毎日100万人以上の人々が何気なく見ているシンボルは、デザインの古典ととらえて良いのではないか?チューリヒのデザイン美術館は少なくともそう考えている。同美術館では現在、スイス連邦鉄道(SBB)にまつわるデザイン展を開いている。
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英国生まれ。1994年からスイス在住。1997年から2002年までチューリヒでグラフィックデザインを学ぶ。数年前に写真編集者に転身し、2017年3月からswissinfo.chのチームに参加。
Helen James(本文)&チューリヒデザイン美術館、スイス連邦鉄道
スイスを旅行したとき、鉄道駅で時計を目にした人は多いだろう。微妙なニュアンスの原色で彩られた数々のサインもまた、広大な鉄道網で移動する人の道しるべになっている。
スイスの列車は時間に正確だ。スイス人はそれを誇りに思っている。電車通勤する人口はとても多いため、それだけ不平も出るが、だからこそ、時間の正確さに重きが置かれたともいえる。
スイスの鉄道時計は1944年、従業員で技師のハンス・ヒルフィカーが考案した。ヒルフィカーは、国内のすべての列車が時間通り出発することを保証する、特別なメカニズムを組み込んだ。列車の時刻表は分単位(秒単位ではない)で構成されている。ヒルフィカーの時計は新しい分が始まるとき、秒針は1.5秒待って再び動き始める。
デザインをもっと大きいスケールで
SBBは国内最大の不動産開発業者でもある。同鉄道は毎年、駅と都市部の設計開発に平均5億5千万フラン(約600億円)をつぎ込んでいる。 「もちろん、優れた建築は開発計画の一つの構成要素だ。このためSBBは建築コンペにかけている。ゴールは長持ちする高品質の建物を建てることだけではない。付加価値を付けることもその一つだ」。SBBの広報担当レト・シェーリ氏はスイスインフォに対し、そう語る。
「19世紀にも、著名な建築家が駅舎を建てている。チューリヒ中央駅は ヤコブ・フリードリヒ・ヴァナーが作った。20世紀後半には、マックス・フォクトが明確な形式言語を用いて、多くの駅舎のイメージを形作った」
最近では、ヘルツォーク&ド・ムーロン外部リンク、サンティアゴ・カラトラバ外部リンクのような世界的に有名な建築家らがSBBのデザインを担当している。しかし、SBBが所有するエリアへの投資ラッシュは必ずしも歓迎されているわけではない。チューリヒ中央駅の線路沿いで進む大規模な再開発では、高級高層マンションが次々に建ち、望まない高級化が起こっていると批判が出ている。
スイスの文化では鉄道旅行が重要な要素を占める。スイス連邦政府は1990年代、国旗にSBBのロゴと全く同じ赤い色を使うべきだと決定した。両側に矢印、そして中央にスイスの白十字があしらわれたロゴは、列車や駅に掲示されている。SBBのデザインはこれまで、ブルネル賞外部リンクなど様々な賞を受賞している。
国内で最多の利用者を誇るチューリヒ中央駅からほど近いデザイン美術館は、時の試練を乗り越えたデザインに再び光を当てている。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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