アフガン難民流入を見逃すパキスタン
米軍が報復攻撃に踏み切ったら、アフガニスタンでは史上最悪の人道危機が予想される。パキスタンはアフガン難民の国境の不法通過を見逃しており、大規模な難民流入に備えている。
パキスタンは通行証のないアフガン人のパキスタン領内への越境を禁止しているが、パキスタン在住のスイス人ジャーナリスト、ベルナルド・イムハスリー氏は「国境警備当局は、難民に紛れてタリバンがパキスタンに入国するのを阻止しようとしているので、国境は公式には閉ざされている。が、難民達の越境は見逃している。」と、国境まで辿り着いたアフガン難民達は越境を許され、パキスタン領内の難民キャンプで保護されているとswissinfoに語った。イムハスリー氏は、「町には警官が大勢出動し、大使館など外交施設周辺には厳重なバリケードが構築された。」と、緊迫するパキスタン情勢を報告した。
パキスタンの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、国境封鎖は人道危機の引き金となると深い懸念を示している。イムハスリー氏によると、アフガニスタン国内には国連やNGOのインフラは残っておらず、食糧配給を管理することはできなくなっている。「カブールはじめ各都市の国連事務所が襲われたという。冬に備え、人々はできる限りの食糧を手に入れようとしている。」。イムハスリー氏は、軍事攻撃はすでに生活状態の悪いパキスタン情勢をさらに悪化させるという。「軍事攻撃は難民を絶望させ、パキスタンの町や国境付近の食糧貯蔵庫、商店などを襲撃しはじめるかもしれない。」とイムハスリー氏は懸念を示す。
パキスタン国内にはすでに250万人のアフガン難民がおり、難民キャンプの運営資金のみならず難民への職の斡旋など経済的な負担は甚大だ。パキスタンの労働市場では、難民が低賃金で労働を請け負うため、パキスタン人に仕事が回らなくなるという悪循環が起きている。UNHCRは、アフガニスタンおよび周辺諸国の緊急人道支援のため2億5、200万ドルが必要だと発表した。UNHCRでは、最悪の場合、パキスタンに100万人、イランに40万人、タジキスタンに5万人、トルクメニスタンに5万人のアフガン難民が流入するだろうと推定する。
イスラマバードのクリスチャン・デュナン・スイス大使は、「今のところ特に変わったことは起きておらず、私自身および周りの人々は危険を感じるようなことはない。緊迫はしているが、パニックは起きていない。」とswissinfoに語った。大使館職員らはイスラマバードに残っているが、在留スイス人の家族はインターナショナル・スクールや外国人スクールが閉鎖された後帰国した。「現時点では特に何も起きておらず、人々は落ち着いている。」とデュナン大使はいう。
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