UBSはスイス連邦政府・スイス国立銀行(スイス中銀、SNB)との損失保証合意を自主的に解消した
© Keystone / Michael Buholzer
スイス最大の金融機関UBSは11日、ライバル行クレディ・スイスの救済買収に関し連邦政府、スイス国立銀行(中銀、SNB)と締結した損失保証合意を自主的に解消した。
このコンテンツが公開されたのは、
政府と納税者は損失保証リスクを負わなくなる。
UBSは、クレディ・スイスグループ買収に関連して発生しうる損失をカバーするための政府・中銀の保証90億フラン(約1兆2900億円)は必要なくなったとした。合意の効力は即時失効する。
ただ政府は、通常法下での公的流動性に関するバックストップ(安全策)を導入する法案はこれまで通り連邦議会に提出する意向だとし、「大きすぎて潰せない」規制枠組みについては包括的な見直しを行っていると述べた。
損失保証合意は6月9日、正式に締結された。
この措置は、3月に政府が仲介したUBSのクレディ・スイス買収を円滑に進めるため、連邦憲法の緊急事態条項に基づき決定された。最初の損失50億フランは UBSが負担し、そののちの損失90億フランを政府が公金で負担することになっていた。
UBSは声明で「3月19日の緊急事態条項に基づく臨時流動性支援は全て返済された」と発言。クレディ・スイスも融資500億フランを8月10日時点でSNBに全額返済したとした。
財務省は、政府はこの合意で損失は被っておらず、むしろ約2億フランの収入があったとした。
UBSは約定料、リスクプレミアム(標準よりも高いリスクに対して支払われる対価)として総額約7億3000万フランをスイス当局に支払った。内訳は政府に2億フラン、SNBに5億3000万フラン。
政府の反応
スイスのカリン・ケラー・ズッター財務相はUBSの決定を歓迎。政府は「この合意に関し、政府は1フランも使っていない」と強調し、UBSを「強いパートナーだ」と述べた。
11日午前、スイス証券取引所でUBSグループの株価は5%近く上昇した。
英語からの翻訳・宇田薫
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
続きを読む
おすすめの記事
UBS、投資銀行部門の数百人を解雇 CS統合で
このコンテンツが公開されたのは、
UBSがクレディ・スイス(CS)統合の一環として、投資銀行部門の人員整理に着手したことが分かった。対象は数百人規模となる。
もっと読む UBS、投資銀行部門の数百人を解雇 CS統合で
おすすめの記事
UBS、クレディ・スイスのロシア人口座を解約へ
このコンテンツが公開されたのは、
ドイツ語圏の日刊紙NZZ日曜版は30日、UBSはクレディ・スイス(CS)から引き継いだロシア人顧客の口座の50~75%を解約すると報じた。UBSにとってリスクが大きすぎると判断した。
もっと読む UBS、クレディ・スイスのロシア人口座を解約へ
おすすめの記事
魅力を失った「スイスの銀行員」
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの大手銀行UBSとクレディ・スイス(Credit Suisse)は昨年、グループ全体で7000人(スイスでは約1500人)を解雇すると発表した。 また、UBSのセルジオ・エルモッティ最高経営責任者(CEO)は最…
もっと読む 魅力を失った「スイスの銀行員」
おすすめの記事
スイスはウェルスマネジメントの王座を死守できるか
このコンテンツが公開されたのは、
資産の預け先としてスイスより香港やシンガポールを選ぶ富裕層が増えている。だがスイスが長年築いてきたノウハウと名声まで奪われるのかどうかは、専門家の間で見方が分かれている。
もっと読む スイスはウェルスマネジメントの王座を死守できるか
おすすめの記事
スイス議会が臨時議会招集へ、クレディスイス買収で
このコンテンツが公開されたのは、
国内最大の金融機関UBSによる同業のクレディ・スイス(CS)買収で、スイス連邦議会は、政府の公的支援を含め一連の手続きを審議する臨時議会を開く。
もっと読む スイス議会が臨時議会招集へ、クレディスイス買収で
おすすめの記事
クレディ・スイス、「スイス回帰」で名声回復か
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行大手クレディ・スイス(CS)の取締役会は、多くの株主の期待に反してティージャン・ティアム最高経営責任者(CEO)の退任を決めた。後任はスイス国籍を持ち、現在CSの国内事業を率いるトマス・ゴットシュタイン氏だ。
もっと読む クレディ・スイス、「スイス回帰」で名声回復か
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。