専務理事は以下の4つの理由を挙げました。

          • 新興国経済の金融・財政政策が安定化していたため、混乱期における資本流出に歯止めがかかった
          • 民間部門は極めて適応力が高い。多くの企業が関税回避のため、サプライチェーン(供給網)を調整したり米国向け輸出を前倒しした。特に米国における人工知能(AI)インフラへの活発な投資が経済成長に大きく寄与した
          • 米国の関税が世界の貿易全体に与えた影響が懸念されていたほど深刻ではなかった。「世界はこれまで、報復に基づく貿易戦争への転落を回避してきた」(ゲオルギエワ氏)。ただNZZは、再び激化したトランプ大統領と北京の関税紛争が、状況が依然として極めて不安定であることを示していると指摘
          • 多くの地域で非常に有利な金融環境が整っている

          しかしながら、IMF報告書は中央銀行に対する政治的圧力の高まりが金融政策の信頼性を損なう恐れがあると総括しています。この警告は、トルコやアルゼンチンといった国々だけでなく、トランプ大統領が数カ月間も連邦準備制度理事会(FRB)に利上げを迫る米国に対しても向けられていることが明らかです。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

          バイソンの横顔
          イエローストーンの牛といえばバイソン Copyright 2017 The Associated Press. All Rights Reserved. This Material May Not Be Published, Broadcast, Rewritten Or Redistribu

          バイソン急増 生物多様性に貢献

          米西部イエローストーン国立公園で野生バイソンの数が急増していることが、彼らを支える生態系を活性化させ、鳥類や両生類の生物多様性の向上に寄与しています。ル・タンが13日報じました。

          記事は、19世紀初頭に米国に生息していた3000万~6000万頭のバイソンが、保護活動が始まる前の1900年にはわずか1000頭しか残っていなかったと伝えています。現在、その個体数は推定40万頭に。大半は数百頭規模の小規模な群れで生活しています。バイソンの約半数は牧場で飼育され、食肉用として利用されています。残りの半数は連邦政府の管理地で生息し、個体数調整のため毎年7万5千頭が屠殺とさつされています。

          イエローストーン国立公園の野生化政策は1960年代に始まり、バイソンの個体数を約5000頭まで増安ことに成功しました。公園当局が2024年までに設定した目標を超えています。

          公園の境界線を離れると捕獲され、屠殺されるという制約があるにもかかわらず、バイソンは季節に応じて、好ましい牧草地を求めて移動します。8月に米科学誌サイエンスに掲載された、イエローストーン公園の北部に生息するバイソンに関する研究論文の共著者であるビル・ハミルトン氏は、「この地域は、バイソンが植生に与える影響を研究する絶好の機会を与えてくれる」と説明しています。

          「アクセス可能な土地とそうでない土地を比較することで(略)、固有の大型草食動物による集中的な放牧に直面しても草原が回復力を持っていることがわかる」。この回復力は、草食動物、植物、栄養分、土壌細菌の間の複雑な相互作用によって説明できます。

          また、バイソンは土壌を踏みつけることで植物の残骸を砕き、その分解を促進するそうです。「バイソンが土壌に刻む深い足跡は小さなクレーターを作り、あらゆる種類のカエル、サンショウウオ、爬虫類にとって好ましい環境となり、鳥たちが水を飲むことも可能にする」とハミルトン氏は語りました。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)

          次回「スイスのメディアが報じた米国のニュース」日本語訳は、10月23日(木)配信予定です。

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