スイスの誇るプライベートバンクを取り巻く環境は厳しくなる一方で、3行に1行は収益を上げるのに苦労している。小規模な銀行は「絶滅の瀬戸際に向かっている」との予測もある。
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国際会計事務所KPMGとザンクト・ガレン大学が国内のプライベートバンク87行を対象にした調査外部リンクによると、2018年の収益に対する費用の比率が90%を上回る「弱い」業績だった銀行は30行。前年の20行から増えた。調査対象行の総預かり資産は2兆5千億フラン(約270億円)にのぼるが、スイス最大のウェルスマネジメント部門を抱えるUBSとクレディ・スイスの2行は含まれていない。
収益・費用比率が70%未満の「強い」業績だったのは19行で、前年の26行から減った。大半は250億フラン(約2兆7千億円)の預かり資産を抱える大銀行だ。
2017年に税の自動的情報交換制度が結ばれ、銀行の秘密主義は実質的に終わりを迎えた。それまで数十億フラン規模の国外財産が税申告を逃れようとスイスの銀行に集まってきたが、こうした金の流れは細っている。多くのウェルスマネージャーは、それに代わる稼ぎ頭を見つけ出すのに苦労している。
規制対応にかかる費用や長引く低金利、世界の政治・経済不安など、業界には多くの逆風が吹き荒れる。
スイスのプライベートバンクが2010年の163行から2019年初めには101行に激減したのも、こうした逆風が背景にある。KPMGは今年末までに100行を下回ると予測する。「今後数年で、極めて多くの銀行が市場から退出するだろう」(KPMG)
小規模の銀行が抱える最大の題の一つは、資金難からアジアをはじめとする成長市場で物理的に存在感を示せていないことだ。また収益・費用比率が示すように、多くの銀行は人件費や規制対応費用など経営コストを抑えるのに苦慮している。収益・費用比率は小規模銀行(預かり資産50億フラン未満)で平均87.2%にのぼり、利益を圧迫している。
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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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スイスの銀行関係者の間では、ウェルスマネジメントの中心地として世界の超富裕層の資産を集めるジュネーブが、ブレグジット後のロンドンにビジネスを奪われるのではないかという恐れが広がっている。
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