ローザンヌ国際バレエコンクールのインスタグラムの公式アカウントに、審査員の多様性の欠如を批判するコメントが殺到し、事務局が投稿の削除や謝罪に追い込まれる「事件」が発生した。国際的なバレエ界に影響を与える同コンクールの対応が問われている。
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「今回の(審査)パネルにもっと多くの有色人種がいて欲しかった」。第50回コンクールのセミファイナルが実施された4日、同コンクールのインスタアカウントの投稿に対し、非白人とみられるフォロワーからこのようなコメントがついた。コンクール側は同日、「私たちも同じです。そして残念なことに、統計的にバレエはあまりバラエティーに富んでいません」との返答を投稿した。これをきっかけに、審査員の多様性の欠如を批判するコメントが殺到した。同コンクールのインスタアカウントは、18万人のフォロワーがいる。
これらの投稿に対しては「がっかり」、「悲しい」、「人種差別だ」、「これが現実」などのコメントが相次いだ。7日に事務局が過去の投稿を削除して謝罪文を掲載すると、コメント欄はさらに炎上。翌2日間で600件以上のコメントが寄せられた。その意見の中には、「有色人種のバレエ・ダンサーは多くないから、有色人種の優秀なダンサーが(コンクールに)出場しにくい」、「黒人のバレエやダンスを支援する活動は、世界でもあまりない」と、バレエ界の根本的な問題を指摘する声もあった。
ローザンヌ国際バレエコンクールの審査は、技能的、芸術的、身体能力を評価基準としている。これまでは特に応募者の年齢や性別で審査が不公平にならないように予選を行ってきた。国籍や人種や肌の色による制限はなく、審査員にもアジア人を含めている(今年は新型コロナウイルス流行の影響で出席できなかった)が、多様性に関して明文の指針はない。
国際化や包括的な社会への意識の高まりに伴い、近年はバレエ界での人種差別を問題視する声が高まりつつある。そして、ダンサーの身体的な外見の違いや、トゥーシューズの色が白人ダンサーの肌に合うとされる「ピンク」しか存在しないなど、元来西洋の舞踏とされるバレエの「美しさの基準」が現代の価値観と相いれないという本質的な問題にも疑問が投げかけられている。ローザンヌ国際バレエコンクールのような将来世界で活躍するダンサーを輩出する場ではなおさら、主催者のこうした課題への取り組みや言動が注目される。
事務局のメディア担当者はswissinfo.chに対し、今回のインスタグラムでのコメントに関し、「私たちのビジョンや価値観を反映したものではなかった。その後削除したが、本当に申し訳なかった」と書面で説明。「パンデミック(感染症の世界的流行)の影響により、今年の審査員数名はモントルーに来ることができなかった。それでも私たちは、審査員がより広い社会の多様性を反映できるように努力すべきだったことを十分に理解している」と釈明した。
「ローザンヌ国際バレエコンクールは、国際的にバレエ界に影響を与える役割を担っており、投稿されたインスタグラムのコメントは、過去50年にわたる私たちの努力や成果を代表するものではないことを認識している。この経験から学び、今後、より良いものとなるよう責任をもって取り組む」と述べた。
(編集・ムートゥ朋子)
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