スイス国立銀行(中央銀行)のトーマス・ジョルダン総裁は国内紙のインタビューで、「場合によっては金融政策のさらなる緩和が必要だ」と語った
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スイス国立銀行(中央銀行、SNB)のトーマス・ジョルダン総裁は3日付の国内紙のインタビューで、現在マイナス0.75%に設定している政策金利をさらに引き下げる可能性を示唆した。
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SNBは2015年1月にマイナス金利政策を導入。現在の中銀預金金利マイナス0.75%は世界で最も低い政策金利で、日本など先進各国の低金利政策の中でも一歩先を進む。
3日付のドイツ語圏の日刊紙NZZ日曜版外部リンクで、ジョルダン総裁は「超低金利政策はさらに長引く可能性があり、場合によっては金融政策のさらなる緩和が必要だ」と語った。
「我々の金利の余地に限界がないわけではないが、さらなる利下げの可能性はある」とも説明した。
SNBはマイナス金利政策や為替介入、外貨投資によってフラン相場を押さえようとしている。世界景気の不透明感が高まるとリスク回避で安全資産のフランが買われ、相場が上がりやすいからだ。一方、マイナス金利政策は金融機関を始めスイス企業に副作用をもたらしているとの批判がある。
スイス銀行協会は先月、SNBのマイナス金利政策はもはや期待した効果が失われ、副作用やリスクが増大していると分析した報告書を発表外部リンク。早急にマイナス金利からの出口を探るべきだと提唱した。
欧州の銀行は長引く低金利により収益性が低下したと悲鳴を上げる。先月30日にはクレディ・スイスのティージャン・ティアム最高経営責任者(CEO)がマイナス金利は「銀行業界の助けにならない」と述べ、政策を変えるべきだと主張した。
ジョルダン総裁はインタビューで、さらに金利低下が進めば資産家は銀行からお金を引き揚げてタンス預金に回すようになり、逆効果になるとの批判に対し、「現金を保管するコストとリスクは、現在のマイナス金利政策にかかるコストを上回る」と反論した。
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