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進化する図書目録

「名前を付けた瞬間、それを分類したことになる」。図書目録が中立的であり得ないことを示唆する張り紙 Benjamin von Wyl

ジッターヴェルク芸術図書館は、15年前から未来の図書館の在り方を模索している。11月初旬まで開催されていた展覧会では、フェミニズムや脱植民地を軸に図書目録のあるべき姿を探った。

このコンテンツは 2021/11/13 09:00

食べ物を噛みながら、それがどうやってスーパーへやってきたかを常に考えているわけではないように、グーグル検索でクリックするときも、そのあと実際何が起こっているかを常に考えているわけではない。

それでも、グーグルの背後にいるのが巨大な営利企業であることは、ほぼ誰もが知っている。どのキーワードにどの検索結果を表示するかを決めているのはこの企業だ。図書館のカテゴリーや選書、検索もまた中立的ではないが、そのことを意識している人々はより少ない。

ザンクトガレンにあるジッターヴェルク他のサイトへ芸術図書館は、展覧会を通じてそのような意識を高めようとしている。図書目録とは、たいていパサパサしていて直感的な要素に欠けるものだ。だが、ジッターヴェルクでの調べ物は異なる。目録の中の書架を「クリック」すると、本の背表紙が写真になって現れるのだ。

夕方、図書館での調べ物が終わったら、書籍は適当な場所に戻せばよい。レールに設置された2台のロボットが、毎晩新しい配置をスキャンする。書籍の配置は動的だ。定位置に置かれている書籍はほとんどない。スキャンロボットのおかげで、書籍はオンライン書架ですぐに見つけられる。ゲーム感覚で検索できるこの図書館は今、目録中のどこに「空白」があるかを探している。

ジッターヴェルク図書館は来館者に常に何かを問いかける Benjamin von Wyl

「この件では、ドイツ語圏の対応は何十年も遅れている」と指摘するのはルーシー・コルプさん。バルバラ・ビーダーマンさん、エヴァ・ヴァエインマイヤさんとともに、8月29日~11月7日にジッターヴェルクで開催された展覧会「Reading the Library(図書館を読む)」を企画。コンセプトは「知識の配置にフェミニズムと脱植民地を取り込む」だ。

米国はこの点でもっと先を行く国だ。例えば大学図書館で新入生向けのオリエンテーションを開くと、目録では「黒人芸術家」で検索できるのに、なぜ「白人芸術家」で検索できないのか、という議論が繰り返し起こるという。「今でも西洋の図書館の多くは、どこでも通用する目録セットがあると思っている」とコルプさんは嘆息する。

このような普遍主義について、アメリカ人司書で著名活動家でもあるエミリー・ドラビンスキーさんはジッターヴェルク展向けに作成された動画の中で、「目録化は世界形成プロセスだ」と語っている。「図書目録の検索語を決める者は権力を手にする」

その一例として、「ジェンダーアイデンティティー(性の同一性)」が検索語になっていないがゆえに目録では存在が無視されていることや、米国図書館で使われる「Illegal Alien(不法滞在者)」という目録用語の存在が滞在許可を持っていない人々を言語的に疎外していることを挙げる。

ジッターヴェルク芸術図書館は15年前から、図書館とは何か、図書館はどうあるべきかというアイデアを現場で発展させてきた。今では「動的な配置」に続き、このインタラクティブな机の上に陳列されている書籍を即座にデジタル化する「作品バンク他のサイトへ」も加わった。

デジタル化した後は、欲しいページだけを保存したり、コメントを書き込んだりすることもできる。最後には、各自が図書館で調べた内容を「ビブリオジン(図書館を意味するドイツ語ビブリオテーク+マガジン)」と名付けられた小誌として印刷することも可能だ。どんな調べ物にも便利なツールだ。

利用者は調べた内容を作品バンクでスキャン・印刷できる Benjamin von Wyl

図書館の壁を通して、隣接するアート鋳造所の物音が聞こえてくる。これは溶接機、それとも研磨機の音だろうか?ジッターヴェルクが図書目録におけるフェミニズムや非植民地化に着目したのは、手工業が発端だった。図書館には手工業の材料も保管されていることから、展覧会の前に開いたワークショップではまず、どうすれば手工業の製作プロセスに適した図書目録を作れるかという問題について議論した。

コルプさんは、最終的にこの展示テーマに至った経過を次のように話す。「最初のワークショップでは、テーマではなくプロセスを追える目録用語があるかどうかについて話し合った」

2回目のワークショップでは、図書館の書庫で植民地化が現地に残した影響をテーマに話し合った。「『アフリカ』といった見出し、あるいは書籍に問題のある題名がついている場合などについて議論した」。そこで多くの疑問が出てきた。これらの書籍はどういう経過でジッターヴェルクにやって来たのか。どうしてここにあるのか。どうしてこの書籍であって、ほかの書籍ではないのか。

動的な配置を取り入れている図書館にふさわしく、ジッターヴェルク展も新しい「セッション」を通じて常に拡大を図り、オンラインで閲覧できるようにする。「Teaching the Radical Catalogue. A Syllabus(過激な目録の教授。シラバス)他のサイトへ」プロジェクトだ。

この活動には、スイス、米国、ベルギー、オーストリア、オランダのさまざまなプロジェクトや活動家が関わっている。コルプさんは、このような刺激がジッターヴェルク芸術図書館自体に「足跡を残し」、それを通じてこのようなテーマに関する発意がもっと密にネットワーキング化されればと願う。

図書の世界が動かなければ、カリフォルニアの巨人がいつまでも我が物顔で振る舞い続けるだろう。「なぜ、何もかもグーグルに任せてしまわないのか。それはグーグルが営利を目的としているからだ。周知のように、そのアルゴリズムは公にされていない」とコルプさんは批判する。「つまり、その検索はブラックボックスに等しく、その代替について考えることは、メディアがどんどん膨らんでいる現在、さらに重要になる」

大切なのは、図書目録は普遍的な事実を写し取っているわけではないという意識を広めること。そして、このようなカテゴリーが変化し、その変化のプロセスが活発に形成されることだ――そうコルプさんは語った。

(独語からの翻訳・小山千早 )

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