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スミレのように香る、薄紫のバラ

「金のバラ賞」を受賞したオランダの薄紫のバラ

(swissinfo.ch)

今まで見たことのないオリジナルな色、形、そして香りを競うバラの国際コンクールがジュネーブで6月13、14日開催された。

出品される品種の数で世界第3位の「第62回ジュネーブ国際バラ新品種コンクール」には、世界9カ国から57種類が出品された。その中から2009年の「金のバラ賞」に選ばれたのは、オランダからの薄紫のバラだ。スミレに似て「瞬時に」心を捉える香りを持つという。

このバラのために今日がある

 「薄紫の色は珍しく、光に輝くような印象を与えた。葉も茎も健康なバラだ。八重の小型の花と茎のバランスも良い。また特にスミレに似たかすかな香りが、多くの審査員の心を惹きつけた。色もスミレに似ている」
 と、審査委員長を務めたダニエル・マッセ氏はこの金のバラ賞の花を絶賛した。作出者はオランダの「インタープラントB.V. ( Interplant B.V. )」だ。

世界中から送られたバラの苗木を、今日のこの日まで2年間育成してきた園芸家のダニエル・ヤウシュ氏は、
 「正直言って少し驚いた。このタイプの薄紫色は好き嫌いに好みがはっきり分かれるからだ。しかし今日は朝の光にこの色がちょうどマッチし、たくさんの花が開いており、まるでこのバラのために今日があるかのようだった」
 と高く評価した。しかしオリジナリティーという点からは、ほかにも良いバラがあったとコメントした。

 バラの評価基準は多様で複雑だ。葉、茎の健康さ、根元から枝分かれして豊かに広がること、高さが一律であること、花がきちんと上部を向いていること、枯れた後長く残らずに散ってしまうこと、そして何と言っても大切なのは、オリジナルな色、形、香りだ。これらを審査委員たちは一目で見分けて行く。
 
 しかし、すべてのコンクールがそうであるように、運もつきまとう。この日に花がすべて散ってしまっていたり、つぼみのままであったりと、花がそこになければ評価の対象にさえならない。また天候にも左右される。昨年は雨が降っていたので、「曇り空に映えるオレンジとピンクの花」を同時に咲かせるバラが優勝したとヤウシュ氏。晴れた今年の光には、薄紫色が映えた。

不安定な香り

 今年「革新賞」を受賞したのは、一重で水平に広がるオレンジ色のバラ。また小型バラ部門で2等になったのもクリーム色と白の、やはり一重でほとんどサザンカに近いバラだ。
 「ここ2、3年、人々は花弁が何重もの大きなバラに飽きていて、一重でシンプルなものを好む傾向にある。また色も白や淡いクリーム色などが今年の流行だ」
 とコンクール組織委員長アントニー・レクラー氏は言う。

 また、特に香りが5、6年前から審査の大切な基準になったともいう。新潟とフランスのナント ( Nantes ) では香りだけの国際コンクールも行われており、今回のジュネーブコンクールでも5割のバラに強い香りがあった。

 しかし、レクラー氏によれば、香りを新しく生み出すのは容易ではない。
 「掛け合わせる父親と母親のバラがいくら香りが良くても、子どものバラがいい香りを放つ保証はまったくない。香りの遺伝子というのは非常に不安定だからだ」

100%有機農法

 「有機農法で育てているので、香りをかぐとき、そのバラが本来持っている本当の香りを体中で吸い込むような気がする」
 とヤウシュ氏は言う。

 実は、今年初めてすべてのバラが2 年にわたり100%有機農法で育てられコンクールに出された。バラは病害虫に弱く、本来多くの化学肥料や農薬が使われてきた。しかし、
 「小さな虫を殺すことは、自分の体にも害を与えることになる。また環境問題を考えるとき、この方法しかないと確信した」
 と言うヤウシュ氏の方法は、単に有機農法というだけでなく、月の満ち欠けなども考慮する「ビオディナミ ( Biodynamie ) 」だ。

 しかし、バラ育成の世界ではまだ有機農法に抵抗も多い上、もしうまく行かなければコンクールの名誉にもかかわる。苦労の末生み出された新品種をきちんと育てる責任もある。
 「確かに大きなチャレンジだった。しかしすべてのバラがすくすくと成長してくれた。そのため、今回は有機農法で育てていることを審査委員たちに初めて公表した」

 コンクールのバラを育成する園芸家であると同時に、新品種を生み出す育種家でもあるヤウシュ氏は今2種類のバラを開発したところだ。オリジナルさを求めて掛け合わせを行った後、10万株もの苗の中から50種類選び、最終的に1株から5株を残す。間引きもしばしば運が左右し、1つの新品種開発には7年間から10年間かかる。

 「2種類のバラを得たので、新品種開発はしばらく休業。労力がかかり過ぎるからだ。息子に代を譲ったら再開するかもしれないが」
 と言う。

 それでも、世界中の数少ないバラ育種家たちは、新品種を求めて日夜試行錯誤を重ね、パリやジュネーブなど複数の世界コンクールに出品を続けている。

里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 、swissinfo.ch

第62回ジュネーブ国際バラ新品種コンクール

「ジュネーブ国際新品種バラコンクール」は1946年、戦後の不景気で職を失った労働者の救済策の1つとして始まった。

出品される品種の数でみると、パリ、ドイツのバーデン・バーデンに次ぐ、世界第3位の国際新品種バラコンクール。

今年はスイス、フランス、オランダ、ドイツ、イタリア、ベルギー、デンマーク、イギリス、アメリカの9カ国から、18人のバラの新品種育種家が参加し、新種57株を出品した。

1人の新品種育種家は、1株から5株まで出品できる。

送られた苗木をジュネーブの公園「パルク・ラ・グランジュ ( Parc La Grange ) 」で2年間育て、コンクールに備える。2年前から有機農法で育成している。

今年はフランス、スイス、イタリア、オーストリア、ベルギーから53人の国際審査員が集合した。審査は、公平を期すため、1年に数回審査するスイス国内審査員の点数と、6月13、14日に行われた国際審査員の点数を合計して評価される。

近年の傾向は一重のシンプルな形、色も白、クリーム色、ピンクなど淡いものが好まれる。また香りは大切な要素になっている。

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