探検家のルイ・ドゥ・ボッカルドは1889年、スイス西部・フリブールの自宅を出て南アメリカへ旅立った。ローザンヌ出身の写真家ニコラ・サヴァリー氏が彼に関心を寄せたのは、好奇心と偶然からだった。
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英国生まれ。1994年からスイス在住。1997年から2002年までチューリヒでグラフィックデザインを学ぶ。数年前に写真編集者に転身し、2017年3月からswissinfo.chのチームに参加。
写真編集 Helen James, swissinfo.ch
ルイ・ドゥ・ボッカルドの運命を変えたのは一羽のアホウドリだった。ドゥ・ボッカルドの乗っていた小船に、疲れ果てたアホウドリが空から舞い降りたのだ。幸運を示す伝説に従い、若きドゥ・ボッカルドはアルゼンチンを目指すことを決めた。
ドゥ・ボッカルドは1866年5月8日、フリブールで生まれた。多くのスイス人が海外へ移住した時代。ドゥ・ボッカルドはアルゼンチンへ向かった。1889年に到着し、ブエノスアイレス州のチーズ工場で働き始めた。1年後、アルゼンチンのラプラタ博物館外部リンクのキュレーター兼標本係として雇われた。運命のアホウドリを標本にした実績が買われた。
山のような手紙と1台のカメラ
こうしたドゥ・ボッカルドの経歴を発掘したのもまた偶然だった。2010年、趣味で骨董品取引をしていたニコラス・サヴァリー氏の父が、フリブール近郊ヴィラール・スル・グラーンのドゥ・ボッカルド家の家財一掃で古いトランクを発見。中から山のような古い手紙や日記帳、書物、写真が出てきた。いずれもドゥ・ボッカルドの所有物で、サヴァリー氏は彼の人生を研究することにした。サヴァリー氏は遺品を丹念に調べただけでなく、カメラを携えアルゼンチンまで彼の足跡を追いかけた。写真展では、2人の目に南米大陸がどう映ったかが描かれている。
ニコラス・サヴァリー氏とドゥ・ボッカルドの功績をまとめた写真展「コンキスタドール(仮訳:南米大陸への探検家)外部リンク」はローザンヌのエリゼ写真美術館で5月6日まで開催中。
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スイス東部の町、ザンクト・ガレンのパン屋の息子として生まれたミッテルホルツァーは、ギムナジウム(中等教育)を終えた後チューリヒに引っ越し、そこで写真の技術を学んだ。早くから野望を抱いていた彼は、実家のパン屋を継ぐ気はなかった。
実業家としての才能があったミッテルホルツァーは、スイスの初期のプロペラ機に乗り込み、国内の村や町、工場の写真を撮影して、それを住民、行政機関、工場主などに販売した。やがて彼は国境を越え、ノルウェー領スピッツベルゲン島で調査を行っていた極地探検家ロアール・アムンセンの元へ飛ぶことになる。それから1年後、今度はペルシアに向けてプロペラ機を飛ばし、その際に新たな飛行ルートを開拓。そして、「スイス号」でのケープタウンへの飛行で一躍有名になる。
このプロペラ機には、現地の熱帯気候にも耐えうる特別なカメラと小型カメラがそれぞれ2台積まれていただけでなく、現像室までもが作り付けられていた。まさに「空飛ぶ暗室」だ。ミッテルホルツァーの撮影隊が描く被写体のイメージははっきりしていた。野生動物、踊る人々、上空からの景色だ。
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