直接民主制

スイスー2層の民主主義

スイスは優れた民主主義国家だ。だが本当の民主主義が確立したのは、国民投票で男性が女性に参政権を認めた1971年のこと。スイス人口860万人の4分の1を占める外国人には、未だ国レベルの参政権はない。

Philip Schaufelberger (イラスト)

外国人は税金、年金保険料、失業保険料を納め、自身の消費を通して国内経済に貢献している。だが彼らには政治参加の権利がない。スイス人口の4分の1は二級市民だ。

パオラ・パルミエリさんもその1人。「私は1977年にここバーゼルで生まれた。私の滞在許可証の入国日は誕生日になっている。私は地元の学校を卒業し、ここが地元だ」とパルミエリさんは言う。しかしパルミエリさんの参政権は、両親の生まれ故郷であるイタリアにしかない。スイスの参政権は国籍に紐づけられているからだ。

州レベルでは、状況が多少異なる。スイスの26の州のうち、ヌーシャテル州とジュラ州は、外国人にも州レベルでの投票権・選挙権を認めている。

さらにその下の自治体(基礎自治体、スイス連邦における3つ目の行政レベル)では、5つの州で、外国人に政治参加権を認めるかどうかの裁量権が与えられている。ジュラ、ヌーシャテル、フリブール、ヴォ―、ジュネーブ州だ。外国人の投票権については、スイスのフランス語圏とドイツ語圏で格差が生じている。

ドイツ語圏ではアッペンツェル・アウサーローデン準州、バーゼル・シュタット準州、グラウビュンデン州が、域内の自治体に裁量権を与えている。

合計すると、スイス国内の計2202自治体のうち600自治体で、外国人に政治参加の権利が認められている。

国(連邦)レベルでは、外国人に投票権はない。「(スイスの)赤いパスポートを持たない者に発言権なし」。これが中道・右派政党の大多数のスタンスだ。「スイス国籍は無料であってはならない。それは各自のはたらきに応じて与えられる。つまり帰化だ」と、保守系右派・国民党(SVP)のトマス・ブルゲール国民議会議員は話す。

このため実用主義者は自治体レベルに焦点を置く。その1人がルツェルン大学のヨアヒム・ブラッター教授(政治学)だ。ブラッター教授は、スイスは欧州のどの国よりも多くの人を民主主義システムから排除していると指摘。1つのコミュニティに5年間住んでいる人には投票権を与えるべきだと話す。

ヨアヒム・ブラッター氏の提唱は、新たな政治ダイナミズムの一つとなった。そうしたダイナミズムはすでに、チューリヒ、バーゼルといった一部の都市に垣間見える。サン・モリッツなどの山間部でも、外国人の投票権が議題に挙がっている。

チューリヒ空港がある自治体クローテンは、スイス人、外国人、未成年(18歳未満)の子供や若者全員を対象にしたランツゲマインデ(青空議会)を企画した。

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