© Keystone / Gaetan Bally
「勝手にしやがれ」や「さらば、愛の言葉よ」などの名作を生みだしたスイス・フランス国籍のジャンリュック・ゴダール監督が13日、91歳で死去した。スイスの自宅で自殺ほう助を利用した。
このコンテンツが公開されたのは、
2022/09/14 15:04
1960年ごろにフランスで起こった映画運動「ヌーベルバーグ(新しい波)」を立ち上げた1人。常に映画製作の境界を広げてきた画期的なアーティストとして称賛されている。常に新しい形式のナレーションとジャンプカットを取り入れた。
スイスのアラン・ベルセ内務相は13日、ツイッターで「スイスは最も偉大な映画制作者の1人を失った。同氏の作品は、世界中の幾世代もの映画監督にひらめきを与えた。彼の計り知れない業績と影響力は歴史に残るだろう」と賛辞を述べた。
ゴダール氏は約 150 本もの映画や動画を撮影し、亡くなるまで活動を続けた。1959年に撮影され翌年に公開された初の長編「勝手にしやがれ」が大ヒット。遺作となった「イメージの本」(2018年)はカンヌ国際映画祭で「スペシャル・パルムドール」を受賞した。
2010年にはアカデミー名誉賞を授与されたが、ハリウッドでのオスカー像授与式への招待は断った。イスラエルの政治に対する批判的な見解は論争を巻き起こし、一部の地域では「反ユダヤ主義者」と非難された。
ゴダール氏は1930年12月3日、スイス出身でパリに暮らす裕福な家庭に生まれた。幼少期をスイス西部レマン湖畔のニヨンで過ごした。パリで民俗学を学んだ後、当初は作家・画家を目指していたが、映画に転向。1953年にスイス国籍を取得した。
前述の他に「軽蔑」(1963年)、アルファヴィル(1965年)、「気狂いピエロ」(1965年)、「中国女」(1967年)、「ゴダールのリア王」(1987年)、全8章から成るシリーズ映画「ゴダールの映画史」(1988~98年)などの作品がある。
ゴダール作品に出演した女優アンナ・カリーナと結婚、その後アン・ウィアゼムスキーと再婚した。1977年以降はスイス西部レマン湖畔のロールで、3番目の妻となったスイスの映画製作者、アンヌ・マリー・ミエヴィルと暮らしていた。
ミエヴィル氏は、ゴダールが 今月13 日、ロールで「愛する人たちに囲まれながら」安らかに息を引き取ったと発表した。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)外部リンク によると、ゴダール氏の顧問を務めるパトリック・ジャンヌレ氏は、スイスでは合法とされる自殺ほう助により死亡したとする仏リベラシオン紙の報道を認めた。「医療報告書によると、ゴダール氏は複数の疾患を煩い、スイスで自発的に依頼して(自殺ほう助のための)法的支援を受けた」と述べた。
ゴダール氏の親友だったジャンヌレ氏は「身体は疲弊していた。さまざまな病状のためにもはや普通に生きることができなかった。とても独立し正直だった彼にとって、他の人と同じような身体的手段を持てないことは大きな障害だったと思う」と語った。
おすすめの記事
スイスで自殺ほう助がタブーではない理由
スイスでは、国外在住者の自殺ほう助を受け入れる団体があり、外国人が自死を求めてスイスに来る「自殺ツーリズム」につながっている。
もっと読む スイスで自殺ほう助がタブーではない理由
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
このストーリーで紹介した記事
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/02
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/02
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
2025/07/01
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
2025/06/25
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
2025/06/24
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
2025/06/19
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
2025/06/19
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
2025/06/18
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
2025/06/17
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
2025/06/10
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
続きを読む
次
前
おすすめの記事
ヌーベルバーグの巨匠 ジャンリュック・ゴダールに捧げる敬意
このコンテンツが公開されたのは、
2015/03/04
1930年12月3日パリで生まれたゴダールは、スイス人の両親を持つ。後に仏ソルボンヌ大学で民俗学を学ぶ。そして映画批評家を経た55年、スイスのグランド・ディクサンス・ダムの建設作業を記録した最初の短編映画「コンクリート作…
もっと読む ヌーベルバーグの巨匠 ジャンリュック・ゴダールに捧げる敬意
おすすめの記事
尊厳ある死を求めて
このコンテンツが公開されたのは、
2020/02/03
ベルン大学病院の緩和ケア部門では、不治の病に侵された患者の看護を行っている。その約3分の1はここで息を引き取る。 swissinfo.chは、病院のスタッフと遺族が共に死者を弔う慰霊式に参列した。
もっと読む 尊厳ある死を求めて
おすすめの記事
オーストラリアの104歳研究者、安楽死求めスイスへ
このコンテンツが公開されたのは、
2018/05/01
オーストラリアに住む104歳の科学者デビッド・グドール氏が今月にも、安楽死を求めてスイスへ来ることが分かった。AFP通信などが報じた。
もっと読む オーストラリアの104歳研究者、安楽死求めスイスへ
おすすめの記事
スイスでの安楽死 ドイツ法改正で自殺ツーリズムに影響出るか
このコンテンツが公開されたのは、
2015/10/14
ドイツとの国境そば住むプライシヒさんは、ドイツの国会で来月、自殺ほう助を禁止する法案が可決されれば、二度とドイツの地を踏めなくなるかもしれないと心配する。スイスの自殺ほう助団体の代表を務めているからだ。
もっと読む スイスでの安楽死 ドイツ法改正で自殺ツーリズムに影響出るか
おすすめの記事
映画界の巨匠ゴダール、映画制作は自分自身との調和の中で
このコンテンツが公開されたのは、
2015/03/12
swissinfo.ch: ゴダール監督とは10年以上一緒に働かれています。きっかけは何ですか? すべては留守番電話に入っていたメッセージから始まった。ゴダールのプロデューサー、ルート・ヴァルトブルガーが私に「一緒に仕事…
もっと読む 映画界の巨匠ゴダール、映画制作は自分自身との調和の中で
おすすめの記事
カンヌ国際映画祭、ゴダール監督が特別賞を受賞
このコンテンツが公開されたのは、
2018/05/22
19日に幕を閉じた第71回カンヌ国際映画祭で、スイス・フランスのジャン・リュック・ゴダール監督(87)が特別賞「スペシャル・パルムドール」を受賞した。同映画祭に出品された監督の最新作「Le Livre d’Image(原題)」と、長年の映画界への功績をたたえられた。
もっと読む カンヌ国際映画祭、ゴダール監督が特別賞を受賞
おすすめの記事
20世紀の建築を支えた素材、コンクリート
このコンテンツが公開されたのは、
2022/02/05
コンクリートの建物が醸し出すノスタルジーを熱く愛好する建築ファンがいる一方で、コンクリートは無機質で冷たいと感じる人もいる。いずれにせよ、コンクリートはスイスの文化・歴史において特別な存在感を放つ。
もっと読む 20世紀の建築を支えた素材、コンクリート
おすすめの記事
パルムドールのトロフィーはどうやって作られている?
このコンテンツが公開されたのは、
2018/05/12
8日に開幕した仏カンヌ国際映画祭。最高賞「パルムドール」のトロフィーは、スイス・ジュネーブの工房で作られている。大きなクリスタルの塊とイエローゴールドから、8人の腕利きの職人が美しいトロフィーに仕上げる。
もっと読む パルムドールのトロフィーはどうやって作られている?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。