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ジュネーブ時計見本市 過去最高の来場者数を記録

ウォッチズ&ワンダーズ2024の会場
ウォッチズ&ワンダーズ2024には54ブランドが出展した KEYSTONE/© WWGF/KEYSTONE / VALENTIN FLAURAUD

世界最大の時計見本市「ウォッチズ&ワンダーズ(W&W)」2024が4月9日~15日、ジュネーブで開催された。来場者数は過去最高を記録し、時計業界関係者の華やかな「同窓会」になりつつある。

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2024年は新たに8ブランドが加わり、計54ブランドが出展した。主催者によると、来場者数は昨年より14%多い4万9千人で、過去最高を記録。タグ・ホイヤーのジュリアン・トルナーレ最高経営責任者(CEO)は「規模拡大を実感した。当社のブース訪問者は2割増え、大きな成功を収めた」と話す。

成功は成長を生むが、そこから学ぶべきこともある。時計の入荷待ちリストに並ぶ顧客のように、会場となったパレクスポで良い場所を確保するためにブランドも列に並ばなくてはならなかった。ロレックスやパテックフィリップなど一定の目玉ブランドであればあらゆる出展の成功が約束されているが、それ以外のブースを訪れるのは真の高級時計愛好家に限られる。

開会式
4月9日、ジュネーブ州議会のデルフィーヌ・バックマン議員(左から3人目)がW&W 2024の開幕を宣言した KEYSTONE/© WWGF/KEYSTONE / CYRIL ZINGARO

近年、時計見本市という形式そのものが妥当性を問われている。数十ブランドが一斉に新作を発表するのは、必ずしも時計業界全体が歓迎している慣習ではない。一部メーカーはメディアの注目を奪い合うのを好まず、我が道を歩むことを選んだ。

参加者へのプレッシャーを軽減

パンデミックを経て、業界関係者が一般人と直接コミュニケーションを取る必要性が高まっている。今後の時計見本市は販売競争の場ではなく、専門家の団結を示すプラットフォームと見なされるようになる。「個々のブランドとしてではなく、時計業界全体として年に一度一堂に会することが重要だ」―主催者であるW&W財団の理事長を務めるロレックスのジャン・フレデリック・デュフールCEOはこう強調する。

「個々のブランドとしてではなく、時計業界全体として年に一度一堂に会することが重要だ」

ジャン・フレデリック・デュフール、ロレックスCEO

かつてLVMHグループ時計部門を率いたジャン・クロード・ビバー氏は「リアルの見本市に代わるものは一つもない」と主張する。「パレクスポの会場内に限らず、時計製造業界が年に一度、共通の期間にジュネーブに集結するのは良いことだ」

ユリス・ナルダンのジャン・クリストフ・サバティエ最高プロダクト責任者(CPO)は、「以前は見本市ごとに新作を発表する必要があった。今はその逆に、新作があれば見本市に参加し、なければ見送る」と、余裕の笑みを見せた。

時計職人の街ジュネーブ

関係者が口を揃えるのは、見本市の開催によってこの期間のジュネーブは華やかな時計業界の中心地になったということだ。多くのブランドがW&Wの開催の機を捉え、並行して展示会を開いた。主催者は表向きにはこの「海賊版」に苦言を呈しているが、本音では間接的に見本市の成功が認められたとしてほくそ笑んでいる。

W&Wは今や前身の「ジュネーブサロン(SIHH)」を凌駕し、規模的には2019年が最終回となった時計見本市「バーゼルワールド」に近づいている。

だが組織構造には根本的な違いがある。デュフール氏がドイツ語圏の日刊紙NZZ外部リンクで語ったように、バーゼルワールドではライブマーケティング事業社のMCHグループがバーゼルワールド事務局として展示スペースなどのサービスを運営していた。一方W&Wでは、時計メーカー自身が責任を負い、主催するW&W財団はその代表者で構成される。一種の連合体に近く、大手時計ブランドが出展料の大半を負担することで「弟」である中小ブランドも見本市に参加しやすくなる仕組みだ。

のキリアン・ムバッペ選手
4月11日、仏サッカーのキリアン・ムバッペ選手がW&Wを訪れ会場を沸かせた KEYSTONE/© KEYSTONE / VALENTIN FLAURAUD

カルティエ、パテックフィリップ、リシュモングループ、ロレックスがW&W財団の理事会メンバーとして四天王を演じ、出展ブランドを選考する。ショパールやLVMH傘下の大ブランド(ウブロ、タグ・ホイヤー、ゼニス)の代表者は主催に携わっていない。ファッション大手のシャ​​ネルやエルメスもジュネーブで時計の新作を発表しているが、委員会には含まれていない。これらのブランドもゆくゆくはメンバー入りを要求し、椅子を獲得することになるだろう。

理想は全ブランド参加

全員参加型イベントを目指すW&Wだが、注目すべき不在ブランドもある。独立系のオーデマ ピゲやリシャール ミルのほか、ブレゲ、ブランパン、オメガ、ロンジンなどスウォッチ・グループ傘下の全17ブランドが出展を見送っている。LVMHグループ内でもルイ・ヴィトンとブルガリはW&Wに出展していない。

W&W財団のマチュー・ユメールCEOはswissinfo.chとのインタビューで、オーデマ ピゲやリシャール ミルの参加に期待を寄せつつ、「すべての主要プレーヤーが毎年出展することを期待するのは非現実的」とコメントした。

さしあたり、W&Wは主催者による妥協の産物だ。その構造は複雑な部分も多いが、それはW&Wがスイス時計さながらの完全な機能性を発揮するのを妨げはしない。

編集:Samuel Jaberg、仏語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子、校正:大野瑠衣子

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