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センサーの足枷で服役者を管理する

足枷のセンサーで警報がなったのは1万6千回。ほとんどがシステムの欠陥によるものだった。 Keystone

服役者に、居場所がわかるセンサーの付いた足枷を装着することで、刑務所外で引き続き仕事に就かせる。鉄格子ではなく、足枷だけに縛られるという服役方法が3年前からスイスでも実験され、その結果がこのほど、発表された。

社会復帰を支援する観点から、刑務所の外の生活に慣れてもらうという目的は達成された。しかし、囚人が更生し、再犯の防止につながるかの判断には時間が掛かりそうである。

センサーつきの足枷はが警報を鳴らす。着装している服役者が指定された行動範囲外に出たのだ。「刑務所外服役計画」の1コマである。対象となったのは631人の服役者で、そのうち9割が男性で、7割がスイス人だった。
「刑務所外で服役させる計画の良いところは、服役者が自分の仕事場で引き続き仕事ができること」
プロジェクトを分析し、調査結果を発表したガブリエラ・ペーター氏は語る。
プロジェクトは1999年から3年にわたり、ドイツ語圏とフランス語圏からそれぞれ2州とイタリア語圏のチチーノで行われた。目的は実刑犯の社会復帰を念頭に入れた服役のあり方である。

失敗例も少なく経費も削減

 警報が鳴ったのは3年間で1万6千回。このうち44件は逃走につながるような重大なケースで、決められた場所から離れた服役囚は刑務所に逆戻り。テストは中断となった。
 「イギリスで行われた調査とほぼ同じ結果となった」
 と前出のペーター氏。経費は1人1日で54フラン(およそ4千5百円)と従来の服役者に掛かる経費203フラン(1万7千円)の4分の1だった。服役者の親族からも好意的な反応を得たという。足枷を着装することが、服役者の教育につながると調査結果は結論付けている。

  今回対象になったのは短期の実刑を言い渡された者に限った。法の改正が予定されている将来は、16歳から18歳の青少年で最長4年の服役を強いられた既決囚を対象にしたテストが検討されている。

残る再犯の危険

 連邦法務局によると、足枷の着装が再犯件数を下げるかの結果は来年末まで待たれる。この結果がどうあれ、足枷による服役は社会復帰がなされやすいことやコスト面で有利なため、導入される可能性は高い。

 行動範囲が限られるといっても、「娑婆」の空気を吸う囚人たち。犯罪者には刑罰を与えるのが実刑の目的だと考え方る人は、こうした服役方法に違和感を感じることだろう。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

センサー付きの足枷

服役者が決められた場所にいることが分かる。

短期の実刑者と釈放が間もない服役者が対象

テスト期間3年。対象631人。

1万6千回の警報のうち警察の出動が必要だったのは6%。

44人が逃走の危険があった。

センサー付きの足枷着装による服役の試験期間は1999年から2002年まで。

認定は2005年まで延長された。

政府からの援助は460万フラン(およそ4億円)だった。

参加した州はそれぞれ独自の方法でテストを行った。

服役者を監視および世話をするのに要した時間は、フランス語圏とチチーノ州は1週間に1時間で、ドイツ語圏の州では2時間だった。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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