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スイスでもネット中毒者が増えている

スイスのネット中毒患者は約5万人 Keystone

現在、国内のインターネット中毒者は把握されているだけでも5万人にのぼる。特に若い男性が中毒になるケースが多い。

ネット中毒が進むと現実と仮想の区別がつかなくなり、通常の社会生活をおくれなくなる人も多い。チューリヒは国内初の対策キャンペーンに乗り出した。

 今の時代、人々はこれまでになくインターネットを通じて、おしゃべりをし、ゲームで遊び、セックスのサイトを訪れ、音楽をダウンロードし、買い物を楽しんでいる。家から一歩も出ないで、気軽にいろんなことができるようになった。しかし、専門家によると、これが続くと人はいつの間にか仮想の世界で迷子になってしまう。

女性よりも男性に多い

 最新の研究によると、スイスのインターネット・ユーザー、約5万人が完全なネット中毒者で、さらに5万人が中毒の一歩手前にいる。中毒になりやすいのは、若い男性層。女性は比較的簡単にコンピュータの電源を切るらしい。

 今回の研究を行ったチューリヒ大学の心理学者、フランツ・アイデンベンツ氏によると、ネット中毒者は1週間に35時間以上オンラインを使っている。「ネット中毒者かそうでないかという最も基本的な基準は、コンピュータがその人の人生にとって最も重要な存在になってしまっているかどうか、ということです。つまり、生活の中でコンピュータが中心的な役割をしているのなら、それはネット中毒といって良いでしょう」

ネットから離れられない

 インターネット中毒者の主な症状は、ネットにどっぷりつかってしまい、周りの人々から遮断された生活に入ってしまうことだ。当然、家族や友達とも心が離れ、退学したり会社をやめたりという問題を引き起こす。また、ネットを使うことを止めようとさせられると、引きこもりになるという症状も見られる。

 中毒予防センター ( チューリヒ州 ) のレグラ・ケラー氏は語る。「ネット中毒になる危険性が高いのは、現実社会で友達を作ることが苦手なタイプです。彼らは孤独を抱え、不安定な精神状態で生きています」

 「ところがそのような人でも、ネット上の『チャット・ルーム』では沢山の友達を見つけることができ、現実社会の自分とは全く別の、新しい人格をそこで形成できます。そして気が向けばゲームやセックスのサイトを訪れて、日常のわずらわしさを忘れることもできるのです」

 前出の心理学者、アイデンベンツ氏によると、この状態から抜け出すのは至難の業だ。まずは自分でコンピュータの前に座る時間を制限することが重要だ。「何時から何時までだけネットを使う、とはっきり時間を設定して、それをちゃんと守ることが必要です」

 当然、家族や友人など、周りの存在も大きな助けになる。「もし周りに信頼できる人がいなければ、中毒予防センターがいつでも力になります」とアイデンベンツ氏は補足した。

あなたの中毒度はどれくらい?

 この問題にチューリヒ州が対応策に乗り出した。チューリヒ大学の社会・予防医療研究所を通して市民にインターネット中毒テストを受けるよう、キャンペーンを張ったのだ。

 アイデンベンツ氏によって考案されたこのテストはwww.suchtpraevention-zh.chで簡単に受けることができる。ここではインターネット中毒のほか、アルコール、カンナビス ( マリファナより弱くハシシより強い麻薬 ) 、タバコ中毒についても検査できる。

 「中毒予防センターは、子供を心配した親から連日多くの電話を受けています」。前出のケラー氏によると、インターネット中毒者の多くは、自分が中毒になっていることにさえ気づいていない。本人より先に周りの人が気づく場合も多い。

 アイデンベンツ氏は「特に若い人々は、比較的簡単にインターネットを使いこなすので、中毒になる危険性も高いのです。早い時期からネットの正しい使い方をちゃんと教える必要があります」と言う。

 「学校は『情報社会をどのように生きていくか』という問題について、もっと時間を割くべきです」。アイデンベンツ氏によると、若者は、時間をかけずに情報を手に入れる方法と、インターネットにあまり長く時間をかけないということをしっかり学ばなければならない。

 「これは学校でコンピュータを使う際にしっかり教えられるべき事柄です」と、アイデンベンツ氏は強調した。

swissinfo、レナト・クゥンツィ 遊佐弘美 ( ゆさ ひろみ ) 意訳

通常のネットユーザーと中毒者の間に、はっきりとした境界線はない。
対人関係が苦手な人や、小さい頃からゲームボーイなど、ゲームで遊ぶのが好きだった人はネット中毒になる危険性が高い。

-ネット中毒はアルコールや麻薬中毒などと一緒で、完全に立ち直ることは難しい。
-このため、専門家は「子供がインターネットを使う際には使用時間を制限するなど親がしっかりとルールを決めて日ごろから気をつけていることが大切」と警告している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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