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ウイグル問題 中国と欧米諸国が国連で対立

中国の故・毛沢東国家主席の像のそばに座るウイグル民族の人々。中国の新疆ウイグル自治区カシュガルにて撮影 Reuters / Thomas Peter

中国が新疆ウイグル自治区で行う政策に対する欧米諸国の批判を中国は激しくつっぱねている。少数民族のウイグル族に対する中国の弾圧行為、さらにはジェノサイド(集団虐殺)が、国連機関を舞台に繰り広げられる中国と欧米諸国との外交戦争の主要な争点になった。

このコンテンツは 2020/12/01 08:30

フランス出身のジャーナリスト、シルヴィ・ラセールさんが、著書「Voyage au pays des Ouïghours他のサイトへ(仮訳:ウイグル族の地への旅)」の5月の出版以来、集めてきた最新の証言によると、「もう手遅れだ、とウイグル族の人々は言う」。「ウイグル族は絶滅に非常に近い状態だ、と私の情報提供者の1人は言う」とラセールさんはswissinfo.chに対し話す。「いくつかの証言によると、新疆の町の路上でウイグル族を見かけることはもうほとんどない。中国の支配的民族である漢民族と結婚したウイグル族の女性が夫婦で外出するのを見かけるだけだ」という。

新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで8月、新型コロナウイルスの市内感染が発表された。その後導入された封じ込め措置はとりわけ厳しいものになるだろうとラセールさんは話す。「外国とのあらゆる通信手段が遮断されている。そのため、2カ月前から新疆で何が起きているかを知ることはほとんど不可能だ」。中国政府は思いのままに取り締まりを厳しくすることができるだけに、ラセールさんは懸念する。「いくつかの情報によると、ウルムチ大学の学生寮にいた健康な学生150人が、新型コロナのワクチン研究用の実験台として病院に連れて行かれたようだ」という。

2010年代の前半に起きた暴動やテロの後、ウイグル族に対する弾圧は強まり、失踪、処刑、拷問を招いたとみられるが、もちろん、その規模を推し量るのは難しい。ウイグル族人口(1300~1800万人)の約3分の1が再教育キャンプに収容された経験があるとみられる。多くの非政府組織(NGO)がこの弾圧政策を資料で裏付けようとしている。

他の閉鎖的体制と同様に、大規模な人権侵害の可能性について警鐘を鳴らすことができるのは被害者の証言だ。新疆の場合、証言は何年も前から耐え難いものだ。これらの証言から、ウイグル族に対する暴力的な同化政策の輪郭がぼんやりと浮かび上がってくる。組織的な強制不妊手術は、国際法によって認められたジェノサイドの定義にある判断基準の1つだ。

「ジェノサイド(集団虐殺)」の判断基準

ジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)によって1998年に出版された国際刑法辞典は、「ジェノサイド」を次のように定義他のサイトへする。

「人類に対する国際法上の犯罪であって、国民的、民族的、人種的または宗教的な集団の全部または一部を破壊する意図をもって行われる以下に列挙されたいずれもの行為と限定的に解釈される。集団構成員を殺すこと、集団構成員に対して重大な肉体的または精神的な危害を加えること、全部または一部に肉体的破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すこと、集団内における出生を防止することを意図する措置を課すこと、集団の児童を他の集団に強制的に移すこと」

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それでも、これらの証言もNGOやジャーナリストによる調査も確固たる証拠ではない。そのため、中国政府は誤情報、偽情報、政治的に操作した情報を発表して、これらの疑惑を正式に否定することが可能だ。

夏以降、高まる非難の動き

国連人権理事会の特別報告者50人は6月、事態はかなり深刻であるとして、中国における基本的自由を守るための断固たる措置を求める共同アピール他のサイトへに署名した。

9月には、300以上のNGOがアントニオ・グテーレス国連事務総長とミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官および国連加盟国に宛てた公開書簡他のサイトへを出した。NGOは同書簡で、新疆をはじめとする中国における人権侵害を調査する国際的メカニズムの設置を求める。

国連での言葉の応酬

外交の場も引けを取らない。社会、人権、文化の問題について話し合う国連総会第3委員会(米ニューヨーク)では先月、中国における人権の尊重について、国連情報サービスの言葉を借りると、「白熱した議論他のサイトへ」が行われた。

先月6日には、スイスを含む39カ国が署名した共同声明他のサイトへを出し、ドイツのクリストフ・ホイスゲン国連大使が代表して読み上げた。「我々は、広範なネットワークを持つ「政治的再教育」収容所の存在を非常に懸念している。信頼できる報告によると、100万人以上が不法に収容所に拘束された。(中略)ウイグル族やその他の少数民族を過度に標的にした広範な監視が続いている。また、強制労働や不妊手術などの強制的な出生管理を明らかにする報告が次々に上がっている」

中国の激しい抗議

新疆における主要な問題を完全に否定し、中国の張軍国連大使は反論他のサイトへした。「ドイツ、英国、その他数カ国が事実を無視して、正義を蹂躙(じゅうりん)し、協力を崩壊させたことを私も強調しなくてはならない。人権状況について、あなたがた(英独などの国々)や米国が入手した取るに足りない結果を見て、都合の悪いことには目をつぶり、状況次第でやり方を変える政策に身をゆだね、自らの意志で米国に追随し、米国の共犯者になることをあなたがたは選ぶのだ。何という偽善だ!こう言わせていただきたい。傲慢と偏見とを脇にやり、今すぐ破滅から離れるのだ」

「国連人権理事会の47理事国の中で欧米諸国は少数派であるだけに、中国の非常に組織的な行動と人権問題に関する中国の同盟国と戦うことは今後一層困難になるだろう」

アドリアン・クロード・ゾラー代表、研修センター「人権のためのジュネーブ」代表

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また、中国外務省は約70カ国が中国の立場を支持したと強調他のサイトへした。「テロや過激主義の脅威と戦い、新疆のあらゆる民族グループの人権を守るために、新疆が法に従った一連の措置を取ったことをこれらの支持国は高く評価している」

新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ達成城区にある表向きは「職業技能教育訓練センター」として知られる施設。塀に沿って監視塔がそびえ立つ Reuters / Thomas Peter

国連人権理事会で欧米諸国は少数派

中国は国連システムの中で攻撃的な外交を緩めるつもりはない。国連総会が実施した国連人権理事会(HRC、本部ジュネーブ)の理事国選挙における中国の得票数は前回選挙における得票数を下回っているにもかかわらず、中国はHRCの理事国に再選されたところだ。

キューバとロシアもHRCの新理事国に選出された。「HRCの47理事国の中で欧米諸国は少数派であるだけに、中国の非常に組織的な行動と人権問題に関する中国の同盟国と戦うことは今後一層困難になるだろう」と研修センター「人権のためのジュネーブ他のサイトへ」のアドリアン・クロード・ゾラー代表は指摘する。

1950年代以降、中国はさまざまな少数民族を従属させてきた。ゾラー代表によると、「中国政府がチベットで行っていた強制的な不妊手術・妊娠中絶政策を人権団体が80年代にはすでに告発していた」。

しかし、今日、中国における基本的自由とその大規模な侵害を考慮して介入することはさらに難しくなっている。習近平国家主席によって粛清され、強化された中国共産党が、チベットの次は新疆を「正常化」しようとしている。

(仏語からの翻訳・江藤真理)

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