英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を前に追加緩和を見送ったスイス国立銀行(SNB)。政策に余力を残しているようにも見える
Keystone
スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は19日の理事会で、政策金利と預金金利をマイナス0.75%に据え置くことを決めた。一方で収益悪化にあえぐ民間銀行の批判を受け、マイナス金利の免除範囲を広げた。
このコンテンツが公開されたのは、
SNBは理事会後の声明外部リンクで「世界の低金利環はさらに定着し、しばらく続く可能性がある」と述べた。現在、法定準備金額の20倍まではマイナス金利を免除しているが、11月1日から25倍に引き上げることも発表した。免除範囲は今後、毎月見直す方針だ。
金融業界は長引く低・マイナス金利政策で収益性が悪化し、不満が高まっている。スイス銀行協会のヘルベルト・シャイト会長はSNB理事会に先立つ12日、経済に「大規模な構造的損害を及ぼしている」と述べ、早期正常化への期待を示していた。
SNBはフランの過大評価が続いているとして、必要に応じて為替介入を続ける姿勢を改めて強調した。
成長率とインフレ率見通しも大幅に引き下げた。2019年の成長率を1.5%から0.5%に引き下げ。インフレ率は2020年は横ばい、21年に0.6%になるとの見通しだ。
米欧は緩和拡大
先週来、主要銀行の金融緩和が相次いだ。欧州中央銀行(ECB)が12日に新しい緩和策を発表し、18日には米連邦準備制度理事会(FRB)が今年2回目の利下げを決めた。
一方、日銀は19日に金融緩和を維持。ノルウェーは逆に利上げした。
米中貿易戦争で世界経済に先行き不安が高まり、スイスにも製造業を中心に景気減退感が出ている。フラン高が根強く、中銀はフラン売り介入を実施しているとみられる。
10月には英国が欧州連合(EU)と合意ないまま離脱する可能性があり、そうなれば安全通貨とされるスイスフランはさらに上昇しそうだ。SNBは英国が離脱を決めた2016年の国民投票直後も、大きく為替介入に動いた。
おすすめの記事
おすすめの記事
板挟みのスイス中銀 フラン高への対応に苦慮
このコンテンツが公開されたのは、
市場の格言に「中央銀行には逆らうな」というものがある。では中央銀行は米大統領に対抗できるのだろうか?スイス国立銀行(SNB)がその答えを出そうとしている。
もっと読む 板挟みのスイス中銀 フラン高への対応に苦慮
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
続きを読む
おすすめの記事
スイスフラン相場に上昇圧力 介入観測が浮上
このコンテンツが公開されたのは、
米中貿易戦争がスイス経済に暗雲をもたらしている。投資家心理が下向き、安全通貨であるスイスフランに資金が流入している。スイス国立銀行(中央銀行、SNB)がフラン高の抑制に動き出すのかどうか、注目が集まっている。
もっと読む スイスフラン相場に上昇圧力 介入観測が浮上
おすすめの記事
マイナス金利への耐性高めるスイス銀行業界
このコンテンツが公開されたのは、
度重なる市場の混乱や長引くマイナス金利政策の荒波を乗り越え、2018年のスイス銀行業界は収益を伸ばした。だが世界の政治・経済の先行きには不透明な要素が多く、警戒心は解けない。
もっと読む マイナス金利への耐性高めるスイス銀行業界
おすすめの記事
スイスの小規模プライベートバンクに消滅の危機
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの誇るプライベートバンクを取り巻く環境は厳しくなる一方で、3行に1行は収益を上げるのに苦労している。小規模な銀行は「絶滅の瀬戸際に向かっている」との予測もある。
もっと読む スイスの小規模プライベートバンクに消滅の危機
おすすめの記事
スイスのウェルスマネジメントはどう生き残るのか
このコンテンツが公開されたのは、
銀行秘密の時代が終わり、スイス金融業界は強みを一つ失った。だがスイスの銀行は今も世界中から多くの資本を引き付けている。アセットマネジメントの専門家パスカル・ジェンティネッタ氏はそう語る。
もっと読む スイスのウェルスマネジメントはどう生き残るのか
おすすめの記事
スイスの金融政策に限界 制度改革を検討せよ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が最後に金融政策を改革してから20年が経過した。金融市場のかじ取り方法は再び見直すべき時に来ているが、表立った議論はまだ始まっていない。
もっと読む スイスの金融政策に限界 制度改革を検討せよ
おすすめの記事
スイスが低金利から抜け出すには? 経済学者エミ・ナカムラ氏から学ぶこと
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は低金利に縛られている。そこから抜け出すには物価目標の引き上げが有効とみられるが、人為的な物価引き上げに対し、連邦政府や中銀は社会的な損失が発生すると懸念する。マクロ経済学者のエミ・ナカムラ氏の見解は異なる。
もっと読む スイスが低金利から抜け出すには? 経済学者エミ・ナカムラ氏から学ぶこと
おすすめの記事
UBS、普通預金口座の利子をゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行最大手UBSは6月1日から、成人の普通預金口座に付く利子を0.01%からゼロに引き下げる。
もっと読む UBS、普通預金口座の利子をゼロに引き下げ
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。