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手話の語彙を増やそう!

ドイツ語に対応した手話を決め、撮影を終えるまでには長い時間がかかる

(swissinfo.ch)

聴覚障害は目に見えない障害だ。ここ数年スイスのろう者は、そんな自分たちの存在や意思を伝える手段である手話をもっと世間に知ってもらおうと、地道な活動を行っている。

街頭にスタンドを立てて手話を広く紹介するといった草の根運動のほかに、1990年代半ばからは連邦基金 ( SNF ) の支援を受けたさまざまなプロジェクトも進行中だ。

 日常用語3000語を収録したCDはすでに作成済みだが、普段あまり使わない専門用語は、まだまとめられていない。このプロジェクトでは、2007年9月から2008年8月まで経済用語、そしてその後の1年間で食物栄養に関する専門用語が収集される予定だ。職業実習生や職業訓練校の教師、職場で実習生を指導する責任者などが利用対象者で、聴覚障害者の語彙 ( ごい ) を増やし、これまでよりもより詳しく内容を理解できるようにすることが目的だ。

自然に生まれ、移り変わることば

 14人からなるプロジェクトチームを率いるのは、アメリカ出身の手話研究者でスイス滞在暦30年になるペニー・ボイヤー・ブレム氏 ( 65歳 ) 。現在進行中の経済用語辞典には、税金、住宅の購入および賃借、経営学などで必要となるドイツ語とそれに対応する手話およそ300語が収められる。

 「ドイツ語圏スイスの手話にはまだ存在しない単語もあるので、そのときはメンバーで議論しあって新しい手話を作ります。とはいえ、手話は生きた言語であり、自然に生まれるものです。ですから本来、このような形で新しい手話を作り出すことは不自然なことですが」
 とブレム氏は言う。

 メンバーの1人で手話を母語とするカティア・ティッシさん ( 45歳 ) は、
「1つのドイツ語に相応する手話がいくつかあって、文章の内容によって表現の仕方が少しずつ変わることがある。1対1の訳語を作ることはとてもむずかしい」
 と手話通訳を通じて話す。

限られた表現

 ドイツ語圏スイスで使用されている手話では、たとえば「姉」や「妹」、「兄」、「弟」はすべて同じ動作で表現される。また、「いとこ」や「叔父」、「叔母」などは記号のようなそっけない動作だ。ブレム氏はその理由を
「昔、健聴者の家族とのコミュニケーションがうまくできなかったろう者にとって、これらの人々は関心の薄い対象だったから」
 と説明する。

 手話を母語とする人は全体的に読み書きが苦手なため、情報量が比較的少ない。それゆえに、これまでは「連邦憲法」も「法律」も「規程」もすべてひとまとめにした表現で事足りてきた。しかし、かつては歯科技工士や縫い子など限られた職業に就くことが多かった聴覚障害者も今では職業分野の幅が広がり、さらに自分たちの権利を主張する政治活動も活発に行うようになってきたことから、もっと詳しい概念を表す手話の必要性が高まっている。

 新しく知った概念に対応する手話を既存の単語の中から選んだり、改良したり、新たに手話を作ったりという作業は大変だ。1つの単語に数時間費やされることもある。
「新しい手話を作るためには、まずこれまで1つの動作で表されてきた用語の違いを詳しく知らなければならない。そして、その過程はとても興味深い」
 とティッシさんは語る。

存続すべきプロジェクト

 経済用語の辞典作りは順調で、予定通り9月には終了しそうだ。そのあとは、経済よりも少し日常生活に近い料理や食品、飲食業界に関する専門用語の辞典作りが始まる。話し言葉が時代とともに変わっていくように、手話も時間の経過とともに少しずつ変わっていく。そのことを踏まえた上で、ブレム氏はこれからも連邦基金のプロジェクトが続き、辞典の改正が行われることを願っている。

 メンバーの中で最も若いカルメラ・ツムバッハさん ( 23歳 ) は、
「次にウェブ辞典を作るチャンスがあれば、健康や医療に関する用語がいいと思う。世界中の手話がこんなふうにウェブ辞典になったら素敵」
 と手話で話しながら大きな夢に目を輝かせる。世界となると現実的にその可能性はかなり低いだろうが、スイスろう者連盟 (SGB/FFS ) は現在、スイス全国 ( ドイツ語、フランス語、イタリア語 ) のデーターバンク作成を計画している。

 一方ティッシさんは、次回があるなら社会政策をテーマに選ぶという。現在、スイスのろう者たちは手話を国語として認めてもらうために活発な運動を続けている。社会民主党 ( SP/PS ) のパスカル・ブルデラー連邦議会議員の協力もあり、本来目に見えない聴覚障害がスイス社会の中で徐々に存在感を示し始めているようだ。

 再放送番組だけを放映している国営ドイツ語テレビ局は、今年1月から新しく手話通訳つきのニュース放送を開始した。ろう者や関係者が長年続けてきた運動の賜物だ。ニュースの内容は幅広い。まだ対応する手話がない言葉が出てきた場合は指文字が使用されるが、指文字は早く動かすと読み切れない。とはいえ、ニュースのスピードについていくには指文字を早く表さないわけにはいかない。手話の単語を新たに作り出すことは、手話通訳にとっても大きな助けとなるに違いない。

swissinfo、小山千早 ( こやま ちはや )

2言語 ( ドイツ語圏スイス手話とドイツ語 ) による専門用語インターアクティブ・ウェブ辞典製作プロジェクト

特に職業教育での活用を目的とする。対象はろう者やその家族、教師、実習を行う職場の担当者、相談所、手話通訳など。

プロジェクトの内容
2007年9月~2008年8月:経済 ( 税金、住宅の賃貸や購入、経済学 )
2008年9月~2009年8月:栄養 ( 料理、食品、飲食業界 )

各分野でもっともよく使われる専門用語をおよそ300語取り上げ、それに対応する手話がまだ存在しない場合は新たに作り、すでに存在している場合はその意味を適切に定義する。ドイツ語に対する手話およびその定義をビデオ撮影し、辞典としてウェブ上で公開する予定。

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