巨匠パブロ・ピカソ(1881~1973年)の作品が5千フラン(約60万円)で手に入る――?ただし実際に購入するのは分割された所有権で、作品自体はスイスで保管され、鑑賞する権利は得られない。
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「Fillette au béret(ベレー帽の少女)」は、世界で初めてブロックチェーンを使って「トークン化」して販売される。販売を主催するのは、仮想通貨などデジタル資産を取り扱うスイスの銀行シグナムだ。
シグナムと共同主催者の美術品投資会社アルテムンディによると、「ピカソ、あるいは他のあらゆる美術品の所有権が、監督下にある銀行によって(誰でも参加できる)パブリック・ブロックチェーンに提供されるのは初めて」だ。
所有権の販売額は総額400万フラン(約4億8千万円)。所有権1株は今月末以降に販売する予定で、5千フラン(約60万円)以上で購入できる。購入後は転売も可能だが、作品自体を手にしたり観賞したりすることはできない。
1964年制作の同作品はキャンバスにベレー帽をかぶった少女を描いたもの。直近では2016年、スウェーデン・ウプサラのオークションハウスで2140万クローナ(約2億7千万円)で落札された。
広がるNFT市場
ピカソの作品をブロックチェーンを利用して取引する試みは今回が初めてではない。「非代替性トークン(NFT)」と呼ばれる、美術品が本物であると認証をつける技術の広がりで、デジタルや仮想の作品を販売する市場が急速に膨らんでいる。
英サザビーズは6月、ピカソの「Le peintre et son modèle(画家とモデル)」をNFT付きで売り出した。225万ポンド(約3億4千万円)で販売されたが、サザビーズによると絵の所有権をデジタル化したNFTをつけて販売する計画は撤回された。
また6月にはNFT付き美術品取引業ユニーク・ワンがピカソ作品「Fumeur Ⅴ(喫煙者Ⅴ)」をNFT付きでオークションにかけた。50点ある版画の1つで、クリスティーズが4月に1万5千ポンドで販売。デンバーのギャラリーで展示された後、焼かれてNFT付きデジタル作品「焼かれたピカソ外部リンク」となった。
一方「ベレー帽の少女」を証券化するトークンはNFTではないため交換可能で、作品は燃やされない。ただ実際の作品が所有権の購入者の手に入ることはない。美術館や展示のために貸し出されることはあるが、それ以外は安全性の高い施設に保管される。
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スイスの美術館が展覧会を開くために美術品を借り受ける場合、美術館は各々で損害保険を手配する。展覧会用に名高い傑作を借り受け、それと同時に高額の損害保険料を支払うことは、美術館にとって簡単なことではない。
一方、美術品への損害を国が補償する「国家(政府)補償制度」が創設されている国々では、優れた文化芸術を鑑賞できる機会が多いという。美術館側が保険業者に対して高額の保険料を支払うことがないためだ。
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