
スイスの労働力不足、依然深刻

スイスでは依然として高いスキルを持つ人材が不足している。とりわけ医療、IT、エンジニアリング分野の雇用で厳しい状態が続いている。
総合人材サービス会社アデコ(本社:チューリヒ)とチューリヒ大学のスイス労働市場モニターが28日に発表したデータによると、スイスの「労働力不足指数」は2022年に69%上昇し、急激に悪化。2023年も24%上昇し過去最高を記録した。
スイス労働市場モニターは、こうした状況が続く理由として「求職者数の大幅な減少」と「求人数の増加(前年比7%)」を挙げた。
ホテルやレストランなどの内需向け部門は「堅調な内需に大きく支えられた」ため、景気減速下にもかかわらず雇用創出が予測されている。一方、輸出を中心とする部門は世界的な需要の落ち込みに直面し、苦戦を強いられている。
アデコ・スイスのディレクターを務めるマルセル・ケラー氏は、「来年の経済見通しが低調であることや、労働力不足指数の勢いが目に見えて低下していることから、短~中期的には緩和局面が到来すると思われる。しかし長期的には、高資格労働者の不足はスイスの企業にとって懸念材料であり続けるだろう」との見通しを語った。
また「人口の高齢化、さらなるデジタル化、グリーン経済への移行は、今後もこの傾向に拍車をかけるだろう」とも指摘した。
さらに高まる人手不足感
最も需要の高い職種は、医療(看護師、内分泌科医、薬剤師)、IT(開発者、ソフトウェア・アプリケーションアナリスト、SAPコンサルタント)、エンジニアリング(機械技師、暖房など空調設備プランナー)。ただ、アデコによると、IT分野は9月に求職者数が急増し、労働力不足が若干解消したという。
労働力不足はスイスのフランス語圏(14%)よりもドイツ語圏(28%)で多く、ドイツ語圏では1年間で求職者数の減少(16%減)と求人数の増加(8%増)がより顕著だった。一方、フランス語圏では、求職者数の減少がより緩やかで(10%減)、求人数の増加はわずか3%だった。
労働市場モニターは、「有資格者が不足しておらず」「補助的なスタッフなどあまり資格を必要としない」部門でも、「一般的な労働力不足に転じる傾向にある」と強調している。
アデコ・スイスのドイツ語圏支社長を務めるマルティン・マイヤー氏は、外国人労働者の活用も提唱している。
英語からの翻訳:大野瑠衣子
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