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スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は、脚を切断した人が歩く時に地面の感触をよりはっきり感じることができる特別な義足を開発した。義足の靴底にあるセンサーで自然に脳と通信できるようにした。
ETHZが20日、学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表外部リンクした。研究を主導したスタニサ・ラスポポヴィッチ教授はスイス通信社Keystone-SDAに「義足を体の一部のように感じられる」と説明した。
研究では、新しい信号伝達をテストした患者3人がより速く安全に移動できるようになったことを示した。「機動性の向上は健康にも良い」(ラスポポヴィッチ氏)。被験者は歩きながら他のことに集中できるようになり、例えば階段を上りながら単語の綴りを逆さまに言う課題で間違いが減ったという。
神経系に接続した義足は数年前から存在するが、皮膚がチクチクするなど患者にとって不快な感覚を引き起こすとラスポポヴィッチ氏は語る。信号の伝達方法に原因があり、「義足は一定の電気パルスを送り続けるが、それは本来の神経系の動きと異なる」。
そこでラスポポヴィッチ氏のチームは、生物の能力や構造などを参考に新技術を開発する「バイオミメティクス(生物模倣)」を採り、自然をモデルにした信号を研究した。
ETHZの発表外部リンクによると、博士課程のナタリヤ・カティック氏が、足の裏の特殊な感覚細胞の活動を記録したデータを基に、コンピューターモデル「FootSim」を開発した。歩いたり走ったりしているときに足の裏の感覚細胞がどのように動作するかを正確に示したモデルだ。
モデルが足の裏からの信号をどの程度うまくシミュレートしているかをテストするために、研究チームはまず猫の脚の神経と脊髄に電極を埋め込みました。
歩行中に自然に生じる神経活動を真似て猫の足に下から圧力を加えた時に脊髄に記録された活動パターンは、研究者がバイオミメティクス信号で脚の神経を刺激した時に記録されたものと酷似していた。
一方、従来通りの硬い刺激では、猫の脊髄に大きく異なるパターンが生じた。ラスポポヴィッチ氏によると、これはバイオミメティクス信号が従来型信号よりも優れていることを示す結果だ。
ラスポポヴィッチ氏は、自然からインスピレーションを得た信号が他の信号よりもうまく機能するという結果は、脊椎インプラントや脳刺激用電極などの他の機器にとっても重要だと語った。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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