ボルサ・イ・メルカードス・エスパニョーレス(BME)の買収が成立すれば、SIXはロンドン、ユーロネクストに次ぎ欧州第3の証券取引所になる
Keystone / Ennio Leanza
スイス証券取引所を運営するSIXグループは18日、スペイン証券取引所を運営するボルサ・イ・メルカードス・エスパニョーレス(BME)を友好的に買収する提案を発表した。28億ユーロ(約3360億円)を全額現金で支払う案だ。
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提案が受け入れられれば、SIXはドイツ証券取引所を抜いて欧州で3番目に大きい金融インフラグループになる。1株当たりの提案価格は34ユーロ。過去6カ月の出来高で加重平均したBMEの株価に対し47.6%、11月15日の終値25.4ユーロに33.9%のプレミアムが上乗せされた価格だ。
買収提案の成立には、最低でも株式の50%と1株の取得が必要だ。加えてスペインの市場競争委員会(CNMC)、スペイン証券取引委員会(CNMV)、およびスペイン政府の承認も得なければならない。
EU・スイスの相互締め出しが背景に?
欧州連合(EU)は7月から、EU・スイスの枠組み条約交渉の停滞を背景に、スイス証取でのEU株の取り扱いを禁止。報復としてスイスはEU株式市場でのスイス株の取り扱いを禁止した。BMEの買収提案はスイス証取の取引高の減少を補う目的との観測も出ているが、SIXは取り扱い禁止と買収案との関係を否定。買収が成立してもスイス株はスイス内でしか取引されないと発表している。
SIXは昨年5月、決済サービス事業をフランスの決済会社ワールドラインに売却。BME買収は、売却で得た資金の活用策との見方もある。
世界で広がる証券取引所の再編
SIXがBMEの買収を提案した背景には、株式の取引高が頭打ちになる中、取引所の国境を越えた統廃合が進んでいることがある。2007年にニューヨーク証券取引所を運営するNYSEグループと、パリやアムステルダム、ブリュッセル、リスボンの取引所を運営するユーロネクストが合併。現在は香港証券取引所がロンドン証券取引所の買収に触手を伸ばし、ユーロネクストもBMEと買収協議している。ドイツ証取もBME買収を検討しているとの報道もある。
SIXのロメオ・ラッヒャー会長は「世界の金融市場インフラの統廃合が加速している今、BMEと組むことは両機関の利害関係者に直接・即時の利益をもたらす」とコメントした。
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