日本からも宮崎吾郎監督の「コクリコ坂から」など、多数出品

今年のファントシュで上演される黒坂圭太監督の「緑子 MIDORI-KO」。そのストーリー性と圧倒的な技術力が世界中で高く評価されている Keita Kurosaka


このコンテンツは 2012/08/30 12:51
鹿島田芙美(かしまだ ふみ), チューリヒにて, swissinfo.ch

スイス最大のアニメーション映画祭ファントシュがアールガウ州バーデンで9月4日から9日まで開催される。10回目を迎える今年は過去最大の1000本以上もの作品がコンペに応募。日本の作品も参加するなど、スイス国内外から選び抜かれた秀逸のアニメ作品が観客を魅了する。

アニメといえば、手書きの絵コンテで制作される子ども向けアニメを思い浮かべる人も多いだろう。だが、ファントシュ(Fantoche)に出展される作品はこうした従来のアニメから、最新のコンピューターグラフィック(CG)技術を駆使したもの、ゲームデザイン、粘土を1コマ1コマ丹念に撮影して製作するクレイアニメなど幅広い。

内容もさまざまだ。ストーリーの途中で主人公が困難を乗り越えながら最後にはハッピーエンドで終わる子ども向けアニメはもちろん、社会問題を取り扱った作品や、一見しただけでは作品の意図が理解しにくい芸術的な作品もある。

  「製作者が新しい試みに挑むのを応援するため、『ハイ・リスク・アワード』賞を用意している」と、ファントシュ創設者の1人、フランク・ブラウンさんは言う。ファントシュでは新しい手法を使った作品や、少数の人にしか受け入れられない内容を扱った作品にも公開の機会を与え、さまざまな形式・内容のアニメを支援する。

ファントシュとは

アニメ大国日本にはとても及ばないが、スイスでもアニメ制作は行われてきた。中でも国際的に一番有名なのがペンギンのクレイアニメ「ピングー(Pingu)」だ。しかし、ほかのスイス・アニメはスイス国内でもほとんど人目に触れることがなかった。

  「スイス人製作者が作品を紹介できる場を作り、多くの人が国内外のを鑑賞できる機会を設けたい」。そう考えたブラウンさんは仲間3人とともにスイス初のアニメ映画祭を創設。映画祭の名前は「操作されるフィギュア」という意味を持つフランス語「ファントシュ(fantoche)」から取った。20世紀初期にパリで作られた初のアニメ映画の登場人物が「ファントシュ」という名前だったことも、理由の一つだ。

  1995年の開始当初には8000人の観客を記録。その後、スイス人のアニメへの関心の高さを裏付けるかのように観客数はぐんぐんと伸びていき、2011年には3万4000人がこのスイス最大のアニメ映画祭を訪れた。

コンペ部門

ファントシュにはさまざまな部門が用意されている。コンペには国際短編作品部門とスイス作品部門の二つがある。今年は国際短編作品部門には世界中から1000本を超す作品が応募。日本からは和田淳(あつし)監督の「グレートラビット」(7分5秒)や、水江未来(みらい)監督の「Modern No.2」(4分15秒)など、すでに海外で高い評価を受けている作品が4本出品されている。

  スイス作品部門は、数少ないスイス人クリエーターが自身の作品を多くの人に見てもらう貴重な機会だ。今年は24本がエントリーした。例えば、マルクス・ハフリガー監督の「赤ずきん(Rotkäpchen)」(2分41秒)は変わった短編作品だ。シンプルな線で描かれたモダンな装いの登場人物たちが自ら進んで森の中へと入って行き、音だけであの「赤ずきん」の劇を繰り広げるという不思議な作風に仕上がっている。

最新長編映画部門にも日本の作品

コンペではないが、最新長編映画部門もあり、宮崎吾郎監督の「コクリコ坂から」がスイスで初上演される。「内容的にも、メッセージ性の高い作品を評価するというファントシュのコンセプトからも、この作品をぜひここで上演したかった」と、アーティスティックディレクターのアネッテ・シンドラー氏は話す。 

この部門にはもう一つ、日本から黒坂圭太監督の「緑子MIDORI-KO」が出品されている。これは、人間の表情を持った野菜が生き残りをかけて戦う様子を色鉛筆で繊細に描いたアニメで、すでに世界数十カ国の映画祭で上映されている。シンドラー氏は「この映画の制作年代は2010年と新しいわけでもなく、大衆向けでもない。だが、非常に抽象的なストーリーはまるで美しい夢のように、また悪夢のように信じられないほど可憐で、細やかに展開されている。製作者の技術力は圧巻だ」と上映理由を語る。

  ファントシュではほかにも、子どもたちが審査員となって「ベスト・キッズ」賞を決める子ども部門や、毎回特定の国にフォーカスを当てた部門を設置。今年はチェコに焦点が当てられ、質の高さが世界的に評価されているクレイアニメなどチェコ製アニメが多数上演される。

第10回国際アニメーション映画祭ファントシュ

アールガウ州バーデン(Baden)で2012年9月4日から9日まで開催。 

国際短編作品部門とスイス作品部門のコンペティション部門のほか、今年は「未来」「ゲーム」「チェコ」を重点テーマに据え、それぞれに部門を設けている。

 国際短編作品部門には日本から和田淳(あつし)監督の「グレートラビット」(7分5秒)や、水江未来(みらい)監督の「Modern No.2」(4分15秒)、田名網敬一&(故)相原信洋監督の「DREAMS」(6分)、平林勇監督の「663114」(8分)が選出された。「グレートラビット」は2012年第62回ベルリン国際映画祭で短編映画部門銀熊賞を、「Modern No.2」はフランスの2012年アヌシー国際アニメーションフェスティバルで音楽賞を受賞している。

 最新長編映画部門では日本から宮崎吾郎監督の「コクリコ坂から」と黒坂圭太監督の「緑子 MIDORI-KO」が上映予定。

 子どもが審査員を務める子ども部門では、ライカ・エンターテインメント(Laica Entertainment)の最新作「パラノーマン(ParaNorman)」がスイス初上演される。

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