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スイス中銀、スイスフラン高を抑えるユーロ買い対策を維持

右は1ユーロ硬貨。左は1フラン硬貨と20サンチーム硬貨。スイスフランの価値をこれ以上高めないようにするためのスイス中銀の努力は続く Keystone

スイス国立銀行(SNB/スイス中銀)の手腕が問われている。ユーロ危機の再燃でスイスフランへの逃避傾向が強まったためだ。キリスト教の祝日だった聖木曜日の4月5日、スイスフランはスイス中銀が対ユーロで定めた1ユーロ=1.20フランの上限を一時突破した。

スイス中銀はユーロ買いで市場介入したが、トーマス・ジョルダン暫定総裁はこの事態を「市場の一部で発生した変則」と表現する。

 ジョルダン暫定総裁は4月10日、通信各社に対し、スイスフランが1ユーロ=1.20フランを上回った5日の相場は、スイス中銀と下限の合意を結んでいない銀行が行った取り引きによるものであり、ごく一部の市場の出来事に過ぎないと説明した。

 「スイス中銀には、これらの銀行が市場のベストレートを得られず、損失を覚悟しなければならない場合には、1ユーロ=1.20フランの上限を上回らないよう、無制限にユーロを買う準備が常にある。しかし、ベストレートでの取引を強要することはできないため、相場が上限を超えるこのような変則の発生は避けられない。だが、それは一時的なことだ」

 ジョルダン暫定総裁はまた、市場のベストユーロレートが上限の1.20フランを上回ったことはないと強調。「業界を支える重要なインターバンク市場では常に上限は守られていた」。この市場には世界中の100以上の銀行が参入しており、トレーディングデスク(市場における売買担当部門)は700以上を数える。

上限設定措置を続行

 ジョルダン暫定総裁は「どんなことがあってもこの上限は維持する」つもりだ。「今後も無制限のユーロ買いを行う準備がある。迷っている場合ではない」と断言する。

 また、「全体的にスイスフランはまだ過大評価されており、スイス経済にとって大きな負担となっている。今後もスイスフランの値下がりを待っている。経済の見通しが悪くなったりデフレの恐れが出てきた場合などには、直ちに次の対策を取る準備がある」

対ユーロでわずかに値下げ

 スイスフランは4月10日、対ユーロでわずかに値を下げた。午前の1.2015フランから正午には1.2030フランまで下がった。11日午前も1.2012フランから1.2019フランの間を変動している。

 市場はジョルダン暫定総裁が記者会見で上限設定措置の続行を明らかにしたことを歓迎してはいるものの、スイスフランが1ユーロ=1.20フランを上回る事態が再発生する恐れも排除しきれないとみている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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