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米国の対スイス関税、15%に引き下げ間近

湖の前にたなびくスイス国旗
スイスのGDPの70%以上を輸出産業が生み出している Copyright 2021 The Associated Press. All Rights Reserved

ドナルド・トランプ大統領がスイス製品の輸入に課した39%の高関税が、約15%に引き下げることで近く合意するとの見方が出ている。ロレックスやリシュモンなど、スイス経済を牽引する大企業の幹部が立役者となりそうだ。

スイスのビジネスリーダーたちは、数カ月にわたり苛立ちを募らせ外交停滞を目の当たりにした後、交渉を前進させるために立ち上がった。脇役としてのロビー活動から、トランプ政権への直接交渉役にと立場を変えた。経営者らは、8月にほとんどのスイス製品に課された39%の関税の重みを感じ始めていると口をそろえた。39%はアメリカが先進国に課した関税の中で最高水準の税率だった。

米スイス間協議について説明を受けた複数の関係者によると、対スイス関税は対欧州連合(EU)と同じ15%に近づいている。合意に至るのは数週間以内だとみる関係者もいるが、状況は流動的で、さらに長引く可能性もあるとの見方もある。

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FT

トランプ米大統領は10日、スイスに課す関税率はまだ決まっていないと述べたが、大統領府は「関税を少し引き下げるディール(取引)に向けて取り組んでいる」と認めた。

トランプ氏は大統領執務室で「我々はスイスに非常に大きな打撃を与えた。しかし、スイスには引き続き成功してほしい」と語った。

交渉戦術を転換

カリン・ケラー・ズッター大統領兼財務相率いるスイスの交渉団は、夏には10%程度の関税で合意に近づいていると考えていた。だがホワイトハウスが8月1日に発表した関税は39%となり、スイスの政治家や財界指導者に衝撃を与えた。

スイスは既に全ての工業製品に対する関税を撤廃しており、アメリカは時計、チョコレート、機械などの製品についてスイス最大の輸出先だ。トランプ氏はスイスへの関税率が高くなった理由として、推定390億ドルにのぼる対スイス貿易赤字を挙げた。

トランプ氏は、ケラー・ズッター氏が対スイス貿易赤字に関する苦情を「聞き入れようとしなかった」と批判した。ケラー・ズッター氏はその後、2026年の輪番制大統領を務める予定のギー・パルムラン経済相に交渉責任を譲り渡した。

だが民間セクターが数カ月にわたる膠着を破る原動力となった、と交渉に詳しい関係者は語る。スイスは当初、自国製品に対する39%の関税は不公平だと訴える戦術をとっていたが、企業主導によるより現実的な取り組みに舵を切ったという。

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事情に詳しい2人の関係者によると、時計メーカーのロレックス、カルティエの親会社リシュモン、商品取引業者のマーキュリア、プライベートエクイティ会社のパートナーズ・グループ、海運会社MSC、金精錬会社MKS PAMPの幹部らが今月4日にホワイトハウスでトランプ氏と面会した。

関係者によると、スイス側は大統領執務室での会談で、両国間の強固な経済協力と関係を強調した。

「大変光栄」

トランプ氏は自身のSNSトゥルース・ソーシャルに「スイスの高官らと会談できたことは大変光栄」だったと投稿した。両者は貿易と「最も重要な貿易不均衡」について協議したと語り、今後は米通商代表部(USTR)のジェイミソン・グリア代表がスイス政府と協議を続けると述べた。

専門家によれば、貿易交渉における新アプローチは、スイスの伝統的な強みを生かすものだという。

ローザンヌのビジネススクールIMDのサイモン・エヴェネット教授(地政学・戦略学)によると、GDPの70%以上を占めるスイスが世界に与える影響力は、古くから政治的なそれよりも、時計メーカー、商品取引会社から製薬大手に至るまでの民間企業がもたらしている。

エヴェネット氏は「連邦閣僚よりもCEOの方が、交渉の切り込みが上手いようだ。(スイス側は)最強の切り札を使っている」と話した。「取引は来年になる可能性が高いが、(これは)前向きな兆候だ」

ダボス会議で発表?

別の関係者は、1月にスイスのリゾート地ダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF)年次総会で合意が発表される可能性も「高い」と述べた。トランプ大統領もこのダボス会議に出席すると見込まれている。

スイス・アメリカ商工会議所のラフル・サーガル会長は、10月に就任したスイスのカリスタ・ギングリッチ外部リンク駐米大使の存在も、合意を後押しする可能性があるとみる。新大使は元米下院議長ニュート・ギングリッチ氏の妻だ。

サーガル氏は「状況はまだ未確定であり、ビジネスリーダーとの面会は、スイス政府が行ってきたことの補完となる」と付け加えた。

スイスの経済貿易政策を統括する連邦経済管轄局(SECO)のヘレン・ブドリガー・アルティエダ局長も、この数カ月で複数回、ワシントンを訪問し、重要な役割を果たしている。

パルムラン経済相は7日、X(旧ツイッター)に、グリア氏と「非常に建設的な」会話をしたと投稿外部リンクした。

スイス経済省とSECOはコメント要請に直ちには応じなかった。

Copyright The Financial Times Limited 2025

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担当: Mavris Giannis

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英語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子

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