サファイアかダイアモンドをいかが?
クリスティのジュネーブ、毎秋恒例オークションでカットされた世界最大のサファイアが今月、競り売りに出される。サファイアはカルチエが1919年にカットしたものでイギリスのビクトリア女王の孫でルーマニアのマリー女王(1875−1938)も所持していたという歴史もの。
毎年恒例の競売は11月18、19日ジュネーブ、リッチモンドホテルで行われる。最高値が予想されるのは63,93カラットの完璧なダイアモンドで330万$〜400万�j(約3億6千万円〜4億4千万)の予想価格だ。
宝石として加工したもので世界で2番目に大きいサファイアは1960年に米国、ワシントンのスミソニアン美術館に寄付されたローガンサファイア(ローガン氏の寄付による呼び名)だが、423カラット。今回、競売に出されるサファイアは478,68カラットで卵ぐらいの大きさがあり、輝きといい、クオリティーは断然上だという。
物語が秘められたサファイア
この世界最大のサファイアの歴史は1913年に遡り、最初はダイアモンのネックレスの一部として使われた。1919年にカルチエがデザインを変えて以来、現在もその形は変わっていない。同年、カルチエの展覧会で大成功を収め、スペインの女王ビクトリア・ユージニアやブルボン家のお姫様たちが見ににきたという。2年後にこのサファイアはルーマニアのフェルディナンド王によって買い取られ、1922年の王の戴冠式のときマリー女王が胸に付けた肖像画が残っている。その後、サファイアはマリー女王の孫がルーマニアから国外逃亡した際に有名な米宝石商、ハリー・ウィンストンに売られた。
買い手は誰に?
光り輝くブルーサファイアを手にするとその大きさ、重さがずっしりくる。「宝石として使いにくいのでは?」という記者の質問にクリスティの鑑定士、エリック・ヴァルデュウ氏は「むしろ、歴史的な価値からコレクションとして購入する人が主だろう」という。現在はこのような大きなサファイアは見つからず、昔のサファイアの特徴は色の深みと形がシメトリーでないことだという。専門家がみればカットの仕方や色合いで年代もすぐに分かるらしい。一億円以上の予想価格がついているこの宝石の買い手の見当については香港や中東諸国が興味を示しているとのこと。
話のつきない宝石
今回の競売でもう一つ歴史の詰まったネックレスが売りに出される。47,62カラットのビルマンサファイアに26,98カラットの涙型のダイアモンドのついているネックレスだ。1910年、当時ウィストンと同じぐらい有名だった宝石商、マイケル・ドライサーが作ったもので米人富豪、スポールディング氏が奥さんへのプレゼントに買った。1938年に夫人はイタリアのパオロッツィー伯爵家に嫁いだ娘に「もし、戦争が起きたらこれでどうにか切り抜けて」と宝石をプレゼントした。1940年、パオロッツィー伯爵夫人はネックレスをピクニックの籠に隠して、ローザンヌへの亡命成功。伯爵夫人の死後、60年間ローザンヌの銀行で眠っていた宝石を遺族が売ることになった。予想価格は100万ドル〜150万ドル(約1億1千万〜1億6千5百万)だ。
スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)
−クリスティの毎秋恒例の宝石、時計オークションはジュネーブ、リッチモンドホテルで11月18日、19日に行われる予定。18日はローレックス、パテック・フィリップなどのコレクション時計200点、19日は宝石で3つのサファイアとダイアモンドなどが競売に出される。
−ルーマニア女王が所持していた宝石として加工された世界最大のブルーサファイアがオークションに出される。
−同サファイアの価格評価は86万$〜130万$(約9千5百万円〜1億4千万円)とされている。
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