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ノーム氏解任、関税の歴史、消える重力…スイスのメディアが報じたアメリカのニュース

報道陣に囲まれる女性の後ろ姿
1月、報道陣のインタビューに答えるクリスティ・ノーム国土安全保障省長官 Keystone/SWI swissinfo.ch

スイスの主要メディアが3月5~11日に報じたアメリカ関連ニュースから①トランプ大統領、ノーム国土安全保障長官を解任②トランプ関税は歴史の繰り返し?③「7秒間重力が消える」デマの真相、の3件を要約して紹介します。

8月12日は鉛のブーツを履くのを忘れずに。米航空宇宙局(NASA)から「リークされた」文書によると、この日地球は7秒間重力を失う――こんな噂話がSNSで広まりました。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)は、なぜこれほど拡散したのか深掘りしています。

土曜日にフロリダで開催された「アメリカ大陸の盾サミット」に出席したクリスティ・ノーム氏。
土曜日にフロリダで開催された「アメリカ大陸の盾サミット」に出席したクリスティ・ノーム氏。 Copyright 2026 The Associated Press. All Rights Reserved

トランプ大統領、ノーム国土安全保障長官を解任

ドナルド・トランプ大統領は5日、数カ月に及ぶ論争の末、国土安全保障省のクリスティー・ノーム長官の解任を決めました。大衆紙ブリックは「結局、クリスティ・ノーム氏はドナルド・トランプ氏にとって受け入れがたい厄介者になったようだ」と書きました。

トランプ氏は5日、「数々の素晴らしい成果(特に国境問題において!)」とノーム氏の功績に感謝を表明していましたが、ブリックによるとトランプ氏はノーム氏に「全く満足していない」と報じられています。さらに同紙は、、子犬の殺害や2億2000万ドル(約350億円)の広告契約など、ノーム氏が関与するスキャンダルをいくつか列挙しました。

ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)によると、決定打となったのは先週行われた議会公聴会でした。1月にミネアポリスで連邦捜査官が2人の米国人を射殺した事件などが取り上げられたこの公聴会で、ノーム氏はこの2人を「国内テロ」に関与していると非難したことで批判を浴びました。SRFは、ノーム氏が「この発言を撤回していない。謝罪もされていない」と指摘しています。

スイス・ドイツ語圏の大手紙NZZは、この解任は「遅すぎた」と評しました。社説で「ノーム氏の指名はトランプ大統領の判断ミスだった」と指摘しています。「大統領はこの風変わりな忠誠派に、大統領在任中最も重要な国内問題である移民政策の実施責任を委ねた。就任後は、彼女は自由の身になったように見えた。移民警察官は、逮捕ノルマを達成するために事実上、自由に行動していた。トランプ氏はこれを容認していた――ミネアポリスで大混乱が勃発するまでは」

トランプ氏は、西半球に重点を置く新たな安全保障構想「米州の盾」担当特使にノーム氏を充てると述べました。ノーム氏の後任には、共和党下院議員のマークウェイン・マリン氏が就きます。NZZによると、マリン氏はトランプ大統領の「国境担当相」トム・ホーマン氏と「手を取り合って」働くことになるといいます。

NZZは「アメリカ人は確固とした移民政策を望んでいるが、世論調査が明らかに示しているように、ノーム案は彼らにとって行き過ぎだった」と書きました。「だからこそ、トランプ氏が移民政策の目標を達成したいのであれば、国土安全保障省のトップにはスタイルを変える以上のことが求められるのだ」(出典:ブリック外部リンクSRF外部リンクNZZ外部リンク/ドイツ語)

先月、ニューヨーク証券取引所のフロアでトレーダーのスクリーンに映し出されたドナルド・トランプ氏。
先月、ニューヨーク証券取引所のフロアでトレーダーのスクリーンに映し出されたドナルド・トランプ氏。 Copyright 2026 The Associated Press. All Rights Reserved

トランプ関税は歴史の繰り返し?

ドナルド・トランプ米大統領が固執する関税は、新たな経済世界秩序を生み出すのでしょうか? SRFによると、経済学者の意見は分かれています。

SRFは10日、米最高裁が権限の逸脱行為だと判決を下したにもかかわらず、トランプ氏が関税政策を堅持していると報じました「企業は資本の差し止め、投資先の変更、あるいは当初の計画とは全く異なる製品への投資といった対応を取っている」と報道。コンサルティング会社EYが1月に実施した調査外部リンクで、スイス企業の最高経営責任者(CEO)の8割が投資計画を変更したという結果を引用しました。

SRFは「しかし、投資の調整はビジネスの一環だ」と続けます。チューリヒ大学の経済史家トビアス・ストラウマン教授は、歴史的にも広範な関税が課された時期は他にもあったと説明します。アメリカ自身、19世紀後半など積極的な保護主義路線をとった時期があります。「しかしながら、今回新しいのは、米国大統領の屈辱的なレトリックと、その際立って攻撃的な態度だ」とストラウマン氏はSRFに語りました。

もう1つ典型的なのは、起業家が20世紀初頭と同じく、新たな関税に迅速に反応していることだといいます。SRFによると、トランプ氏は現在、スイスなどの外国貿易相手国からのさらなる投資を呼びかけています。「トーンやアプローチは異なるが、結果として外国投資が生まれるという点は変わらない」とSRFは位置付けます。

ストラウマン氏は、アメリカの政治的路線には一定の継続性があるとの見解です。「中国の台頭を消化していくためには、米国は自らの方向性を転換し、外交政策と経済政策の焦点を転換する必要がある」と述べ、このプロセスは数年前、バラク・オバマ政権下で始まったと説明しました。

しかし、他の歴史家や経済学者たちは、新たな世界秩序が誕生したとみています。チューリヒの金融機関バントレオンの資本市場ストラテジスト、ハラルド・プライスラー氏もその1人で、従来の確信が崩れつつある現状を憂慮しています。「誰が味方で誰が敵か、誰が善で誰が悪か、誰が右翼で誰が左翼か。これらすべてが今、再交渉の渦中にある」とSRFに語りました。

多くの国々が、経済的、技術的、政治的、軍事的に、アメリカからの自立をさらに深める必要があることに今や気づき始めていると、プライスラー氏は述べました。「これは、世界中で新たな財政計画が見られるようになったことを意味する」。各国は経済的自立を維持するために借金を負っているのだといいます。

SRFは、財政政策は現在、経済に短期的な追い風をもたらしているものの、中期的にはインフレをもたらし、長期的には各国が債務を維持できるかどうかという疑問が生じるだろうと結論付けました。(出典:SRF外部リンク/ドイツ語)

重力の終わり? まあ、そういうことだ――2020年、トランポリンでトレーニングするスイスオリンピックスノーボードチャンピオン、ユーリ・ポドラチコフ。
重力がなくなる? 2020年、トランポリンでトレーニングするスイスオリンピックスノーボードチャンピオン、ユーリ・ポドラチコフ。 Keystone / Jean-Christophe Bott

「7秒間重力が消える」デマの真相は

重力がこの夏、数秒間消えることはない――フランス語圏のスイス公共放送(RTS)はこう断言し、読者を落ち着かせました。RTSによると、このデマはNASAの偽文書に基づいているようです。

「SNSで拡散している根強い噂によると、2026年8月12日に地球の重力が7秒間停止する」とRTSは伝えました。この噂はなぜこれほど広まったのでしょうか?RTSは、本物の天文現象と結びついたナンセンスな一文を検証しました。

この数カ月、ハリウッドの災害映画の予告編のような動画がTikTokやInstagramに溢れかえっていました。RTSによると、その理由は8月12日に地球が一時的に重力を失い、「人々が空中に投げ出される」から。この憶測が根拠としているのは、コードネーム「プロジェクト・アンカー」というNASAの機密文書で、その予算は890億ドルとされています。原因は、ブラックホールから発生する2つの重力波の交差だとのこと。

RTSは、アメリカのファクトチェックサイト「スノープス外部リンク」がこの噂を否定したと指摘しました。「この噂はフィクション専門のInstagramアカウントで捏造されたもので、その記事生成にはAIツールが利用されている可能性がある」。一方、NASAはそのようなプロジェクトや脅威の存在を正式に否定している、とRTSは付言しました。

「重力波が存在するとしても時空の振動にすぎず、非常に微小だ。このため検出するには極めて高感度の機器が必要となる。惑星の重力を『打ち消す』力はない」

RTSはさらに、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)天体物理学研究所のジャン・ポール・クナイプ所長に裏付け取材をしました。クナイプ氏は「重力が消えるには、地球自体が消えなければならない。地球を7秒間消滅させ、その後魔法のように再び出現させるような物理的なメカニズムは存在しない」と断言しました。

つまり、8月12日の予定をキャンセルする必要はありません。その日に確実に起こるのは皆既日食で、北極、グリーンランド、アイスランド、大西洋、スペイン北部、ポルトガルの北東部上空を通過します。(出典:RTS外部リンク

次回「スイスのメディアが報じた米国のニュース」日本語版は3月12日(木)配信予定です。

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英語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子

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