ユーロ流通開始から2ヵ月 新旧通貨移行期間スムーズに終了

1月1日の欧州統一通貨ユーロの流通開始から丸2ヵ月が過ぎ、独マルクや仏フランなど旧欧州各国通貨からユーロへの無料両替えは2月28日をもって終了した。スイスはユーロ圏ではないが、通貨移行はスムーズに進んだ。
ユーロ圏12ヶ国での1月1日から始まった統一通貨ユーロへの移行期間が終った。ユーロ懐疑論者らの予想した移行期間の財政的・経済的混乱は、今のところはずれたといえる。独自通貨のスイスフランを持つスイスでは、移行期間がスムーズに終ったのは当然といえよう。「主要都市でのユーロ建て会計には全く問題ない。」と中央銀行であるスイス国立銀行(SNB)のウェルナー・アベッグ報道官はいう。アベッグ報道官によると、スイスでも国境地域やホリデーシーズンにはユーロの需要増が見込まれるが、スイスでユーロがスイスフランの並行通貨になるとはSNBでは見ていないという。金融関係者らは、スイスでは今後ユーロ保有高が3%は増えると予測する。「通貨市場でユーロは旧欧州通貨よりも大きな存在になる」とアベッグ報道官は見る。
ユーロは全てのEU加盟国で採用されたわけではない。英国、スウェーデン、デンマークはユーロ圏から距離を置いた。「サン」が「Up Yours Delors」の見出しで当時のドロール委員長が欧州統一を押し進める欧州委員会を批判してから10年以上が過ぎ、しばしば過激な反ユーロ報道の見出しが踊った英国では、近年統一通貨反対は急速に衰えつつある。政府にユーロ圏参加をかけた国民投票の早期実現を要請する動きが活発になってきた。世論調査でも過去1年間でユーロ賛成派が倍増し、昨年12月に「ガーディアン」紙が実施した世論調査ではユーロ賛成が62%だった。が、同調査によると、ユーロ賛成・反対両派は僅差で、ユーロ圏への即時参加賛成は31%だった。英国は、ユーロ圏への参加は政治的ではなく経済的に決定されるべきで、97年の総選挙で労働党が勝利を収めた後ブレア首相とブラウン蔵相が設置した5つの経済テストの結果を見るまでは決定しないとしている。5つの経済テストとは、ユーロ圏への参加が経済成長、雇用、安定、投資を促進するかどうかを見極めようというもので、大蔵省によると、2003年6月までには完了するという。
欧州最強通貨のマルクが消滅したドイツでは、国民が涙でマルクを見送った。ある世論調査では、女性の半数以上、男性の40%が独マルクの消滅を悲しむと回答した。調査対象となった国民の3人に1人はユーロに反対だと回答した。が、独国民が怒りを感じているのはユーロそのものに対してはなく、ユーロ導入後の物価の上昇だ。物価上昇はドイツの消費者心理を冷え込ませ、労働市場への悪影響が懸念される。
オーストリアでは新旧通貨移行期間はスムーズに終了した。世論調査によると、中年男性と高学歴・高収入層はユーロへの切り替えに問題なしと回答したのに対し、若年層・高齢者はユーロに嫌悪を示した。
ユーロ懐疑論者の多かったフランスでは、買い物にユーロ計算機を持ち歩く姿が目立つ。フランスは60年に仏フランの通貨修正を行ったが、新旧フランについての論争は何年も続いた。物価上昇はフランスでも懸念されているが、仏政府の統計によると1月の物価上昇率は0.1%、インフレ率の上昇は0.4%で、ユーロ導入によるものではなく寒冷な気候が主な原因だ。

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