スイスのメディアが報じた日本のニュース
今週(11月3日〜9日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから4件をピックアップ。要約して紹介します。
「火山噴火で日本に新しい島」「アフリカに注目する日本」「宮崎駿監督の新作」「日本女性たちの反撃」「1000億フラン超のインフレ・景気対策」「G7外相会合」「縮み続ける日本」「フィリピンに接近」「マリオのお陰で無敵になった任天堂」―といったトピックスが取り上げられました。
この中から今回は「フィリピンに接近」「アフリカに注目する日本」「縮み続ける日本」「日本女性たちの反撃」をご紹介します。
中国に対抗しフィリピンに接近する日本
岸田文雄首相が11月4日、訪問先のフィリピンで巡視船「BRP テレサ・マグバヌア」を視察。ドイツ語圏の日刊紙NZZは、これは「日本が開発援助の一環として、無償または優遇条件でフィリピンに納入した12隻の沿岸警備船の1隻」と紹介し、その背景を解説しました。
1つは「中国から同じような嫌がらせを受けているフィリピンに、日本がつながりを感じている」ことです。中国は南シナ海でフィリピンに、東シナ海で日本に圧力をかけています。またフィリピンと日本はどちらも米国と軍事同盟を結んでおり、「地理的理由から、中国の台湾侵攻に関する米国のシミュレーションにおいて重要な位置」を占めています。
日本の同盟強化に対して中国は反発していますが、NZZは「フィリピンのような国々が軍事的支援を求めているのは、まさに中国の攻撃的な行動が原因だ」と指摘しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)
日本が見つめるアフリカ
日本政府は従来、政治・経済的にアフリカにほとんど関心を払ってこなかったが、中国が野心的なアフリカ政策を推進して以来、状況は変わりつつある――経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは東京在住のフリージャーナリスト、ウルス・シェットリ氏の論考を掲載しました。
シェットリ氏は「2012年の習近平国家主席の就任以来、新興世界大国としての中国の存在感が著しく増大し、日本にとって新たな時代が幕を開けた」と解説。特に「一帯一路」構想の一環で「アフリカの角」と呼ばれるジブチに初の海外基地を設立したことが大きな警鐘となったといいます。
中国は大規模な経済支援が相手国の債務危機を招く一方、国際援助の経験が長い日本は金融援助に慎重です。一方で中国も日本も、アフリカの民族性や文化、具体的には「アフリカの政府や公務員の非効率さ」に苦労していると指摘しました。
もちろんアフリカを重視するのは単なる中国への対抗心だけではありません。「アフリカの農業生産が増加すれば、日本にとって重要な資源となる可能性がある」。高齢化や気候変動によって資源調達が難しくなりつつある日本の根本問題にも焦点を当てました。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/独語)
世界を脅かす日本の大収縮
国際通貨基金(IMF)が発表した国内総生産(GDP)予測で、日本は2023年に名目値でドイツに抜かれ世界4位に転落する見通しとなりました。ルツェルン新聞など複数の地方紙に掲載された解説では、「日本は、遅かれ早かれ、数十年前に始まったプロセスが始まるすべての国の未来を垣間見ることができる」として、寿命の伸長、乳児死亡率の低下、出生率の低下がどの国にも起こりうることだと警告しました。
名目GDP縮小の背景に円安や、欧州連合(EU)のような自由貿易圏を持たないことを挙げ、最大の難題は「年金受給者と労働者の比率」だと指摘。人口当たりや労働時間1時間当たりでみれば日本のGDPは他の富裕国と遜色なく、定年退職後に平均5~7年働き続ける国は他にはないことを指摘し、「もう少し移民の流入に寛容になれれば、もう少し早く定年を迎えることも可能だろう」と結びました。(出典:ルツェルン新聞外部リンク/ドイツ語)
「可憐なカーネーション」はもう要らない
日本の女性は「カーネーション」のように優雅で意思が強く、魅惑的で、自己犠牲を問わず、父親、夫、息子への「三従」を守るべきとされます。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)はそんな日本でも、公共の場や家庭で平等を求めて戦う人が増えている、と報じました。
学生に就職活動を指南するシノハラマサコさんの名刺には、「就職活動の性差別にノー」と印字されています。学生たちはスカートやパンプスを強制されるのではなく、個性を表現したがっていると話します。SRFは100万回近くダウンロードされている夫婦の家事分担を計測できるアプリや、地方議会の女性比率50%を目指し奮闘するグループの話も紹介しました。(出典:SRF外部リンク/ドイツ語)
今週のスイスのニュース
今週、最も注目されたスイスのニュースは「スイスで低緯度オーロラ観測 今年2回目」(記事/日本語)でした。他に「スイス政府、公共放送の受信料を300フランに減額へ」(記事/日本語)、「UBS、世界で4千人の雇用削減 7~9月期」(記事/日本語)も良く読まれました。
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次回から「スイスで報じられた日本のニュース」は月曜配信に変わり、11月20日(月)に掲載予定です。
校正:宇田薫
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