スイス、原発新規建設の禁止解除に一歩前進
スイス上院(全州議会)は11日、原子力発電所の新規建設を解禁する法改正案を可決した。いわゆる「ブラックアウト・イニシアチブ」に対する政府の間接的対案を承認した。法案は今後、下院で審議される。
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スイスが老朽化した原子炉の段階的廃止を進める一方で、原発の新規建設をめぐる議論が再燃している。イニシアチブ(国民発議)「すべての人にいつでも電気を:ブラックアウト(全域停電)を止めよ」を受け、スイス政府は2024年に原子力法改正を決めた。既存の新規原発建設禁止措置の解除を目指す。現在議会で審議中のこの提案は、最終的に国民投票にかけられる可能性がある。
「すべての人にいつでも電気を:ブラックアウト(全域停電)を止めよ」は2024年、中道右派政党と経済界代表が立ち上げたイニシアチブ(国民発議)で、スイスにおける原子力発電所の新規建設の禁止撤廃を求めている。
憲法を改正し、「あらゆる形態の気候に優しい電力生産」を許可し、化石燃料以外の技術を用いたエネルギー生成の権利を保証するという内容。また、2017年の国民投票で58%の賛成で可決されたエネルギー法改正を覆すことも目的としている。同法は、太陽光・地熱・水力などの再生可能エネルギーを拡大しつつ、原子力発電を段階的に廃止する道筋を定める内容。
支持者らは、原子力エネルギーがスイスのエネルギー安全保障と気候戦略にとって不可欠であると主張している。
スイス政府も新たな原子力発電所の認可再開を支持しているが、憲法改正ではなく法律改正に限定する対案を提出した。
上院では、右派の国民党、中道右派の急進民主党、中央党の大半が対案を支持した。左派の社会民主党と緑の党、自由緑の党、環境団体は反対している。新たな原子炉の建設には数十年を要し(2050年以前には完成しない可能性もある)、なお重大な技術的リスクを伴うと主張している。
今後、下院で審議される。アルベルト・レシュティエネルギー相は国民投票が行われる可能性が高いと述べた。
スイスは現時点では原発の段階的廃止の方針を堅持している。スイスは2011年の福島第一原子力発電所事故を受け脱原発に舵を切り、2017年の国民投票で有権者の承認を得た。
スイスには現在、老朽化した原子力発電所が3カ所(ベツナウI・II、ゲスゲン、ライプシュタット)あり、計4基の原子炉が稼働中。これら4基の原子炉が国内の電力の約30%を供給している。
スイスの方針転換、理由は?
スイスは2050年までの気候中立を目指し、自然エネルギーへの転換を進めている。同時に、老朽化した4基の原子炉は今後停止される。だが、高まる電力需要を水力・太陽光・風力で完全に補えるかは依然として議論の的となっている。
原発の新設は、化石燃料よりも温室効果ガス排出量が少なく、電力需要を埋める助けとなり得る。ウクライナ戦争以降、エネルギー安全保障も新たな重要性を帯びている。政策立案者は冬季の輸入ガス・電力への依存度を低減したいと考えている。
つまり、福島原発事故後に急激に高まった脱原発の機運が、電力不足による停電への懸念と2050年の気候目標によって後退している。さらに、新型原子炉設計はより安価で安全であるとの見込みもこの傾向を後押ししている。
最新の原子力発電所技術の現状は?
一部の政治家や業界関係者による楽観論は、技術的な現実とは対照をなしている。期待が集まるのが「小型モジュール炉(SMR)」だ。これは出力が最大300MW(従来の原子炉の約3分の1)の次世代原子炉で、工場での量産やモジュール単位での組み立てが可能。現在、世界で稼働しているSMRはロシアと中国にそれぞれ1基ずつしかない。欧州連合(EU)は2030年代前半に最初のSMRの導入を目指す。米国での直近のプロジェクトは停滞している。
もう1つはいわゆる「第4世代」の大型原子炉だ。これらは安全性と持続可能性をより高め、放射性廃棄物の問題を最小限に抑えるよう設計されている。最もスムーズに行けば、こうした発電所が稼働するのは早くとも2030年代半ばとなるが、スイスでの承認手続きには通常それ以上の期間を要するのが実情だ。
原発の新設は経済的に採算が取れるのか?
資金調達が最大の障壁となる可能性が高い。スイスにおける原発の新規建設費用は150億~250億フラン(約3兆円〜5兆円)を見込む。専門家は民間資金だけでは非現実的であり、国による保証や補助が必要だと指摘する。これには様々なモデルが考えられる。消費者が電力消費量に応じた少額の賦課金で共同出資する方式(現在の再生可能エネルギーの場合と同様)と、スイス政府が共同所有者として参加する方式(既存の原子力発電所において一部州が採用した方式)の組み合わせが考えられる。
最近のEUの決定はエネルギー転換にとって何を意味するのか?
欧州連合(EU)は原子力を推進していく姿勢を鮮明にしている。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は15日、中東紛争によるエネルギー危機に各国政府が直面する中、欧州の原子力部門縮小は「戦略的な誤り」だったと述べた。だがこの発言は議論を呼んでいる。支持派は原子力がエネルギー安全保障を高め、石油・ガス・石炭といった化石燃料を気候に優しい原子力に置き換えられると主張する。しかし批判派は、水力・風力・太陽光への投資を阻害する恐れがあると警告する。
スイス連邦政府は、新規原子力発電所が再生可能エネルギー開発を補完し得るとしている。だが世論調査が示すように、この技術は依然として政治的分断を生む。原発の新規プロジェクトは大きな政治的抵抗と長期にわたる法的闘争に直面する可能性が高く、こうした遅延がスイスの広範なエネルギー転換を大幅に遅らせる恐れがある。
英語からのDeepL翻訳:宇田薫
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