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深刻な青少年の失業問題

義務教育が終わると職業教育が始まる。しかし、職業教育を受けない青少年が近年増加しており、問題視されている Keystone

スイス社会保障会議 ( SKOS/CSIAS ) はこのほど、現在の青少年における失業問題を深刻なものとし、連邦政府に対し教育制度の改正を提案した。

職業教育が充実しているとされているスイスだが、近年は義務教育課程を終了した後、職業教育を受けなかったために就職もできず、生活保護を受けるケースが増えているという。

 スイス社会保障会議の提案は、16歳で義務教育を終了した後18歳までは、職業教育を受ける義務を課すというもの。同会議のヴァルター・シュミット議長は、新しい機関を設けるというのではなく、職業教育は現地における実践的な教育でもよく、学校でされる必要はないと提案する。

好景気のいまがチャンス

 スイスでは3.0%の人が生活保護を受けているが、子どもや青少年は最もその率が高く、子どもの場合は4.4%、18〜25歳までは3.9%となっている。両親もすでに生活保護を受けている場合が多く、しかも、難民としてスイスに移住してきた女性の占める割合が目立って高いのが特徴だ。

 スイス社会保障会議は2年間の職業教育の義務化を進めるとともに、能力の低い青少年には2〜3年にわたる特別な教育を施すことや、職業訓練のために青少年を受け入れる企業が少ない場合は、連邦政府がそれを用意することなども提案した。

バーゼル・シュタットの試み

 スイス社会保障会議は全国的な制度改正を提案しているが、すでにバーゼル・シュタット州では青少年の失業防止と職業教育の強化に力を入れている。例えば、成績の悪い生徒に対する就職に向けてのサポートや、義務教育とその後の教育への移行をスムーズに行えるような体制を敷いたり、青少年の失業者や失業しかけている青少年への対策などが充実している。

 職業教育課程での落伍や就職活動の失敗が、生活保護を受給することにつながる。青少年のうちから生活保護を受けるようになると、そこから立ち上がるのも難しいという。シュミット議長は「景気が良くなってきた現在、職業教育を受けた若者の需要は高いはず。また、現場でも、職業教育に力を入れることは、企業の収益を上げることにつながるのだと企業が思ってくれるようになることだ」と企業の意識の変化にも期待をかけている。

swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

<スイスの生活保護>
2004年の受給者数は22万人。
半数が都市部に住む人たち。
43.7%が外国人。
青少年のなかでも職業資格がない人の63%が生活保護を受けている。

<スイスの失業率>
2006年11月3.1%、12月3.3% 年平均3.3% ( 前年3.8% )
2007年の予想 2.8%

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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