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日焼け止めクリームはアスベストと同じ炎症を引き起こす !

皮膚ガン予防のために塗る日焼け止めクリームが、肺ガンを引き起こすかもしれない Keystone

化粧品、日焼け止めクリーム、塗料、食品の着色料など、日常で幅広く使用されるナノ酸化チタン ( nano-TiO2 )。これがアスベスト( 石綿 )と同様の炎症を引き起こすと1月19日にスイスドイツ語圏の新聞に発表され、消費者に衝撃を与えている。

しかし、研究者の1人ユルク・チョップ教授は「こうした商品を明日から使用するなというのではない。アスベストの二の舞を踏まないよう警告したいだけだ」と話す。

ガンになる可能性もある

 「ナノ酸化チタンが、横隔膜や肺に炎症を引き起こすという事実を確認した。その炎症を起こすメカニズムも炎症を引き起こす威力においても、アスベストとほぼ同じ。これがわれわれの研究結果だ」

 とローザンヌ大学の生化学科のチョップ教授は断言する。

 炎症を専門とするチョップ教授のこの研究結果はフランスの別機関でさらに検証され、昨年11月にアメリカの科学雑誌「プナス ( PNAS ) 」に掲載された。ところがこれが突如今年になりドイツで大きな反響を巻き起こし、次いでスイスのメディアも騒ぐ結果となった。

 チョップ教授によれば、この炎症は「長期的に繰り返されるとガンになる可能性もある」という。炎症はその治癒課程においてガン細胞にとって都合の良い環境を作り出すからだ。従って長期的に繰り返しナノ酸化チタンを体内に取り込んだ場合、ガンになる可能性は高まるとチョップ教授は説明する。

アスベストの二の舞を踏むべきではない

 しかし、もちろんナノ酸化チタンが体内にあるからといって、すぐに危険だというのではない。体には排泄作用もあるため、どれほどの量を摂取したら危険に繋がるかという判断は非常に難しい。

 だが、炎症のメカニズムがナノ酸化チタンに酷似したアスベストは、耐熱・耐久性に優れているため重要な建築資材として、40年前にその危険性が指摘されたにもかかわらず使い続けられた。その結果多くの犠牲者を生んだ。こうしたアスベストの二の舞を踏むべきではないとチョップ教授は語気を強める。

 「危険性は証明されたが、実際にどの程度の被害になるか分からない今のナノ酸化チタンの状況は、40年前のアスベストの状況に似ている。将来の被害を食い止めるには、1人の炎症の専門家に過ぎないわたしだが、必要のないものにはナノ酸化チタンを使用しないよう訴えたい」

 実際、世界で年間200万トン生産されるナノ酸化チタンは日常の生活の中に浸透している。

 「例えば歯みがき粉も歯をもっと白くするためナノ酸化チタンを使う場合があるが、使う必要がないのなら使わないほうが安全だ。食品も、ただ美的だというだけで色を付けるの必要は全くない。とにかく慎重であるにこしたことはない。また、使用規制などで政府レベルの対策も必要だ」

 と結論する。

ナノかマイクロか

 ところで、フランス語圏消費者連盟 ( FRC ) のヒューマ・カミス氏はこの研究結果を「ナノ酸化チタンが炎症を引き起こすという証明自体は素晴らしいことだが、われわれには十分ではない」と言う。ナノ酸化チタンがどういった形で日用品に使われているかまったくつかめていないからだ。

 例えば、酸化チタンが化粧品に使われることはよく知られているが、それが標準のマイクロ ( micro ) 粒子の形かより微小のナノ ( nano ) 粒子の形か消費者にはまったく不明だ。さらに、同じ酸化チタンでも、ナノは危険と分かったが、マイクロでは危険なのかどうか今の段階では不明だ。チョップ教授も「マイクロでも酸化チタンは炎症を起こしやすいと聞いたことがあるが、それを証明するにはほかの研究を待たなければならない」と話している。

日焼け止めクリームは危険

 ただし、ほとんどの日焼け止めクリームにはナノ粒子の酸化チタンが使われている。

 「もしナノでなければ塗った所が真っ白になる。以前はこうしたクリームもあったが、美的でないというので、ナノ粒子に替えて透明にしたからだ」

 とカミス氏は説明する。

 では、日焼け止めクリームの使用は控えた方がいいということか?

 「これはまったくのジレンマ。皮膚ガンにならないために日焼け止めクリームを塗るか、それとも ( 塗るのをやめて ) 肺ガンになるのを避けるか。今のところは前者を選ぶべきだろうと思う・・・それとも美的なことを考えず昔のようなクリームを求めるか・・・」

 

 いずれにせよ、現在カミス氏が消費者の代表として求めるのは、ナノ酸化チタンの使用表示を化粧品や歯磨き粉などの生産メーカーに義務付けることだ。

 「われわれはNGOとして、ナノテクノロジーの安全性を検討する政府の『ナノアクションプラン ( Nano Action Plan ) 』と対話を続けている。しかし、ほかのヨーロッパの国々と同様、法的規制を一つのナノ粒子に対して行うのではなく、恐らく化粧品や薬品といった分野別に行われるだろうし、またそれが緊急に実施されることを望む」

 と強調する。

ローザンヌ大学の生化学科のユルク・チョップ ( Jürg  Tschopp ) 教授は炎症を専門とする研究者。

2008年にはアスベストの炎症研究などで、医学の「ルイ・ジャンテ賞 ( Prix Loui-Jeantet ) 」を受賞。

その後、ナノ酸化チタンがアスベストと同様の炎症を引き起こすことを実験で証明。このマウスを使った検証をフランスのオルレアン大学の研究所 ( CNRS ) に依頼。

最終的な共同研究結果は2010年11月にアメリカの科学雑誌「プナス ( PNAS ) 」に掲載された。

これをドイツの日刊紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング ( Frnakfurter Allgemeine Zeitung ) 」が今年になり大きく取り上げ、ドイツで大反響を巻き起こし、次いでスイスのメディアも騒ぐ結果となった。

消費者団体のNGO。ヨーロッパのほかの国々の同様な組織と共同で、さまざまな商品のテストを行い、消費者に情報を月一回雑誌の形で提供。

会員制を取り、メンバーの会費のみで経営し広告収入はない。

ナノ粒子問題は、テーマの一つ。

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