スキーのラウバーホルンW杯、開催地にもたらす経済効果は?

ラウバーホルンW杯で練習に臨むスイス人選手 Keystone

スイスの山村ヴェンゲンで毎年1月に開催される国際スキー連盟(FIS)のラウバーホルン・スキーワールドカップ(W杯)。連盟が主催するアルペンスキーW杯では最も歴史が古く、最もコースが長いことで知られる。W杯によって世界的に注目されたこの小さな村だが、この大会が村にもたらす経済効果はどのくらいなのか。村はこのイベントなしで生き残れるのだろうか。

Jane A. Peterson in Wengen

アルペンスキーW杯はその年のトップスキーヤーを選ぶため、五輪や世界選手権より重要視される。ラウバーホルン大会はその認定レースの一つだ。今年の第88回大会は12日~14日に開催された。

INFOBOX

ラウバーホルン大会の今年の日程

12日 アルペン複合(滑降と回転)

13日 滑降

14日 回転

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家族で現地のホテルを経営するベッティナ・ツィンナートさんは「ラウバーホルンがあるから、ヴェンゲンがこれだけ有名になり、これだけ多くの観光客が村を訪れる」と話す。ラウバーホルンのコースを一度でも滑ってみたいと夢見たことのあるスイス人観光客にとって、この大会は非常に人気なのだという。

ホテル「Schönegg(シェネッグ)」マネジャーのカロリーネ・オギさんは、ラウバーホルン大会がテレビ放映されることについて「とりわけ天気がいい日は、宣伝にもってこい」と話す。

現地で観光客向けのアパートを経営するラッヘル・パドレイさんは「ラウバーホルンといえば誰もがヴェンゲンの名前を口にする。この村を世界に発信する絶好の手段だ」と話す。

この大会の恩恵を受けているのは、ヴェンゲンだけではない。地元観光推進団体のユングフラウ観光の最高経営責任者(CEO)、マルク・ウンゲレールさんは「この地域全体にとって最も重要なイベントだ」と強調。ウンゲレールさんは、スキー産業においてヴェンゲンがこれだけ重要な位置にいられるのはラウバーホルンがあるおかげだといい「それが無かったらどうなるかなんて、誰も考えが付かない」と話す。

同大会の期間中は、開催地のヴェンゲンが世界中のテレビで放送され、広告収入も莫大となる。ヴェンゲン観光局のロルフ・ヴェグミュラー局長は「我々の財政状況では絶対にまかなえない」と話す。

ユングフラウ地域の主要な村の一つ、ヴェンゲンのメインストリート Keystone

スイス国内だけを見ても、ラウバーホルン大会はあらゆるスポーツ中継の中で最も高い視聴率をたたき出す。スイスの人口は約800万人だが、中継番組の視聴者は1万人以上に上る。大会は隣国のオーストリア、ドイツ、イタリア、フランス、英国でも中継され、近年はアジアでも人気が上昇している。今大会は滑降で日本、韓国人選手と対戦することもあって、中国でもテレビ中継された。

経済効果

ラウバーホルン大会の関係者は、世界中でテレビ放送されることなどによりユングフラウ地域が受ける経済効果を、間接的なものも含めて3000万フラン(約34億5千万円)と見積もる。これはルツェルン応用芸術科学大学の観光経済機構が2002年に調査した数字を元にしている。

ラウバーホルン大会を運営する団体のCEO、マルクス・レーマンさんは、この数値は間接的なものを除けばがくんと減ると推測する。直接的な経済効果によりヴェンゲンとユングフラウ地域が得る年間の純利益で、レーマンさんがはじいた試算は800万フランだ。ただ、それでも3年前と比べれば300万フラン多い。

経済効果は多岐にわたる。ヴェンゲンのスキー関連インフラはこの大会のおかげで最新鋭のものが導入されている。その最たる例が、ユングフラウ地域のスキー場に設けられた初の人工降雪機、さらに低燃費のGPSを搭載したゲレンデ整備システムだ。

大会には地元の公共交通、スキーリフトを運営するユングフラウ鉄道などがパートナー企業として名を連ねる。同鉄道は50万フランを出資、大会運営に関わる輸送を無償で提供。CEOのウルス・ケスラーさんは、ラウバーホルンが一年で最大のイベントだと話す。

ユングフラウ鉄道は出資金を出すかわりに、3万5千人に上る観光客が交通機関を利用することなどで恩恵を得ているとみられる。また大会が世界中で放送されることで「ユングフラウ地域のウィンタースポーツに重要な価値を生み出している」とケスラーさんは強調する。

ラウバーホルンに多くの観光客が来ることで、食事、輸送、宿泊施設の需要が生じる。これがヴェンゲンの村に利益をもたらしている Keystone

さらにユングフラウ鉄道グループは、今年から新たな経済効果が生じたと指摘する。ラウバーホルンのコース頂上にあるクライネ・シャイデック駅に、新しいレストランが出来たことだ。同駅に隣接するレストランは大会期間中、1千食を超える利用が見込め、歳入は最大4割増になるという。

レストランのマネジャー、ジャン・ダニエル・ビンギセールさんは、客がソーシャルネットワークに食事の写真を投稿したり、スイスの観光局が宣伝したりすることで得られる収入増も期待する。

ヴェンゲン地域のホテルは悲喜こもごもだ。地元ホテルは20カ国以上の代表チーム、ジャーナリスト、スポンサーらが宿泊するための1400床を提供しており、地元で3軒のホテルを家族経営するツィンナートさんは「コストの半分に上る」と話す。ただ、ラウバーホルンのおかげでメディアにただで取り上げられていることも言及。「私たちではそれだけの広告費にお金は掛けられない」と話す。

他のパートナー企業やスポンサーは出資額については明らかにしなかった。スイスインターナショナルエアラインズは、ラウバーホルンはスイスの高い質とホスピタリティーを市場に示していると強調。一方、通信大手のスイスコムや国内のウィンタースポーツ団体が加盟するスイススキーはいずれも、世界のスキー競技において、スイスが代わらずトップであり続けるという目標を掲げている。

ゴール地点を整備する関係者 © KEYSTONE / ANTHONY ANEX


(英語からの翻訳・宇田薫)

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