レイク・ダイヤモンド社が開発したシステムでは、ドローンの表面上の光電池にレーザービームを直接照射してエネルギーを供給する。ダイヤモンドを使うことで、パワーを落とさずにより遠くへビームを飛ばすことが可能になった。人間の健康にも無害だという
LakeDiamond
ドローンを無限に飛ばす鍵を握るのはダイヤモンドかもしれない。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の設立したレイク・ダイヤモンド社が、小さな実験用ダイヤモンドを使って小型のドローンに電力を供給する安全なレーザービームシステムを開発。充電式バッテリーがなくてもドローンを飛ばすことが可能になった。
このコンテンツが公開されたのは、
ますます洗練され多様性が高まっているドローンだが、まだ一つ大きな弱点がある。それはバッテリーの容量だ。特に遠隔地で情報を収集するために使われるプロペラ式のドローンが該当し、この種のドローンが一回の充電で飛行できる時間はわずか15分と短い。
ドローンの重さを増やさず、また人間の健康に害を与えない電力の供給方法を見つけるために、各国の研究所はダイヤモンドに注目。開発競争が進む中、EPFLは7日、レイク・ダイヤモンド社外部リンクが直径わずか数ミリメートルの人工ダイヤモンドが持つ光起電力を利用し、高出力レーザーと追跡システムを使ってドローンの飛行時間を延ばすことに成功したと発表した。
同社の開発した新しいシステムは、ドローンの表面上の光電池にレーザービームを直接照射してエネルギーを供給する。ダイヤモンドのおかげで、ビームの強度を保ちながら、人間の肌や目に損傷を与えずにビームをもっと遠くに飛ばすこと可能になった。
レイク・ダイヤモンド社のシステムは、低出力のダイオードが出す光線を光学的なダイヤモンド製の反射板に当て、高品質のレーザービームに変換する仕組みだ。このシステムは標準仕様で30ワット以上を供給。これは小型のプロペラ式ドローンには十分な電力だ。
この用途に適した人工ダイヤモンドの開発と、同テクノロジーに欠かせないナノエッチングの研究にレイク・ダイヤモンド社は10年を費やした。2019年初頭に本システムの試作品が発表され、20年には商業化される見込みだと同社の広報官が明らかにした。
この新しいレーザーシステムを使えば、ドローンが再充電のためにチャージャーの場所に戻る必要がなくなる。もっとも、予備のバッテリーはまだ必要だと同社は考えている。例えばレーザーのエネルギー供給が障害物で遮られた場合はどうするかといった、商業化の前にまだ開発が必要な問題も存在する。
スイス宇宙局は現在、衛星への電力とデータ送信にこの技術を応用するプロジェクトを支援している。
おすすめの記事
おすすめの記事
スタートアップ企業が集中するスイスの連邦工科大近辺「ドローンバレー」
このコンテンツが公開されたのは、
ドローンの開発研究分野でスイスは最先端を行く。連邦工科大学のローザンヌ校とチューリヒ校をつなぐ区域には、過去数年の間に80社ものスタートアップ企業が設立され、関係者はシリコンバレーならぬ「ドローンバレー」と呼ぶ。この快進…
もっと読む スタートアップ企業が集中するスイスの連邦工科大近辺「ドローンバレー」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
続きを読む
おすすめの記事
ドローンがテスト飛行中、湖に落下
このコンテンツが公開されたのは、
医療物資をドローンで配達するテスト飛行中、血液サンプルを運ぶドローンがチューリヒ湖に落下する事故が25日に発生した。
もっと読む ドローンがテスト飛行中、湖に落下
おすすめの記事
地震の後でドローンが救援に?
このコンテンツが公開されたのは、
ダヴィデ・スカラムッツァ教授は、カメラとセンサーを搭載し、危険で予測不可能な捜索救助活動の場で活躍する自律飛行ドローンの開発を行っている。自律飛行ドローンの最も将来性のある活用法とリスクについて教授に聞いた。
もっと読む 地震の後でドローンが救援に?
おすすめの記事
スイスの電子技術が支える火星探査の測定機器
このコンテンツが公開されたのは、
「赤い惑星」火星に着陸した探査機には、地震計が搭載されている。制御する電子機器はスイス連邦工科大学チューリヒ校が開発した。
もっと読む スイスの電子技術が支える火星探査の測定機器
おすすめの記事
自動運転、ドローン、バイオベンチャー…スイスのベスト・スタートアップ企業
このコンテンツが公開されたのは、
妊娠しやすい時期を予測するアームバンド、自動運転車用のソフトウェア、実験室で製造された人間の皮膚…これらは5日発表されたスイス・スタートアップ・トップ100アワードで表彰された最新技術だ。
もっと読む 自動運転、ドローン、バイオベンチャー…スイスのベスト・スタートアップ企業
おすすめの記事
スイス郵便、病院間の荷物輸送にドローン導入
このコンテンツが公開されたのは、
スイス郵便が、ドローンを使った荷物の輸送を試験的に始める。第一弾として、ベルン市内の二つの病院間で実験サンプルを輸送する。
もっと読む スイス郵便、病院間の荷物輸送にドローン導入
おすすめの記事
スイスではドローンってどのように使われているの?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの警察官は、山中での遭難救助活動、交通事故や犯罪現場の捜査にドローンを使用することがある。映像の最初に登場するのは、青い制服を着た警察官で、空撮で山岳遭難者を探索する様子だ。 また、スイス南部のローヌ谷では、農家が…
もっと読む スイスではドローンってどのように使われているの?
おすすめの記事
スタートアップ企業が集中するスイスの連邦工科大近辺「ドローンバレー」
このコンテンツが公開されたのは、
ドローンの開発研究分野でスイスは最先端を行く。連邦工科大学のローザンヌ校とチューリヒ校をつなぐ区域には、過去数年の間に80社ものスタートアップ企業が設立され、関係者はシリコンバレーならぬ「ドローンバレー」と呼ぶ。この快進…
もっと読む スタートアップ企業が集中するスイスの連邦工科大近辺「ドローンバレー」
おすすめの記事
スイスの人工知能ロボット、災害救助活動に向け進化
このコンテンツが公開されたのは、
人工知能(AI)は、人間や動物の手の届かない危険な場所を探索できるように、自律的に動くロボットや無人機の開発に応用されている。(SRF/swissinfo.ch)
もっと読む スイスの人工知能ロボット、災害救助活動に向け進化
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。